著者
上平 崇仁
出版者
専修大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,グローバル化する社会の人々のための重要なコミュニケーション手段として,言語の制約を超える視覚伝達に焦点をあてたデザイン学習ツールキットの開発を行った.10点のデザイン学習ツールの試作,開発,ワークショップを実施し,研究を通して,専門家が少ない環境でも道具によって人々の中に関心が生まれ.そこから学習を支援するきっかけをつくることはできることがわかった.また異なる言語/異文化間においては精度の高いコミュニケーション方法を学ぶよりも,異なる知見を持ち寄った協業を実践することが重要であるという結論に至り,生産的なコミュニケーションを生み出すツールのデザインを生み出すことに焦点を当てた.
著者
小藤 康夫
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は「経済環境激変下における金融機関の経営行動」として、誰の目から見ても大転換したと認識された小泉純一郎首相(2001年4月〜2006年9月)のもとでの金融行政を対象にしている。それは大きく2つに分けることができる。ひとつは竹中平蔵金融相の「金融再生プログラム」であり、もうひとつは伊藤達也金融相の「金融改革プログラム」である。第1部では竹中平蔵金融相の金融行政を分析している。竹中氏が主導した02年秋の金融再生プログラムでは、当時の大手銀行グループに不良債権処理の抜本的改革を迫った。「会計」を武器としながら大手銀行の財務内容の劣悪さを曝け出し、経営改革を迫る強引な手法は過去の協調を重視した金融行政とまったく対照的なやり方であった。ここでいう会計的手法とは銀行の貸出債権を評価するにあたって新たにDCF法を採用したことであり、また将来の税金の前払いに相当する繰延税金資産を厳格に評価したことであった。これだけで大手銀行の財務内容は一転し、不良債権問題に向かって積極的に取り組まざるを得ない状況に追い詰められていった。第1部ではこうした竹中氏による大手銀行の不良債権問題への取り組みに焦点をあてながら、本当に正しい手法であったかを検討している。第2部では伊藤達也金融相によって策定された金融改革プログラムに注目し、そこで展開されている大手銀行グループ向けの金融コングロマリット化と、地域金融機関に向けたリレーションシップバンキングについて分析している。金融庁による金融改革プログラムで展開されている内容は現実の問題を直視すれば、実行するのが極めて難しい。それを強引に民間金融機関に強いれば、ただ混乱をもたらすだけである。まさに金融行政リスクの顕在化となる。本来、民間金融機関は市場の規律にしたがって行動すればよい。もちろん、将来の動きを先取りする能力が備わっていればそれでよい。しかし、成熟した日本経済は将来の動きが読み取りにくい。だからこそ、民間金融機関にとって市場からのシグナルにしたがって忠実に行動する必要がある。第2部はそうした考え方に基づきながら金融改革プログラムを中心に検討し、その内容に無理があることを理論的・実証的に明らかにしている。
著者
金子 洋之
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、「証明」という概念に基づく意味論を再構築するための基礎研究として、非形式的証明という概念に焦点を合わせてきた。その結果、論理的証明の有用性と妥当性をどう調停するかという問題に非形式的な証明の概念が密接に関連すること、また、ブラウワーのバー定理の証明を分析することを通して、心的構成としての証明が、非形式的証明という概念の解明への重要な手がかりになることが、明らかになってきた。
著者
新井 勝紘 西村 明
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、軍事郵便と従軍日記をパーソナルメディアとしてとらえ、資料の所在を明らかにするとともに、軍事郵便の内容や制度史、軍事郵便・従軍日記を記した人々の戦争に対する意識や対外認識についての考察を重ねた。そのために現地調査を実施し、資料の収集や写真撮影を行ない、その分析を試みた。また、研究成果を公開し、各地の研究団体と積極的に連携を図った。こうしたなかで現在、全国各地で個人及び保存機関などが軍事郵便・従軍日記の翻刻や出版をさかんに取り組んでいることを把握した。それにより軍事郵便・従軍日記がいまだに多くの人々に強い影響力をもっていることを認識するとともに、その内容分析の深化をはからなければならないという認識に至った。
著者
増子 恵一
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

ノコギリハリアリ1個体から抽出できるDNA量を働きアリを材料にしてまず検討した。ノコギリハリアリは体長4mmの微小な種だが、個体あたり400-700ngの高分子DNAが抽出できることがわかった。次にこのDNAを鋳型に用いたPCR法によって、ノコギリアリ個体間のDNA多型の検出を試みた。次のような種々のプライマーを合成し用いた。:(1)CAP-PCR法におけるdegenerateプライマー:(CA)_7および(AC)_7の3'端にDG,DA,DT,DCをつなげたもの(Dはnot C)。さらに(CA)_7および(AG)_7の3'端にHG,HA,HT,HCをつなげたもの(Hはnot G)。(2)(GA)_7および(AG)_7の3'端に4塩基をつなげたもの。(3)(GA)_7および(AG)_7の3'端に2塩基の配列をつなげたもの。)(4)アンカー配列を繰り返し配列の5'端につなげたもの(Wu et al. 1994による):CCAG(GT)_6、CCC(GT)_6、CCT(GA)_6、CCC(GA)_6、GCTTG(GT)_6、GCCA(GA)_6。(6)マイクロサテライトなどの基本単位の数回の繰り返し:(CAG)_5、(TAG)_5、(GATA)_4、(GCGT)_4。さらに制限酵素を併用して、鋳型DNAまたは増殖産物を4塩基識別の制限酵素で消化し泳動する方法も検討した。その結果、特異性の高い(3)のプライマーの1つで常に個体間の多型が生じる別のプライマーも確認した。さらにアガロース電気泳動に加えて、ポリアクリルアミド(+銀染色)も併用し、アガロースでは検出できないわずかな断片長の差異を検出することができた。今回の研究効果だけではまだ手法的には十分とは言えないが、近い将来にノコギリハリアリの血縁解析とreproductive skewの研究に本格的に取り組めるだろうと予測される。
著者
鐘ケ江 晴彦 服部 あさこ
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

辺野古沖海上基地建設反対運動の特質としては、a.運動目的の複合性、b.参加者の多様性、c.闘争手段の幅広さ、d.地元第一主義、加害者意識、未来志向性、楽観主義といったリーダー達の意識、などが明らかになった。中心的な参加者のライフヒストリーとしては、沖縄出身であるか否か、学生運動や労働運動の経験、沖縄の平和運動に関与し始めた時期、辺野古の運動への参加動機などで多様性があるが、いずれも大きな「人生の転機」を経験していることが分った。
著者
江崎 雄治 西岡 八郎 小池 司朗 山内 昌和 菅 桂太
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、地域別の将来人口推計の方法について検討した。主な成果は以下の通りである。(1)世界各国の実状を調査し、コーホート要因法が標準的手法であることを確認した。(2)人口移動に関するより適切な推計モデルについて検討した。(3)独自の質問紙調査を実施し、将来の出生の見通しについて議論を行った。(4)外国人の出生、死亡の将来人口推計に対する影響は小さいことが確かめられた。(5)市町村別世帯数の将来推計について課題を整理した。