著者
木村 光伸
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 人文・自然科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850056)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.69-78, 2015-07

人(ヒト)は自己人為選択という生物の中でも人類に特有の機構的変化を用いて自らを社会化し,形態的変化の少ない進化形として自己家畜化の道を歩んできた。そのプロセスを考えると,外的環境と自己の主体性の有機的な相互関係を想定することが,もっとも人類進化をわかりやすくする。ところがこのような考え方は,獲得形質の遺伝として,検証なしに否定されてきた概念であり,現代科学には受け入れる余地すらない。しかし,生物細胞が外的環境にさらされることによって,容易に変化したり,初期化される可能性は本当にないのだろうか。進化の長大な時間と人間の主体的変化を個体レベルではなくて,種の概念と人(ヒト)の自己家畜化現象という概念で再考察してみる。
著者
松本 浩司
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.87-105, 2015-07-31

大学におけるピアサポートの拡充・支援には,支援者・被支援者双方の学生にとって成長する機会となるとともに,財政的制約から比較的自由に教育サービスの質と量を確保できるという意義がある。そこで,その一環として行った,本学教養科目におけるピアサポーター育成の試行的取り組みについて,そこに至る経緯とその概要を紹介するとともに,その成果と問題点を考察した。その結果,養成講座は自尊感情の高揚やコミュニケーション技能向上の点で十分に効果があったことがわかった。他方,実践演習から脱落したり単位認定まで到達できなかったりした学生がおり,養成講座においてクラスづくり・協同性の構築が不十分であったことなどがその要因として指摘された。本学における今後の課題は,ピアサポーター育成の体系的なシステムを整備すること,全学生に対してコミュニケーション技能の自己評価を高める教育的対応にある。