著者
TAHIR Marghoob Hussain ターヒル マルグーブ フサイン
出版者
大阪大学大学院言語文化研究科
雑誌
Frontier of foreign language education = 外国語教育のフロンティア (ISSN:24339636)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.209-221, 2021

教材研究本稿は、ウルドゥー語を学習する日本人学生を対象とした教材のうち、近代ウルドゥー文学のなかの、特に新体詩の基礎を築く上で大きく貢献したアルターフ・フサイン・ハーリー(Khwāja Alt̤āf Ḥusain Ḥālī, 1837-1914) と、南アジアのムスリムの自立を訴える詩でムスリムの政治・社会運動の思想的基盤を築き、パキスタンでは「大学者 'allāma」として尊敬を集めるムハンマド・イクバール(Muḥammad Iqbāl, 1877-1938)に関する紹介文である。ハーリーは詩作においてはガーリブ(Mirzā Asad Allāh Khān Ghālib, 1797-1869) の弟子であった。このため当初は恋愛やスーフィズムなどを主題とした伝統的なウルドゥー詩を書いていたが、イギリス植民地期の南アジアのムスリムの近代化運動「アリーガル運動」を牽引したサイイド・アフマド・ハーン(Saiyid Aḥmad Khān, 1817-98)に感化されると、ムスリムの近代化を文学面で支えた。詩集の序文でハーリーは恋愛など古典詩における伝統的な主題から、現実社会に目を向けた詩を作るべきであると主張し、この長い序文は『詩序論Muqaddima Shi'r o Shā'irī』 (1893 年) として別途刊行された。ウルドゥー文学史におけるハーリーの評価はその詩よりも、新体詩運動先導的役割にある。ハーリーの活動は、ウルドゥー文学史上重要な意味を持つばかりでなく、南アジアのムスリム、特にウルドゥー語話者の間での近代化の問題と深くかかわることから、理解しておく必要がある。ハーリーの作品としては、ムスリムの盛衰を描いた『ハーリーの六行詩Musaddas-e Ḥālī』の一部を紹介する。これはパキスタンのウルドゥー語教科書にも掲載されている。イクバールはパキスタンにおいて「イクバール学Iqbāliyāt, Iqbal Studies」として学問分野が確立して大学院での授業科目も設置されているほか、その詩想や思想を研究する機関が複数存在されている。また、彼のペルシア詩はイランでよく知られており、イクバールは「ラーホールのイクバールIqbāl Lāhorī」として知られている。青年期にヨーロッパに学んだイクバールは、西洋の文化を体験したことで、ムスリムが辿るべき道を示すべく、哲学的な内容を簡明な語彙で描出した。ここでは、各詩人の生涯の概要と作品の特徴を、文法的に理解しやすい詩句を例示しつつ解説している。分量はそれぞれ1 回の授業で読む程度のものとし、語彙や文体も中級の学生が理解できるよう簡明なものとなるように心がけた。これにより、中級レベルのウルドゥー語運用能力によって、近代ウルドゥー文学の基本的知識と教養である詩人 2 名について理解できることを目指す。
著者
郡 史郎 Kori Shiro コオリ シロウ
出版者
大阪大学大学院言語文化研究科
雑誌
言語文化共同研究プロジェクト
巻号頁・発行日
no.2020, pp.11-28, 2021-05-31

音声言語の研究(15)教会ラテン語の標準発音であるイタリア式について解説した書籍類の説明は,それだけでは現実の発音を再現できない不十分なものがほとんどで,実際とは異なる内容も書かれている。本稿では標準発音としてのイタリア式の採用の経緯を整理し, 1903年以降の録音録画資料を使っておこなった調査の結果にもとづき実際のイタリア式がどのようなものかを報告する。調査の結果では,ほとんどの解説書が触れない「単語間の音結合」の説明が現実の再現には必要であり, "inexcelsis"の下線部はカナ書きすれば[イネ]であって[インエ]ではない。"excelsis"は[エクチェルスイス]が多く,解説書が言う[エクシェルスイス]ではない。mihiは解説書が言う作為的な[ミキ]は一変種として存在するが,特にミサ曲では[ミー]か有声のh音を使う[ミヒ]が多い。従来の解説書の説明はイタリア風ではあってもイタリア式の実態の説明と言えず,グレゴリオ聖歌の校訂に大きな貢献をした20世紀初頭のフランス・ソレム修道院の独特な説明を,実際の発音をよく観察しないまま直接間接に受け売りしたものかと思われる。
著者
瀧田 恵巳 Takita Emi タキタ エミ
出版者
大阪大学大学院言語文化研究科
雑誌
言語文化研究 (ISSN:03874478)
巻号頁・発行日
no.40, pp.83-104, 2014

Bei der Analyse der Sätze mit her- und hin- in der Erzählung sind folgende vier Begriffe unentbehrlich: „der Erzähler", „die Figur" in der Erzählungssituation, „der Gesichtspunkt" (Point of View) für das Geschilderte und „die Origo" als Koordinatenzentrum des Zeigfeldes. Jedoch werden sie vermischt und verursachen daher Widersprüche, z.B. die ererzählende Dichtung, in der der eigentliche Erzähler für das Erzählte nur die erste Person sein kann. Dieses Problem liegt an der Eigenschaft der Fiktion, „Als-Wirklichkeit". In diesem Aufsatz werden diese vier Begriffe unterschieden und mit anderen Erzählungsbestandteilen, „Autor", „Leser" und „Zuhörer" zusammen in die Bereiche „die Welt der Wirklichkeit" und „die Welt der Erzählung" eingeordnet. Aufgrund dieses Modells wird der Zusammenhang zwischen der dritten Person und der Vergegenwärtigung ermittelt, um die Widersprüche aufzulösen.
著者
浅野 元子 Asano Motoko アサノ モトコ
出版者
大阪大学大学院言語文化研究科
雑誌
言語文化共同研究プロジェクト
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.55-91, 2017-05-31

テクストマイニングとデジタルヒューマニティーズThis paper describes an extension study for the preliminary assessments of pedagogical implications of a corpus-based ESP approach to medical research article reading in classrooms of Japanese medicalcollege students. Over the course of lectures spanning four to five hours on two different days with one to three weeks in between, a total of 222 second-and third-year students were involved in activities in which mini-corpora were compiled, and the rhetorical structure of the abstract and introduction sections of research articles from the New England Journal of Medicine were determined by finding non-thematic linguistic clues or hint expressions.Before and after the course, a questionnaire was administered preliminarily to examine whether or not the course had helped the students to alleviate the burdens of reading textbooks in English. The students' written comments were also invited on a voluntary basis. The statistical analysis using Welch's paired t-test revealed that the degree of'difficulty'in reading textbooks in English decreased significantly (p≤0.00234); however, the effect size was as small as 0.260. The move analysis of the students'written comments showed that th e' burdens or anxiety/dissatisfaction'comments tended to be provided together with 'achievements or findings', indicating that the students tended to soften their negative comments by combining them with positive ones. The observation revealed that quantitative, multivariate analyses may not be suitable for a small amount of written comments and might need to be used in combination with qualitative examinations. The results of this study suggested that the number of learning items should be reduced and the amount of explicit explanations about corpus tools as well as moves should be increased in the classroom in the future.本研究は,医学論文における言語的特徴の検討についての教育応用を模索するために,ミニコーパスの構築ならびにムーブの明示的指導と練習を取り入れた授業を行い,授業後に,学生にとって英語で書かれた専門文書を読むことの負荷が軽減するであろうかという聞いに対する答えを得る方法について予備的に検討した研究の延長研究である。本研究の背景としては,グローパル化に対応した英語教育において,医学生のリーデイング能力としては医学・医療の研究の基礎に必要な医学英語が理解できること,ライティング能力としては医学論文の英文abstractを書けることなどが, 医学英語教育学会によるガイドラインでの最低要件とされることがある。医学系単科大学の第2学年と第3学年の男女学生合計222名を対象にl回当たり60分の授業を4~5回行った。授業は,学術文書を英語で書くためには,学術文書をその分野の専門家のように英語で読むのが最良の方法であるというESPの概念や実践報告の積み重ねを重視する授業学の考えに基づいて行った。l回目の授業開始前と最後の授業終了後に英語で書かれた専門文書のなかでもより身近な教科書を読むことへの負担について質問紙調査を実施し,最後の授業後には自由回答による授業についての意見を求めた。質問紙調査では,欠損値のなかった197名を対象として統計学的に検討した。自由回答による意見は,回答が得られた34名の叙述を対象に,ムーブをコードして質的に検討し,多変量解析を用いて量的に検討した。質問紙調査では,英語で喜かれた教科書を読むことの難しさについて,授業終了後に授業開始前と比較して統計学的に有意な低下(p≤0.00234, Welchの対応のあるt検定)が認められたが,効果量は0.260と低かった。自由回答による意見では,量的検討に質的検討を組み合わせることの必要性が示唆され,授業での「負担または不安・不満」 は「達成または発見・気づき」や「提案」などとともに述べられ,和らげた語調を用いて述べられる傾向が示されたと考えられた。授業時間当たりの学習項目が多く,難易度が高かったことが示唆され,今後改善の必要があると考えられた。
著者
郡 史郎
出版者
大阪大学大学院言語文化研究科
雑誌
言語文化共同研究プロジェクト
巻号頁・発行日
no.2018, pp.17-28, 2019-05-31

音声言語の研究(13)日本語におけるアクセントやイントネーションの逸脱に対して感じられる違和感の程度について,聴取調査による簡単な検討をおこなった。2・3 拍の和語名詞は本来の型と異なるアクセントに感じられる違和感は一般には強い。その中で,本来は尾高型である語を平板型で言うことへの違和感は相対的に小さい。文内のイントネーションについては,意味の限定関係が決める規則の知識はあいまい文の言い分けにもじょうずな読みに聞こえるためにも必要だが,規則に違反した発音であっても,意味の違いが生じない限り,感じられる違和感は小さい。
著者
張 雨辰 Cheng Zhangyu
出版者
大阪大学大学院言語文化研究科
雑誌
言語文化共同研究プロジェクト
巻号頁・発行日
no.2019, pp.41-50, 2020-07-31

自然言語への理論的アプローチ
著者
坂場 大道 サカバ ヒロミチ
出版者
大阪大学大学院言語文化研究科
雑誌
言語文化共同研究プロジェクト
巻号頁・発行日
no.2019, pp.31-40, 2020-07-31

認知・機能言語学研究(5)