著者
北村 英哉 三浦 麻子 松尾 朗子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第84回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PC-051, 2020-09-08 (Released:2021-12-08)

清浄志向/穢れ忌避(POPA)傾向は,人の道徳基盤のひとつをなし,しかも直観的に日常的態度に反映される。穢れ意識が差別行為と結びつくことが指摘されてきたが(礫川,2007),現代においても移民排斥態度,不安感が関連を有するのか検討を行う。体系的な各年代サンプルで,高年齢層ほどPOPA傾向が高いかの検討も合わせてWeb調査を行った。チェックを通過した402名(うち女性211名,年齢M=46.78)から有効な回答を得た。4因子(精神清浄・信心尊重・身体清浄・感染忌避)の中で,精神清浄と身体清浄において高年齢ほどPOPA傾向が高かった。さらに,移民不安を目的変数とし,POPA各因子と年齢,性別その交互作用を説明変数として重回帰分析を行った。その結果,精神清浄以外の効果が有意で仮説は概ね支持された。また,男性の方が移民不安をより示す傾向があり,特に信心尊重傾向が高いと移民不安が高い傾向が見られた(性別×信心尊重交互作用β=-.128)。信心尊重や感染忌避傾向が移民排斥態度に通じる重要な知見を示し,外集団との関係において,こうした個人差変数,あるいは特定状況下で上昇しやすい傾向性に着目した検討も有効性と意義のあることが示された。