- 著者
-
金子 豊
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬学会
- 雑誌
- ファルマシア (ISSN:00148601)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.5, pp.442, 2020 (Released:2020-05-13)
- 参考文献数
- 4
近年,がん細胞はprogrammed cell death ligand 1(PD-L1)やCD47,MHC class I複合体の1つであるβ2マイクログロブリンなどの“don’t eat me”シグナルに関連する分子を細胞表面に発現することで,マクロファージ(Mφ)による貪食作用から回避する機構を保持していることが報告されている.これらの分子を標的としたがん免疫療法の開発が進められているが,十分な治療効果が得られない例もあり,更なる標的分子の発見が期待されている.CD24はGPIアンカー型タンパク質であり,様々ながん細胞において発現が認められており,特に治療困難な卵巣がんや乳がんで高い発現が報告されている.Siglec-10は腫瘍関連マクロファージ(TAM)に強く発現する細胞表面分子であり,CD24との相互作用により細胞骨格の再構成や炎症抑制に寄与することが報告されている.本稿では,がん細胞がCD24を介してMφのSiglec-10に結合することで,Mφによる貪食作用から回避していることを明らかにしたBarkalらの報告を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) DeNardo D. G. et al., Nat. Rev. Immunol., 6, 369-382(2019).2) Lee J. H. et al., Oncol. Rep., 22, 1149-1156(2009).3) Crocker P. et al., Nat. Rev. Immunol., 7, 255-266(2007).4) Barkal A. A. et al., Nature, 572, 392-396(2019).