- 著者
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大西 一也
堀越 哲美
- 出版者
- 大妻女子大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2004
近年の住宅設計においては、過度にエネルギーに依存した建築計画、設備計画が主体となっており、自然の恩恵を享受する新たな現代的手法を目指すことが課題となっている。本研究は、昭和戦前期における中小住宅の平面型が確立していく過程で、住宅の洋風化、独立性の確保とともに、通風環境や日照環境が置かれた状況を分析し、住宅デザインに及ぼす環境的な配慮と気候設計理論を考察し、現代的展開の可能性を探ることを目的とした。昭和戦前期に『朝日住宅図案集』及び雑誌『住宅』に掲載された文化住宅において、居間の通風環境を、住宅の規模や平面形状と関係づけて分析を行った。また、大正から現代までの住宅の通風環境の史的変容についても、住宅図案集をもとに比較分析した。調査方法として、開口部の関係により居間の通風状況を簡易に算定できる指標として「通風可能面積率」を開発し、住宅の平面形状と関係づけて居間の通風環境や通風輪道を分析した。気候風土や現代の生活様式に適応した住宅を設計する上で、この通風状況を簡易に算定する指標は有効になると考えられる。『朝日住宅図案集』に掲載された住宅を対象に、断面図と平面図に基づき、住宅の採光環境を日照到達距離という断面的な簡易指標で検討し、夏季の日射遮蔽と冬季の日照確保に最適な断面形状を得た。昭和戦前期において展開した気候設計理論についてまとめることを目的として、昭和戦前期に研究者や建築家により単行本として刊行された文献や雑誌記事を対象として、室内気候設計手法を抽出整理し、当時のパッシブ手法を分析した。また雑誌『住宅』に掲載された住宅事例を対象として、室内気候設計手法の実践及び通風環境の状況を検証した。