著者
宍戸 明美
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.105-124, 2010

本稿ではソーシャルワークは果たして専門職か,という古典的な疑問を軸に専門職ソーシャルワークの成立過程を概観し,その過程で現れる矛盾を捉えながら根本的な課題を提示してみようとするものである。専門職として成立したソーシャルワーカーの養成教育,特にソーシャルワークの定義にある「相談業務」と「連携」業務を担う背景を検証し,袋小路にあるソーシャルワーカーに求められる機能を問い,そしてそのための体系的な教育カリキュラムの必要性を述べている。
著者
水田 健一
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.57-80, 2017

「ふるさと納税」制度は,納税者が自分の意思で,地方税の納税対象を選択することができるようにすることを意図して,居住地以外の地方団体に対する寄附金に対する所得税,地方住民税の税額控除制度として,2008年度から導入され,その後寄付件数,寄付額共に大きく増大している。本稿では,この制度の創設が議論された総務省の「ふるさと納税研究会」における議論を振り返ることによって,この制度が創設された目的を検討した後に,この制度が持つ問題点と改善すべき諸点について考察を行う。この制度の持つ問題点として,望ましい地方税のための原則に抵触すること,地方交付税特別会計の財源不足を増大させること,寄付を求めての返礼品競争を激化させること,負担を伴わない「寄付」は寄付の理念に反すること,地方団体への寄付とその他の団体への寄付との間での不平等性が発生すること,が挙げられる。さらに一定の仮定の下で,ふるさと納税制度を用いた寄付について,寄付者本人,居住地および寄付先の地方団体,および国の各主体グループ別の受益額と負担額についての検討を行った
著者
阿部 太郎
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.169-177, 2010-07-31

2009年8月にベルリンで開催されたサマースクール「Keynesian Macroeconomics and European Economic Policies」についての報告。
著者
柴崎 全弘
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.219-230, 2017-03-31

「努力の正当化」と呼ばれる現象がある。これは,努力して(コストを費やして)手に入れたものが価値のないものであった場合,不協和が生じるので,手に入れたものの価値を高く見積もることにより,費やした努力を正当化しようとすることを意味する。最近,このような現象が動物にもみられることが実験的に示されるようになってきたが,「情動状態の対比効果」というヒトとは異なるメカニズムによって説明されている。本稿では,これまでに報告されてきた動物における「努力の正当化」研究を概観し,実験手続き上の問題点を指摘することで,今後の研究課題を明らかにする。
著者
樋口 勇夫
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 言語・文化篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; LANGUAGE and CULTURE (ISSN:1344364X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.45-86, 2015-03-31

幾つかのJ-POP広東語カバー曲では,オリジナル曲の楽音の高さを,ある特定の音符だけ個別に変えてあり,それはその音符に対応する歌詞の漢字の声調と関係がありそうである。 拙稿「J-POP広東語カバー曲における声調の楽音への影響」(1)~(5)にて,1984年から2010年のJ-POP広東語カバー曲,計50曲を例にその様相を探った。本稿ではそのまとめを行なう。
著者
山下 匡将 早川 明 伊藤 優子 杉山 克己 志水 幸 武田 加代子
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.171-185, 2017-03-31

〔目的〕レジデンシャル・ソーシャルワーク・インディケーターのうち「利用者満足度」の導入が,ワーカーにもたらす影響について検討する。〔方法〕ワーカー2名に,約2か月間にわたって「利用者満足度」を記録してもらい,半構造化面接および質的内容分析の手法を用いて,「語りのヴァリエーション」,「定義」,「概念」,「カテゴリー」をコーディングした。〔結果〕111の語りのヴァリエーション,8つの概念,【インディケーターとの出会い】および【インディケーターへの葛藤と適応】ならびに【インディケーターがもたらした変化】の3つのカテゴリーが構成された。〔考察〕表情や身体状況とは相対的に独立した何らかの利用者満足度を意識的に考える機会を設けることで,ワーカーは意図的・積極的に入居者を気に掛けるようになり,"ケアワーカーとは異なる視点"をより明確にしていく傾向が看取された。
著者
宍戸 明美
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.77-101, 2009

筆者が「名古屋学院大学論集(社会科学篇)」(Vol. 43 No.3 & Vol. 44 No. 4)において一連して議論してきたテーマはソーシャルワーク(ソーシャルワーカー)と「社会的企業・起業(社会起業家)の関係をみる理論的枠組みへの模索であった。今回は社会福祉の根源的課題であり,理論化の中心的問題である「貧困」概念を整理し,今日の潮流である「社会的排除」とソーシャルワークの関係に焦点を当てていく作業の一端である。欧州の「社会的企業」は「社会的排除」という社会問題を背景にして生まれたとされる。この概念が生産関係からの排除によるものだけではなく,複合的な社会的関係構造からでてきていることを証明することで,従来の福祉政策の限界を超える方策として「社会的企業」の意義を述べる。この「社会的企業」はいわば"公共サービスの現代化"(福原他2007:102)として動き出したセクターともいわれるが,これを公的セクターでもなく,市場セクターでもない,第3のセクターとその活動を位置づけ,「社会的排除」に対する解決をはかる主体として議論しようとするものである。その場合,軸足を広義のソーシャルワーカー活動として捉え,その積極的意味を検討したい。今回は主に「貧困」概念の検討に留まっている。別稿で更に深く考察してみたい。
著者
吉田 達矢
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 人文・自然科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; HUMANITIES and NATURAL SCIENCES (ISSN:03850056)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.49-58, 2016-07-31

本稿は,20世紀前半における名古屋市および名古屋市の人々と中東各国・地域との関係について考察した。まず,当時の名古屋市の人々が中東出身者を見る機会は少なかった。また,名古屋市における中東に関する啓蒙活動は,大日本回教協会(昭和13年設立)の協力があって昭和15年以降,2回ほど行われたにすぎない。ただし,実業家たちは大正末頃から中東に関心を持ち始め,恐慌の一時期を除いて,太平洋戦争が始まる直前まで貿易先として中東には関心を持ち続けていた。その背景には,名古屋商工会議所と大日本回教協会の積極的な活動があった。ただし,実際には中東からの輸入が行われた時期は短く,いずれの国や地域からの輸入品の量もごく僅かであった。
著者
加藤 雅信
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.63-80, 2022-07-31

本稿は,前号掲載論文の続編であり,占領下で,1947年5月の憲法施行に間に合わせるべく家族法改正を推進した日本政府や我妻らが草案をGHQに提出したにもかかわらず,なにゆえにGHQの承認が下りず,「応急措置法」での処理がなされたのか,当時の日本政府や我妻らが知らなかった“裏事情”に焦点を合わせた論稿である。 我妻らの家族法草案起草委員会には川島武宜も参加していたが,GHQ側の立法作業の責任者であったオプラーは,川島武宜と民法改正の全期間を通して何度となく日本側には秘密の非公式会合を重ねていた。この会合で,川島は日本側の最終草案には“家制度の残滓,女性に不利な点が存続している”旨を述べ,その4日後には,我妻が民法改正草案の民主性と女性平等性を説明したが,受け入れられずに,国会提出の延期が決定された。背景事情を知らなかった日本側の起草委員は,GHQには検討の時間的な余裕がないものと理解したのであった……。
著者
加藤 雅信
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.241-279, 2022-03-31

本稿は,日本民法が過去1世紀半にわたっていかなる国内政治と国際政治のなかで形成されてきたのかを考察する筆者の一連の研究の一部をなすもので,家族法に焦点をあてている。 かつて日本の家族法の中核をなしていた「家制度」は,民法典制定時に華族が反対し天皇制官僚も消極姿勢を示すなかで,「水戸学」以来の伝統を受け継ぐ「世論」のもとで形成された「創られた伝統」であった。戦後の家族法改正は,この家制度を廃絶した。我妻はこれが日本側「起草委員の独自の発案」であったことを強調するが,実はアメリカの初期占領政策―日本の軍事的弱体化・産業的弱体化・精神的弱体化―の一環であった。「日本を生糸・お茶・おもちゃ等の生産国」にするという産業力弱体化政策とともに,“天皇陛下,万歳!”と叫びながら兵士が死地におもむいた歴史を根絶させるべく,天皇を頂点とする「家族主義的国体」観を破壊する一環としての家族法改正だったのである。
著者
皆川 誠
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.63-85, 2021-01-31

2001年の9.11事件以降,国際社会ではテロリズム犯罪を包括的に定義しようとする動きが増加する傾向にある。こうした中,国際社会ではテロリズムを定義する要素として,客観的要素と主観的要素それぞれに一定の傾向が見受けられ,とりわけ後者に関しては,普通犯罪とテロリズム犯罪とを峻別する要素として実行行為者の政治的動機をどのように位置づけるか,という点が注目されるようになってきている。 本稿は,テロリズムに関する国内法および国際法において政治的動機の要素がどのように位置づけられてきたのかについて,とりわけ犯罪人引渡しおよびテロリズムの法的定義をめぐる議論を中心に検討することによって考察するものである。
著者
早川 洋行
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.65-88, 2016-10-31

本論文は,人気マンガを題材にして,戦後日本社会におけるジェンダーの変化を考察したものである。1では,ジェンダーの形式的次元と実質的次元を区別して,後者に注目することに重要性を論じる。2では,知識社会学からのアプローチを説明した後に家族を描いた人気マンガを紹介して,そこに描かれた家族像と時代との関連を考察する。3では,家族ではなく個人に注目して,人気マンガの主人公に表現されている男性ジェンダーと女性ジェンダーの特徴をまとめる。そして4では,これまで論じてきたことを振り返り,現代日本社会におけるジェンダーの歴史的位相を総括する。
著者
笠井 雅直
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSYU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.109-126, 2015-10-31

トヨタ自動車工業の創業者であった豊田喜一郎は,それまでの豊田の事業が基盤とした綿業中心からの転換を図るべく自動車事業に参入し,挙母町に広大な用地を確保し,自動車の大量生産の体制を構築するのであるが,その一方で,航空機に関する試行も継続していた。トヨタ自動車工業は戦時下,陸軍からの要請により川崎航空機工業と共同で東海飛行機を設立し航空機分野に参入するが,その生産は企業整備の対象となっていた旧中央紡績の工場を活用したものであり,トヨタ自動車工業の挙母工場では自動車生産に集中していた。豊田喜一郎の志向は民需用の航空機にあった。
著者
樋口 勇夫
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 言語・文化篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:1344364X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.45-86, 2015

幾つかのJ-POP広東語カバー曲では,オリジナル曲の楽音の高さを,ある特定の音符だけ個別に変えてあり,それはその音符に対応する歌詞の漢字の声調と関係がありそうである。 拙稿「J-POP広東語カバー曲における声調の楽音への影響」(1)~(5)にて,1984年から2010年のJ-POP広東語カバー曲,計50曲を例にその様相を探った。本稿ではそのまとめを行なう。