著者
皆川 芳輝
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1-10, 2018-01-31

プロスポーツリーグ・チームの持続的成長には,他の諸プロスポーツリーグ間の観客争奪戦における競争優位構築が決定的に重要になる。そのためには,当該プロスポーツリーグの全試合においてクロスゲームが展開されなければならない。プロスポーツリーグが観客数を増加させるうえで最も重要な要因は,優秀な選手が数少ない特定チームに偏在するのではなく,全チームにおいて優秀な選手がプレーしていることである。しかしながら,優秀な選手のスカウト・雇用には多額の資金を捻出しなければならない。この問題を解決するための方法の1つとしては,収益分与(revenue sharing)があげられる。これは,まず最初にプロスポーツリーグ・チームが自分の収益から一定額をリーグ全体に拠出し,続いてそのプールした資金を各チームに分配する。本論文は,北米プロスポーツリーグにおける収益分与に焦点をあてて,その有用性を考察する。
著者
有薗 智美
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 言語・文化篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:1344364X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.79-95, 2014

本稿は,意味的に分解不可能な慣用句のうち,身体部位を表す語(身体部位詞)の「手」または「足」を構成要素に持つ表現の比喩的意味の成立について考察する。本稿で対象とするのは,文字通りの意味が手や足に関する行為を表しており,表現全体の比喩的(慣用的)意味としては物事との関与を表す慣用句であり,それらの複数の表現の慣用的意味の成立には特定の認知プロセスが関与しており,体系的に動機づけられていることを示す。
著者
國原 幸一朗
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.197-222, 2018

本稿では,名古屋市会会議録に記された議員の質問や執行機関の答弁をもとに,地域の防災まちづくりを考える授業を構想した。一般質問から議員の,代表質問から会派の防災に対する見方や考え方を理解することができる。また,質問・答弁内容を分類し,経年的変化をみることにより,論点がどう変化したか,防災政策として何が進み,何が課題かを読み取ることもできる。本稿の授業では、水害・津波・原発の側面から防災を捉え,住民意識調査の結果,防災計画,GISによる地域分析と照合することにより,議会での発言を意義づけ,防災まちづくりがどのように進められようとしているかを考えさせようとした。
著者
工藤 泰三
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 言語・文化篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:1344364X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.39-50, 2018

ヨーロッパの複言語主義を基盤とする内容言語統合型学習(CLIL)は,日本においてもその実践例が多く見られるようになった。ヨーロッパの文脈ではCLILの効果を立証する研究結果が多く発表されているが,日本における研究においては質・量ともにまだ不十分な段階にある。本論では,地球的課題の理解とグローバル・シティズンシップの涵養を目的とするCLIL授業の実践において,CLILにおいて重視される認知プロセス,特に高次思考力(HOTS)を意識した授業内活動を行うことにより,学習者の英語運用能力を高めるとともに学習者の高次思考を促すことができることを証明することを試みた。分析の結果,英語運用能力が有意に向上したこと,および学習者の授業コメントから高次思考力の活性化に寄与することができることが明らかになった。
著者
鈴木 啓司
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 人文・自然科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850056)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.23-41, 2018-01

「モノそのもの」であることを表現する言語の構築を目指す新物質主義の思想にのっとり,数学概念のモノ化を目指す。数学は特定の指示対象をもたぬ極めて抽象的な言語であるだけに,逆に人間という「モノそのもの」の内奥から湧き出,それを映し出している言語であると考えるからだ。具体的な対象として,実数,虚数を合わせすべての数を表示する複素平面を取りあげる。認識論的存在論から話を起こし,実数を自己に,虚数を他者になぞらえて解釈する。当初は「あちら」と「こちら」という原始的世界他者意識が,のちに両者が交叉し,中間に「自己」意識を結ぶ。自己とは他者=世界の後付けで生まれたものである。通念とは逆行するこの虚数から実数へという流れを,複素平面のなかに読み込む。こうした観点から,オイラーの公式,さらにはリーマン予想にまで言及する。
著者
岩出 和也 山口 翔
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.197-210, 2017

日本のアニメーション産業は,2015年には,市場規模が1兆2,542億円に達するなど,年々拡大を続けている。しかし,市場構造の変化などにより,制作現場には疲弊しており,今後の健全な成長を考える上では課題も多い。 この先,日本的なアニメーション表現の多様性を確保しつつ,世界市場に向けてコンテンツを制作・発信可能な形で制作現場の業務フローを改善していく上では,基本的な制作フローの情報化を業界全体として推し進める必要がある。その上で,課題や改善点についての知見を個別に蓄積するのではなく,業界全体として共有する枠組みも重要になると考えられる。本論文では,アニメーション産業全体の市場構成と整理,制作現場がかかえる課題と情報化による事業効率化の可能性を検討する。
著者
八亀 五三男
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 言語・文化篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:1344364X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.49-64, 2016

北ゲルマン語に属するフェーロー語は,同じ北ゲルマン語のアイスランド語,デンマーク語と文法体系においてどのような相違があるのだろうか。これらの言語の後置定冠詞,形容詞,動詞,前置詞の格支配を比較・分析することによって,フェーロー語形態論の特徴を明確化することを試みた。
著者
越智 祐子
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.245-253, 2017-03-31

2015年度,ぎふ多胎ネットは多胎妊娠・出産・育児の体験について,当事者やその家族から自由記述テキストを集めた。本稿では,当事者が実施した親和図法による分析から導出されたキーワードである「不安」と「大変」に着目したうえで,テキストデータを計量的に扱い,多胎育児者の妊娠・出産・育児体験についての考察を試みた結果,「不安」「大変」に加えて「上の子」への気遣いやケア資源の割り振りがキーワードとなっていたことを報告する。
著者
今村 薫
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 人文・自然科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; HUMANITIES and NATURAL SCIENCES (ISSN:03850056)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.11-20, 1999-07-31

| Gui and | Gana people often have extra-marital relationships with lovers with implicit understanding, and this type of relationship is called “zaa-ku”. According to their folk-interpreration of human reproduction, a child born under “zaa-ku” is considered to be made from mixed semen, accumulated eventually by no only the lover but also the husband. So the child is thought to get life from of them. Though the lover is genetically physiological father, the husband can specified as not only the pater but also the genitor. On their notion of conception, it is not necessaty for a genitor to be only one person. Therefore, the husband can be considered to have complete paternity for the child of his wife, whoever is the physiolgical father.
著者
小谷 光正
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.13-24, 2016-07-31

1970年代,欧米で環境保全やエコロジーへの関心が高まり,エコロジー運動をはじめとする消費者運動が活発に展開された。その結果,環境を配慮した消費行動を推し進めるグリーンコンシューマーリズムの思想が確立され,そのような消費行動を実践する消費者はグリーンコンシューマーと呼ばれた。 さらに,「企業は環境に負荷をかけないマーケティング活動を行わなければならない。」とする環境マーケティングの考え方が生まれた。 国内外の環境問題の歴史は深く,環境の世紀といわれる21世紀の今,将来世代の暮らしをも思慮し,「持続可能な発展」に基づく解決策が問われている。 「社会」と「政府」という2つの次元の下で,「持続可能な発展」を目指す消費者のソサエタルな関心が,市場に向けてどのような消費パターンの選択を導くかが問題となる。 環境を配慮する消費行動により,企業,消費者,社会的環境の全てに利益がもたらされる社会の構築を目指す上で,私たち消費者が負う責務は重大である。 本稿ではグリーンコンシューマーリズムと消費者運動,環境マーケティングの発展の歴史的背景をまとめ,私たちの環境を守るために,政府,企業とともに消費者がなすべき課題と意義について考察する。
著者
ファロン トーマス J. ベイカー マシュー
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 言語・文化篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; LANGUAGE and CULTURE (ISSN:1344364X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.63-68, 2016-10-31

This research considers the use of Visual Narrative Grammar(VNG) as a means to aid in improving the fluency, accuracy, and complexity of dialogue written by ESL students at Japanese universities. VNG, such as the sequential images found in the panels of comic books, appeal to a non-verbal linguistic ability of the human mind (Gernsbacher, 1983; Cohn, 2013). If that be the case, then it could be hypothesized that VNG should have benefits in aiding language acquisition. This research seeks to explore the benefit of VNG on ESL students’ written production of English dialogue. In addition to a review of current literature pertaining to VNG, a proposed methodology of research to come has been outlined in this essay.
著者
安藤 りか
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.133-147, 2015

本論では,取り組み開始から十数年となった大学におけるキャリア教育に対して,近年提出されている種々の批判を整理し,それらの批判の対象となっているキャリア教育の現実との照合・確認をおこない,そこに見られる課題の検討を試みた。その結果,第1に,批判の中核である「心理主義的傾向」と「対象と範囲の無限定性」については,批判が妥当であることを確認した。第2に,「対象と範囲の無限定性」の問題が,キャリアcareerの語義に起因する教育内容の無限定性の問題にとどまらず,教員の専門性の問題とも深く関わっていることを見出した。最後に今後のキャリア研究の課題を示した。
著者
今村 薫
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 人文・自然科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; HUMANITIES and NATURAL SCIENCES (ISSN:03850056)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.31-42, 2014-07-31

旧人と新人が交替するにあたり,狩猟方法がどのように変わったかを推測するために,現代の狩猟採集民サンの狩猟方法を詳細に調査した。その結果,サンの狩猟方法は大型獣を狙った弓矢猟や槍猟だけでなく,小型の哺乳類や鳥類を対象に多種多様な猟法があること,狩猟を行う者は成人男性だけでなく,成人女性や少年たちも行ってきたことが明らかになった。とくに少年は,4~5歳のころから『自然の読み取り方』を学んでいく。動物に関心を持ち深く観察してその心を読むというヒトに特有な能力は,ホモ・サピエンスの起源にまで遡ることができる。人と動物の関係は,人間の認識能力そのものの変革を促したという点で,人の進化と深く絡んでいると考えられる。