著者
久保田 晃弘
出版者
多摩美術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

2014年2月H-IIAロケットの相乗り衛星として、世界初の芸術衛星「ARTSAT1:INVADER」が高度378kmの太陽非同期軌道に投入された。10cm角、1.85kgの1U-CubeSatのINVADERは、その後軌道上で順調に運用を続け、搭載されたミッションOBC「Morikawa」によって、音声や音楽、詩のアルゴリズミックな生成、チャットボットによる対話といった芸術ミッションを達成した。次いで、同年12月には深宇宙彫刻「ARTSAT2:DESPATCH」(3Dプリントで制作した渦巻き状の造形部を有した50cm立方、約33kgの衛星)を打ち上げ、深宇宙からの宇宙生成詩の送信に成功した。
著者
松田 嘉子
出版者
多摩美術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成29年度は、アラブ古典音楽の即興演奏タクスィームに関し、特にマカーム(旋法)の構造と展開について研究を推進した。現地調査はマレーシアで行なった。研究成果展として公開講座「マカームとラーガ2」(多摩美術大学・平成29年12月)を開催した。東京音楽大学小日向英俊氏を講師に迎え音楽家による実演も伴いながら、今回はアラブ音楽の即興演奏「タクスィーム」とインド音楽の「アーラープ」の比較研究を行い、討議した。アラブ音楽ではマカームを転調しながら展開する点がインド音楽とは大きく異なり、観客にもその理解が共有された。他にも、「琵琶とシルクロード」(文京シビックホール・平成29年11月・薦田治子武蔵野音楽大学教授企画)を始めとする多くの公演や講演において、アラブ音楽の真髄であるマカームの構造を実演し解説することに努めた。平成30年3月、ビレン・イシュクタシュ博士を中心とするトルコの演奏家・研究者の企画によりマレーシアで開催されたインターナショナル・シェリフ・ムヒッディン・タルガン・ウード・フェスティバル(クアラルンプール・ユヌス・エムレ研究所)に出演し、自作曲とタクスィームを演奏し好評を博した。シェリフ・ムヒッディン・タルガンはアラブ音楽、トルコ音楽両方にとって重要な役割を果たした音楽家である。その名を冠したウード・フェスティバルでは、トルコ音楽とアラブ音楽の比較研究が行われ、タクスィームの表現や多様なプロセスを検討した。またマレーシア、シンガポール、インドネシアなど東南アジア諸国にウード音楽が浸透している現状を把握し、アラブ音楽圏の広がりについても認識を新たにする貴重な機会となった。
著者
秦 剛平
出版者
多摩美術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

紀元後1世紀のユダヤ人著作家フラウィウス・ヨセフス(37/38-100年頃)はその浩瀚な著作、『ユダヤ戦記』全7巻、『ユダヤ古代誌』全20巻、『アピオーンへの反論』全2巻、それに『自伝』をギリシア語で書き残した。英語圏でのヨセフスの著作の英訳は1602年に始まった。本研究では17世紀から19世紀中頃までに刊行された諸訳を収集し、近代語訳に付されている序文や前置き、訳注、論文などに認められる反ユダヤ主義的な言説等を抽出、さらには印刷上の活字媒体やレイアウトなどに認められる反ユダヤ主義的な傾向等を分析し、英語圏におけるキリスト教的反ユダヤ主義の形成にヨセフスの著作の近代語訳がはたした役割を明確にした。
著者
楠 房子 稲垣 成哲 徳久 悟 石山 琢子
出版者
多摩美術大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究で開発したスタンプオンシステムは、「スタンプ」デバイスを用いた展示の理解支援システムである。本システムは3つの特色がある(1)展示物の説明を取得するにはiPadなどのモバイル端末を使用する (2)「スタンプ」と呼ばれる有形デバイスをタッチすると、モバイル・デバイス内に含まれる対応する説明を開始する(3)来館者の自発的な探索活動を支援する。本システムの有効性を検証するために、6年生の児童を対象として、科学博物館で実験を行った。実験結果から、子どもたちは、博物館の展示物の観察を本システムを用いて楽しく行うことができた。また本システムは展示物の理解のために、効果的であることが明確になった。
著者
村山 康男
出版者
多摩美術大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

写真の発明(1839年)から1870年代に至るフランスの美学、写真理論、美術批判、文科史関連文献資料の収集と整理、研究を中心として進めて来た。ドラクロワの美術論、日記、ボードレールの美術批評、クールベ、シャンフルーリらの美術論、テーヌの美学等の読解を進め、それと平行して、当時の代表的な写真家の写真美学との比較を行なった。その結果、ロマン派から写実主義にいたる美術理論は、「犠牲の理論」(無用な細部を犠牲(省略、選択)にし、全体的効果を高めるという主張)として捉えられるが、この理論が当時の写真美学にとっても基本的な骨格となっていることが明らかになった。この理論は伝統的な美学(選択的模倣の理論)の枠の中にある。それに制約されていたためにこそ、当時の画家、写真家、美術批評家等は、写真の新しいメディアとしての特性(新しい構図法、偶然性の強調等)を積極的に認めることができなかったことを我々の研究は明らかにした。我々が画家の個別研究では、ドラクロワやモネが写真の新しい特性に対して否定的であったことを明らかにしたが、このことは上記の制約からして当然といえる。画家の個別研究では、特にモネに関して研究を進めた。我々はテーヌ著『知性について』の研究によって、彼の知覚心理学が、モネの筆致の使用法を理論的に裏づけていることを明らかにした。モネの画業が、当時の写真よりもテーヌに多くを負っていることは、19世紀中葉のフランス美術における写真の位置を象徴的に示しており、我々の研究にとって大きな成果と言える。
著者
松田 嘉子
出版者
多摩美術大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

エジプト、スペイン、チュニジアで現地調査を行い、音楽家に聴き取り調査を実施した。アラブ古典音楽の新しい教育法についても調査した。また革命後の音楽事情を取材した。エジプト系オーストラリア人ウード奏者ジョゼフ・タワドロスを日本に招聘し、コンサートを開催した。期間全体を通じて、文献および音源の多彩な資料収集ができた。チュニジア伝統音楽研究機関「ラシディーヤ」との研究協力体制を強め、今後の展望が開けた。
著者
中村 寛
出版者
多摩美術大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、アメリカ国内の複数の地域におけるムスリムたちに焦点を当て、個々の地域における彼らの語り、日常的実践、価値や制度の構築・変容のプロセスを比較し解明するという全体構想のもとに行われる文化人類学的研究である。イスラームの地域性やムスリムの多様性を明らかにするために、ハーレムとデトロイトにおけるアフリカ系アメリカ人ムスリムたちの活動と彼らの地域との関係についての資料や文献、フィールド・データの収集・整理を行った。またフィールドワークや資料・文献収集を進めるなかで、これまで出会った問題群を理論的に取りまとめる作業を行った。