著者
石川 達夫
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

地政学的・歴史的条件などによって固有の精神風土が形成された中欧のチェコでは、深刻なものと滑稽なもの、悲劇と喜劇が混合した独特のグロテスクと笑いが発展したが、それは現代チェコ文学と中世チェコ文学に顕著に見られる。本研究は、特にグレーヴィチの中世グロテスク論とチェコの最新の中世の笑いに関する論考を参照しつつ、①現代および中世チェコの文学作品の具体的な分析を通じて独特のグロテスクと笑いを解明し、②両方の時代におけるグロテスクと笑いの共通点と相違点を明らかにすると共に、人間存在の真相を開示するものとしてのグロテスクと笑いの時代を超えた機能と意味を探求する。
著者
長谷川 真理子
出版者
専修大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1991

筆者が1987年から1989年にかけて、英国サセックス州のペットワ-ス公園に生息するダマジカのレック繁殖行動を調査した資料を分析し、レック繁殖における雄どうしの闘争の機能の解明と、レックにおける雄間の繁殖成功度の偏りを表わすシミュレ-ション・モデルの開発に関して研究をおこなった。ダマジカは、レック内において頻繁に雄どうしが闘争を行なうが、その闘争にどのような意味があるのかは不明であった。分析の結果、レック内での闘争のほとんどは勝敗の結着があいまいな、60秒以下の闘いであること、闘争のほとんどは、闘争をしかけた個体もしかけられた個体も、なわばり内から雌のほとんどすべてを失う結果に終わること、闘争に勝つことと繁殖成功度との間には相関がないこと、なわばり内の雌の数が少ない雄が、なわばり内に多くの雌を持つ雄に対して闘いをしかけることが明らかとなった。なわばり内にいる雌の数と各雄の繁殖成功度との関係を分析すると、レック内にいる雌の、各雄のなわばりへの分布の分散が大きいほど(つまり分布に偏りがあるほど)、各雄の繁殖成切度間の分散も大きくなることがわかった。これよりダマジカのレックで行なわている闘争は、配偶の確率の低い雄が、レック内の雌の分布の偏りを平均化し、特定の雄の配偶のチャンスを低める機能を持っていることが推測される。上記のようなレック内の闘争による、雌の移動、雌が他の雌のいるところへ行きたがる傾向などを組み込み、実際のデ-タから得られた値を導入して、レック内の各雄をそれぞれ一つのセルとみなし、セル・オ-トマトンの考えでレック繁殖のモデルを開発した。これについては、いくつかの点について改良をほどこしている段階である。
著者
内田 義彦
出版者
専修大学
巻号頁・発行日
1954

博士論文
著者
高橋 梵仙
出版者
専修大学
巻号頁・発行日
1960

博士論文
著者
王 伸子
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

日本語教育における音声指導について、学習者が取り組める活動として、プロのナレーター等が活動広報のために作成する「ボイスサンプル」に着目して、その教材化と効果について研究した。その成果を、学科における口頭発表、雑誌への論文発表でおこない、国内外でのワークショップも実施し、招待講演も実施することができた。また、ボイスサンプルの教材化についてのホームページを開設し公開した。大きな成果としては、所属大学でナレーションのボイスサンプルを日本語表現として学ぶ専門科目「日本語表現論1」を開設できた。この研究を通じ、ナレーターとのパイプができたので、引き続き日本語教育の教材作成の研究にも繋げていく計画である。
著者
中垣 恒太郎
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

アメリカ大衆文化における「ホーボー」表象の変遷を探る。ホーボーは「渡り労働者」を指す言葉であり、世紀転換期から1930 年代にかけて労働環境の変化などを背景として社会現象と化していたが、1960年代以降の表象においては労働の描写が抹消され理想化された姿で復活を遂げる。19世紀中庸に出現する「放浪者」(tramp)との連関、映画やフォーク・ソングをめぐるメディア横断的視座、ヴァガボンド、ボヘミアン、瘋癲などの概念を参照し、アメリカ大衆文化における放浪者表象を比較文学の見地から展望する。現代の労働者たちの姿、中南米をはじめとする移民の視点にも目を向けることで分断が進むアメリカの現況と課題をも探る。
著者
庄司 拓也
出版者
専修大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

初期感化院の一つである東京感化院の運営及び感化教育の実態を明らかにした。具体的には、東京感化院は私立の施設であるため、比較的高額な入所費用を徴収しており、収容児に階層的な偏りのあることを確認できた。また、明治期の日本における感化教育の整備と展開の過程を明らかにした。具体的には、明治期から大正期にかけて、感化院の職員の不良少年観は変化していっており、精神医学を感化教育に導入していこうとする動きなどを確認できた。
著者
長田 洋和
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

神経発達症,とりわけ,自閉スペクトラム症,あるいはまた注意欠如・多動症を有する児・者は,その病理・心理的特徴から,インターネット病的使用の傾向を持ちやすいことが示唆されてきている。インターネット病的使用には,反社会的行動の背景にあるCU特性(callous-unemotional traits)との関連があると思われることから,人生早期に行動特徴が現れる,自閉スペクトラム症あるいはまた注意欠如・多動症を有する児においてCU特性の有無とインターネット病的使用傾向があることとCU特性との関連を探索的に研究した。
著者
野口 武悟
出版者
専修大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、これまで詳らかでなかった特別支援学校における学校図書館の現状と課題を、全国の特別支援学校を対象とした質問紙調査とそれを踏まえて行った訪問調査により明らかにした。その結果、現状には、(1)特別支援学校と小学校、中学校、高等学校の学校図書館とを比べると大きな開きがあること、(2)特別支援学校の校種間、本校と分校の間、そして設置者(国立、公立、私立、及び公立であれば設置している都道府県)の間で、それぞれ、大きな開きが生じていることが明らかとなった。とりわけ、知的障害児を対象とする特別支援学校の学校図書館は著しく低い水準にとどまっており、その改善が急がれる。
著者
鈴木 雄大
出版者
専修大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

「反因果説に基づく反自然主義的な行為観の構築」という本研究プロジェクトの第3年目の本年度は、行為に関する「選言説」と呼ばれる立場を整理し、そのうちのあるバージョンを擁護することを主目標とした。行為に関する選言説は、行為にとって重要な三つの要素に関連して、三つの種類に分類される。その三つの要素とは、身体動作・意図・理由である。理由に関する選言説についてはすでに前年度に研究を進めたので、本年度の主な研究対象は身体動作の選言説と、意図の選言説であった。行為の反因果説に対立する因果説によれば、何らかの行為がなされるためには、ある身体動作が何らかの意図によって引き起こされたのではなければならない。この主張を導き出すために、意図の共通要素説と、身体動作の共通要素説が前提となる。意図の選言説と身体動作の選言説は、そうした前提をそれぞれ拒否することによって、因果説を導くことを防ぐ。まず身体動作の選言説に関しては、行為に関わる身体動作と、行為とは無関係な身体動作との間の比較が問題となり、身体動作の選言説は、二つの身体動作は同種のものではないと主張する。本研究は、身体動作の選言説を擁護するための理論構築を行い、その研究成果を、2016年6月6日に立正大学で開かれた国際ワークショップTaipei-Tokyo Workshop in Philosophyにおいて発表した。次に意図の選言説に関しては、行為へと実現した意図と、行為へと実現しなかった意図との間の比較が問題となり、意図の選言説は、二つの意図は同種のものではないと主張する。本研究は、意図の選言説を擁護するための理論構築を行い、その研究成果を、2016年11月26日に台湾の東呉大学で開かれた国際ワークショップSoochow International Workshop on “Knowledge and Action”において発表した。
著者
松井 暁 松元 雅和 向山 恭一 坂口 緑 伊藤 恭彦 施 光恒 田上 孝一 有賀 誠
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本プロジェクトでは、全体テーマであるグローバル・イシューを六つのパートに分け、グループに分かれて研究を推進する体制をとった。すなわち、グローバル市場、政治空間の変容、戦争と平和、環境・生命、主体・関係・アイデンティティの変容、変革の方向である。そのうち、グローバル市場については、伊藤恭彦が国際的な課税の正義に関する著作を発表した。政治空間の変容については、有賀誠が著作『臨界点の政治学』で総合的に考察している。松元雅和が合理的投票者の行動についての論考を、施光恒が愛国主義と左派を巡る論考を提出した。戦争と平和については、松元雅和がテロと戦う論理と倫理について、有賀誠が上述書で正戦論について検討している。環境・生命では、松井暁が生産性の上昇や労働からの解放といった現象とエコロジーの両立可能性を探求している。主体・関係・アイデンティティの変容では坂口緑のポスト・コミュニタリアニズム論や承認論の研究が進んでいる。最後に変革の方向については、施光恒がリベラルな「脱グローバル化」の探求という観点から、新自由主義、ナショナリズム、保守主義を比較検討し、田上孝一がマルクスの社会主義を哲学的観点から再考している。それぞれの研究は、すべて本プロジェクトのテーマであるグローバル・イシューとの関連を踏まえつつ進められている。すでに出された業績からは、本プロジェクトの特色である規範理論的なアプローチの成果が明らかに示されている。
著者
植村 八潮 野口 武悟
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、学校図書館において導入可能な電子書籍の利用環境構築のモデルを提示することを目的とする。そのためには、電子書籍が円滑に学校および学校図書館に導入できる環境(システム)の構築が不可欠である。一方、デジタル教科書の検討が進んでおり、電子書籍への関心も高まりつつある。しかしながら、学校および学校図書館において、電子書籍の取扱い環境やシステムについて検討は十分になされていない。そこで、学校図書館とベンダー(事業者)を対象に調査を行い、学校図書館における図書館基幹システムと利用インターフェースについて、現状と課題を明らかにした。まず、学校図書館における図書館基幹システムの導入やその運用状況に注目し、学校図書館業務の情報化の状況を調査し、現状を明らかにした。さらに、学校図書館において導入しやすく、かつ図書館基幹システムとも連携可能な電子書籍システムのモデルとして、学校図書館とベンダーを対象とした調査を基に、専用端末によるスタンドアロン型と、パソコンやタブレットPCを用いたクラウドサーバー型の2タイプのモデルを提案した。前者はインターネット環境のない学校向けで、セキュリティ対策やメンテナンスが学校の負担とならない設計である。後者はある程度の規模・利用数にも柔軟に応じられるシステムで,アクセシビリティへの対応も考慮した設計である。この二つのモデルを協力を得た学校図書館で、教師並びに児童生徒に実際に使用してもらい検討した。さらに、システムベンダー(事業者)を対象に訪問によるインタビュー調査と、システム導入学校図書館へのインタビュー調査を行い、学校図書館における図書館基幹システムと利用インターフェースについて、現状と課題を明らかにした。
著者
舘鼻 誠
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

安芸国の中世武士団小早川氏の領域(安芸東南部)には、中世の石塔(宝篋印塔・五輪塔)が無数に残る。本研究はこうした石塔を歴史資料として活用するため、残欠に至るまで一つひとつ調査を行い、所在位置や原位置の確認、個体数の把握、各部寸法や特徴など、今後の研究に必要な基本データを収集したものである。調査地点は6 市町・279 箇所にわたり、確認した石塔は、宝篋印塔339 基、五輪塔1042 基、一石五輪塔487 基に及ぶ。旧三原市域を除けば、初めて実施された石塔の悉皆調査であり、その意義は極めて大きい。
著者
押山 美知子
出版者
専修大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は少女マンガ誌に掲載されたスポーツする少女を主人公とする作品(以下、スポーツ少女マンガ)の盛衰を明らかにすることを目的に、六〇年代から八〇年代までのスポーツ少女マンガを取り上げ、ヒロインの表象をジェンダー批評の観点から分析し、その歴史的変遷を検証したものである。国会図書館所蔵の主要少女マンガ誌12誌を調査し、六〇年代の80作、七〇年代の374作、八〇年代の231作の計685作について分析した結果は以下の通り。1.七〇年代まではスポーツと人生が一体化したヒロインが多く描かれ、身体描写にもリアリティが求められた。2.八〇年代はヒロインにとってのスポーツの重要度が低下し、楽しむ姿勢が見られた。
著者
山田 健太
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

2014年には特定秘密保護法が施行、2015年には安保関連法制の制定により有事法制もより法整備が進み、これに伴い言論の自由に関する規定も盛り込まれるなどした。また2015年末から2016年にかけて、放送法の解釈及びいわゆる公権力とメディアの関係が問われることとなった。そこで本研究においては、第1に特定秘密保護法の法構造と運用監視システム、同法と取材・報道の自由の関係について、アメリカやイギリスの状況を比較検討しつつ研究を実施した。第2に放送法の法解釈と行政指導等の行政機関の対応について歴史的考察を行い、併せて放送局の現場における対応について、ドイツの状況を比較検討しつつ研究を実施した。
著者
加藤 安彦 篠崎 晃一
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

急速に普及した携帯電話を介したメイルでのコミュニケーション方法は、若年層においてすでに定着しており、日常生活に欠くことのできないコミュニケーション手段である。最近では様々な絵文字が現われ、携帯電話会社の中にはその充実に力を入れている会社もある。この携帯メイルによるコミュニケーションを研究対象として、若年層における携帯メイルの役割を明らかにすべく、アンケート調査と、実際のメイルデータの収集を行った。アンケート調査は、携帯メイルによる謝罪場面でどのような謝罪が行われるか、について簡単な意識調査を行った。これは、待ち合わせの約束をしてその約束に遅刻しそうな時、携帯メイルを介してどのような表現を採用するのかを調査したものである。また、若年層が、同年代を主に他の年代の相手も含めて実際に行った携帯メイルデータの収集も行った。携帯メイルには、携帯を所有している学生の生年月日や出身地、メイルをやりとりした相手の出身地と相手との関係、親しさ(親密度)といった情報を付与し、データ全体を表現の特徴によって情報との関係をみた。データを分析した結果、葉書や手紙などと異なり、顔文字・絵文字の出現、星(☆や★)、音符(♪)などの記号類、「(笑)」や「(泣)」などといった表現、すなわちパラ言語的な表現が多用されていることがわかった。また、こうしたパラ言語的な表現は、相手との関係、距離感、すなわち親密度によって使用される表現形式が異なることも明らかになった。
著者
伊藤 武 西川 賢 久保 慶一 浅羽 祐樹 成廣 孝 川村 晃一
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、現代の民主主義国における選挙政治で拡がりつつあるプライマリー(予備選挙)について、基本的なデータを収集することを目的とする海外調査研究である。アメリカ、ヨーロッパ(英・伊・クロアチアなど)、アジア(韓国・インドネシア)を対象地域として、通常の選挙と比較してデータが少ないプライマリーについて、選挙制度、投票データの収集を行い、後続する共同研究の基盤とした。収集されたデータは一部先行して公開している。