著者
東 俊佑
出版者
北海道博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

この研究では、サハリン(樺太)西海岸のウショロ場所(現在のロシア・サハリン州、オルロヴォ)のアイヌの給料、手当の額が個人ごとに記された帳簿『北蝦夷地用』の内容を分析した。この帳簿の分析から、次の3つのシステムの存在が明らかとなった。第一は、「給料勘定」である。これは、13~59歳を対象に、会所がアイヌを労働に従事させるシステムであった。第二は、「撫育」である。「撫育」とは、5~12歳、及び60歳以上を対象に、一人につき1日米2合を支給するしくみであった。第三は、高齢者、鰥寡孤独者、長病者を対象とした特別な「撫育」である。これは長寿の人や生活困窮者に「手当」を支給するしくみであった。
著者
舟山 直治 村上 孝一 尾曲 香織 為岡 進 竹田 聡
出版者
北海道博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、旧暦6月晦日の大祓に関わりの深い北海道南西部の川下・川裾・川濯神社の祭祀について、本州からの伝播、伝承ルートを明らかにするため、北前船の寄港地がある瀬戸内海沿岸から日本海沿岸の地域で分布と祭祀形態の調査を行った。川下・川裾・川濯神は、岡山県、鳥取県、兵庫県、京都府、滋賀県、福井県、石川県の7府県で祭祀されている。特に、福井県西部の祭祀は、水無月神社を「川すそ神」と呼称していることに加えて、1河川の河口を中心に祭神を祀る形態が、北海道の祭祀形態に類似している。
著者
杉山 智昭 今津 節生 鳥越 俊行 赤田 昌倫
出版者
北海道博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では、X線CTスキャナによる資料の非破壊三次元調査を核として、地域に遺されたアイヌ民族生活関連資料を長期にわたって安全に利活用していくための基礎情報の取得と資料内部構造に含まれる歴史情報の抽出、伝統的な工芸技術の復元・継承等を目ざした基礎的な取り組みを行った。その結果、1)アイヌ民族生活関連資料の内部構造、製作技法、製作年代、製作地、劣化状態、修復技法に関連する情報を獲得する上でX線CTスキャナを用いた調査が有効であること、2)データベース化した三次元情報を画像あるいは3Dレプリカの形で利用することにより、アイヌ民族生活関連資料の製作技術の解明・復元が可能となることが示された。
著者
會田 理人
出版者
北海道博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、明治期から昭和戦前期の北海道利尻島・礼文島、松前小島における海女の活動に焦点を当てて、海女出稼ぎ漁の歴史、および海女の道具・技術、さらには海女が採取した海産物の流通・利用、資源保全の実態などを、歴史学・民俗学の双方向から調査・分析を行う。その上で、北海道における海女出稼ぎ漁の歴史を明らかにするとともに、磯まわり資源の保全を取り巻く様々な環境の変化と、こうした状況への対応を考察することを目的としている。平成29年度は、研究代表者が勤務する北海道博物館において、同館所蔵の磯まわり漁具の再調査を実施して、それぞれの資料が有する特徴などの整理を行った。また、明治期から大正期の『小樽新聞』、『樺太日々新聞』掲載のコンブやアワビ、テングサなどの磯まわり資源に関する記事を収集・整理するとともに、記事内容のデータベース化を行った。新聞資料調査から、明治期から大正期の北海道日本海沿岸地域、樺太亜庭湾沿岸地域における採取物の種類・採取期ごとの漁況や、採取物の加工商品の流通・販売、道内外の商況など、海女出稼ぎ漁を取り巻く環境を再検討する作業を進めることができた。『小樽新聞』の調査は、主に小樽・積丹半島を中心とする地域の磯まわり漁や海産物の加工・販売、商況、北海道利尻島・礼文島の海女出稼ぎ漁に関する情報を収集するためのものである。『樺太日々新聞』の調査は、樺太亜庭湾沿岸地域の磯まわり漁などに関する情報を収集するためのものである。今後も引き続き新聞資料調査を継続して、海女出稼ぎ漁に関する記事の収集を続ける必要がある。