著者
齋藤 健治 井上 一彦 渡辺 正和 細谷 聡 井上 伸一
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集; 医学・健康科学・スポーツ科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University; Medical, Health, and Sports Sciences
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.7-18, 2014-09-30

本研究の目的は,速球とカーブ投球時の上肢と体幹の動きの違いについて明らかにすることであった。大学野球選手の手首と上腕,および背部に計測器を装着して,速球とカーブ投球時の関節運動の角速度を計測した。そして,最大角速度とその時刻,およびボールリリース時の角速度を抽出し,両投球間で比較した。その結果,ボールリリース時の前腕回内角速度と肩内旋角速度は速球の方が大きく,それに対して,最大角速度には差はなかった。前腕回内と肩内旋の最大角速度の時刻は,カーブにおいて速球より遅かった。対照的に体幹運動の角速度には,速球とカーブの間で差は見られなかった。これらの結果から,カーブ投球ではボールリリース時に前腕を相対的に回外位に保つため,両投球種間に差が生じること,そして,カーブ投球では,その前腕回外位を保ちやすくするために,肩内旋の角速度を抑える必要があると考えられた。
著者
岡澤 憲一郎
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.19-43, 2015-01-31

本稿は,マックス・ウェーバーの論文「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の『精神』」を,できるだけわかりやすく,しかもできるかぎり正確に概観し,それをふまえてまず,晩年のウェーバーが「近代の経済エートス」の生成過程という視座から旧論文をエートス論として補整し,再構築したことを明らかにしている。ついで,理解社会学の立場からすれば,ウェーバーは現世内的禁欲のパラドックスを強調するあまり,社会的行為の視点から旧論文を補整するのにやや片手落ちになってしまったと指摘している。ゲオルク・ジンメルがウェーバーにあたえた影響についても,その一端を示した。
著者
八亀 五三男
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 言語・文化篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; LANGUAGE and CULTURE (ISSN:1344364X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.39-51, 2017-10-31

ゲルマン諸言語では,ウムラウト現象が大きな言語的特徴になっている。中でも,北ゲルマン語に属するアイスランド語には,他のゲルマン語に見られないような複雑なiウムラウト,uウムラウトが観察できる。ウムラウトという音韻現象を分析することによって,共時的言語現象を新たに通時的な視点から見直してみることがいかに重要であるかを明らかにするのが本稿の目的である。
著者
神山 美奈子
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 人文・自然科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; HUMANITIES and NATURAL SCIENCES (ISSN:03850056)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.55-67, 2018-07-31

1905年に滋賀県近江八幡市に来たW. M. ヴォーリズ(William Merrell Vories,一柳米来留)は,日本で建築事業と宣教事業に携わった。彼は,朝鮮半島にも146の建築作品を残していることが知られているが,それは日本が朝鮮半島を植民地支配している時期の作品であった。本論文は,ヴォーリズが植民地朝鮮をどのように認識していたのかについて残された史料と朝鮮人の弟子,姜沇との関係から究明する。さらに,ヴォーリズがみた植民地朝鮮理解の現代的意味を提示する。
著者
笠井 雅直
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.109-126, 2015

トヨタ自動車工業の創業者であった豊田喜一郎は,それまでの豊田の事業が基盤とした綿業中心からの転換を図るべく自動車事業に参入し,挙母町に広大な用地を確保し,自動車の大量生産の体制を構築するのであるが,その一方で,航空機に関する試行も継続していた。トヨタ自動車工業は戦時下,陸軍からの要請により川崎航空機工業と共同で東海飛行機を設立し航空機分野に参入するが,その生産は企業整備の対象となっていた旧中央紡績の工場を活用したものであり,トヨタ自動車工業の挙母工場では自動車生産に集中していた。豊田喜一郎の志向は民需用の航空機にあった。
著者
吉田 達矢
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 人文・自然科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; HUMANITIES and NATURAL SCIENCES (ISSN:03850056)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.15-29, 2019-07-31

本稿では,明治時代(1868~1912年)に名古屋を訪れた外国人19人の日記・旅行記などの史料から,彼らが当時の名古屋をどのように見ていたのか,どのように滞在し,名古屋の何に注目したのか,などの問題について考察した。まず滞在日数に関しては,個々人によって異なり,特定の傾向は見出せなかった。宿泊場所は,秋琴楼・支那忠・名古屋ホテルがよく利用された。訪問場所としては,名古屋城を見学したあるいは何らかの言及をしたのは19人中14人であったことから,明治時代の名古屋では名古屋城が外国人にとって一番の観光場所であったと推測される。名古屋の特産品として認識されていたのは,陶磁器(七宝焼)や扇(子)などであった。名古屋に対するイメージとしては,明治半ばころから「近代的な産業・工業都市」として徐々に認識されるようになり,名古屋の人たちに対する印象は概ね好意的であったといえる。
著者
中島 誠
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 人文・自然科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; HUMANITIES and NATURAL SCIENCES (ISSN:03850056)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-14, 2019-07-31

本研究の目的は,寄付行動の動機の構造を心理学の観点から整理,分析することで明らかにすることにある。災害支援と平常時の社会貢献活動を対象とした寄付について,先行研究に基づいて寄付動機,寄付抑制動機の項目が用意され,社会人を対象にアンケートを実施した。因子分析の結果,先行研究で見られなかった因子が得られた。尺度得点間の相関分析を行い,寄付に関する動機の構造や今後の課題について考察した。
著者
児島 完二
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSYU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.45-57, 2016-01-31

急速なスマートフォン普及率の上昇からBYOD時代における高等教育機関での情報リテラシーのあり方を論考する。ネット世代の大学生は知的生産のツールであるICTを使いこなせるのかという問題意識で,3年間にわって大学生を対象にパソコンのキーボード操作に関する調査を行った。新入生のタイピング能力を測定し,その結果を示すとともに,アンケート3項目との相関を分析した。たしかに極めて能力の高い学生が増えている反面,ビジネスパーソンとして仕事に不安を抱える下位層が多く存在することを示した。
著者
梶浦 恭子
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.171-181, 2018

戸外の地面や草地の上を散歩するなど,森の自然を体験する遊びに親子で通う乳幼児(0―3歳)は,どのような遊びの世界を展開するのだろうか。 本研究は,乳幼児が,(1)どのように自然の環境(世界)に出会っていくのか,(2)何に触れて関わり,体験し遊び始めるのかを,乳幼児の手(指)や身体の行動(行為・動作)場面の観察から行為・動作の過程を探る。 自然体験に関わる保護者である大人(乳幼児には大切な存在)と乳幼児との関わり,自然物に触れて遊ぶ乳幼児はどのような動きを表すのか,関わるのか,動きに着目して事例を作成した。事例を整理した結果,①大人に抱っこされる行為から,②大人に絡みまとわる行為,③横並びで手つなぎする動作,以上3つの自然の環境に関わる行為・動作について,本研究では言及する。
著者
藤森 秀美
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 言語・文化篇 (ISSN:1344364X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.63-73, 2008

本稿は「結ぶ」の意味分析である。 本稿では「結ぶ」を多義語であると捉え,6つの別義に分けて分析し,多義構造を示した。 6つの別義は,〈結び目を作ることで離れなくする〉という意味成分を共通に持つもの4つと,〈構造物を作る〉という意味成分を共通に持つもの2つに大きく分けられることがわかった。 多義化の起点である意味から5つの意味が派生しており,それを動機づけるのは,メトニミー,メタファーであるという仮説を提示した。
著者
鈴木 啓司
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 人文・自然科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; HUMANITIES and NATURAL SCIENCES (ISSN:03850056)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.33-50, 2017-01-31

「モノそのものであること」の言語表現を目指す新物質主義に則り,人間というモノそのものの内部状態である「認識」を形式化しようとする論考の14篇目である。筆者は認識を基本的に「絵」と「地」の構図で捉えてきたが,そこには逸すべからざるトピックがある。境界の問題である。境界は絵なのか地なのか,内部なのか外部なのか,はたまた,どちらでもない独立した第三項なのか。境界について,論理,数学の基礎理論をなす集合論的見地が抱える問題から説き起こし,その限界を克服すべく対数的数概念を提示する。これは認識を表現するうえで以前より述べてきたアイデアであるが,本論ではより認識モデルに即した形で再考する。そして,新たな知識像として,集合論的情報をエージェントが共有するのではなく,動的な底のもとに真数,対数の関係でエージェントが協調する対数的モデルを提出する。要は,概念をモノとして語る言語,これが新物質主義の目標である。
著者
大林 信治
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.1-49, 2018-10-31

フーコーは若いときからニーチェを読み,戦後のフランスで支配的であった現象学や実存主義の意味付与的な主体の哲学の行き詰まりを打開するために,近代的主体の成立の出発点に遡り,ニーチェやハイデガーの目で「カントの人間学」を解読した。そこから「知の考古学」が展開されたが,1968年の「五月革命」を機に権力と直面したことから,改めてニーチェの系譜学を読み,「知と権力」の系譜学を展開した。さらに1978年フランス哲学協会で「批判とは何か」という講演を行ったとき,カントの「啓蒙とは何か」を取り上げ,ヨーロッパにおける「批判的態度」の成立を「統治」と「司牧的権力」の系譜の中に位置づけた。カントにおける「啓蒙」と「批判」の「ずれ」の問題は,フランクフルト学派によって「啓蒙批判」とか「理性批判」という形で展開されたが,フーコーはその問題を独自の仕方で「現在の存在論」ないし「われわれ自身の歴史的存在論」という形で「西欧近代の系譜学」を展開する。
著者
宍戸 明美
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.105-124, 2010-07-31

本稿ではソーシャルワークは果たして専門職か,という古典的な疑問を軸に専門職ソーシャルワークの成立過程を概観し,その過程で現れる矛盾を捉えながら根本的な課題を提示してみようとするものである。専門職として成立したソーシャルワーカーの養成教育,特にソーシャルワークの定義にある「相談業務」と「連携」業務を担う背景を検証し,袋小路にあるソーシャルワーカーに求められる機能を問い,そしてそのための体系的な教育カリキュラムの必要性を述べている。