著者
水田 惠三 清水 裕 西道 実 田中 優 堀 洋元
出版者
尚絅学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

仙台市、新潟中越両地区に防災意識に関するアンケート調査を行い、両地区の比較を行った。ランダムサンプリングにもかかわらず仙台、新潟中越両地区の回収率は5割近く、両地区ともに防災への意識は高い。両地区とも防災の主体は50歳代以上の方である。両地区においては災害伝言ダイヤルへの関心は少なく、さらに携帯電話が通じない場合の家族との連絡方法、集合場所を確認していない。発災後の情報源のほとんどはテレビであり、停電した場合(ワンセグは除いて)のことがほとんど想定されていない。仙台市民は家具の安定や自宅の耐震強度など防災のハード面に力を入れていたのに対して、新潟中越は地震に関する情報、家族での話し合いなど防災のソフト面に力を入れていた。仙台市民は地震による津波の被害はほとんど想定していなかった。
著者
池田 和浩
出版者
尚絅学院大学
雑誌
尚絅学院大学紀要 (ISSN:13496883)
巻号頁・発行日
no.63, pp.31-41, 2012-07

本研究では、想起された記憶から誘発された感情価と認知的覚醒度、および思考に費やす時間の長さが発散的思考の生成数に与える影響を検証した。実験では、90名の大学生が、ポジティブな記憶想起条件と、ネガティブな記憶想起条件、中性的な記憶想起条件の3群に振り分けられた。記憶想起後、参加者は一般的感情尺度およびGACLに回答した後、3つのテーマのいずれかで発散的思考課題を行った。実験の結果、特に活性アラウザルの高い女性の参加者において、ポジティブな感情価が、ネガティブな感情価に比べ、アイディアの生成を促すことが確認された。また、短い思考時間(3.5分)に比べ、長時間の思考(14分)がアイディアの生成を促すことが確認された。これらの結果に基づいて、創造的アイディア生成に促進的な影響力を持つ要因について考察を行った。
著者
不破 和彦
出版者
尚絅学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、東北地域で問題化している地域経済の後退に伴う雇用構造の大幅な変化との関連で、新規高校卒業者の就業動向の実状について統計的かつ個別的な事例調査手法による全体的な解明に取り組んだ。東北経済の後退は若年世代の労働市場を狭隘化させ、新規高校卒業者の就職に大きな制約を与え、さらに彼らの就業にも深刻な問題をもたらしている。特に、新規高卒就職者の多くは製造業、卸小売業、サービス業など単純労働に従事し、しかも労働条件も低下を期待し、地域労働市場の底辺に置かれている。このことは、若年世代の仕事および職場への定着を妨げる大きな要因となり、その解決が急がれる。一方、東北地域で就職志望する高校生を対象としたアンケート調査(今回は、宮城県11高校、約800名)からも、彼らの就職に対する不安が窺える。特に、職場の仕事への対応、人間関係への順応をめぐる不安が高くなっている。しかし、安定した職場への就職、仕事の継続などに対する願望は強くみられる点からも、就職に向けた高校での進路指導、たとえば働くことの社会的意義、事観の形成などをめぐる計画的、体系的な教育的指導法、カリキュラムの編成が改めて重要になってくる。さらには行政機関、企業はじめ地域全体として働く意欲をもつ若年世代の就業機会、安定した就業状況の構築に取り組むことが求められる。同時に、若年世代の安定した持続的な就業は地域経済とともに地域社会の発展に貢献するという観点からも急務な課題である。
著者
玉田 真紀
出版者
尚絅学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

研究目的は、繊維リサイクルの社会的なシステムを構築するための基礎研究データを得て問題点を明確にすることにある。繊維製品が大量生産、大量消費されるようになった現代、家庭で処分できないまま保管する衣服に困る事態が起きている。こうした繊維製品を資源回収するルートが各都道府県にどの程度存在するか、また、生活者にわかりやすく利用しやすい内容かを、各自治体から各家庭に配布される『ごみと資源の分別パンフレット』から分析し考察した。郵送とホームページより収集できたパンフレットの回収総数は1609(回収率89.0%)であった。9割以上回収できた県が55.3%、回収率が7割未満と低かった県は沖縄と秋田のみだった。平成7〜9年に東北地方のみを調査した時と比べると、パンフレットは手引きや事典などの形式が全般的に増え、詳細な品目を列挙するものが多く見られた。しかし記載品目は市町村で異なり、なぜその繊維製品を可燃、資源、粗大扱いにしているのかの基準がわかり難い。また、分別が細かすぎて実行し難いのではないかと思えるものが多かった。繊維製品が記載されている箇所を列挙して集計した結果、全国都道府県の平均値は、可燃扱いが92.4%、資源扱いが62.3%、粗大扱いが72.8%、不燃扱いが18.7%となった。資源扱いについて地域別に見ると、北海道45.8%、東北38.0%、関東77.4%、信越、北陸39.6%、東海80.0%、近畿77.7%、中国63.2%、四国55.4%、九州72.4%、沖縄45.5%となり、地域により格差があった。資源回収をする自治体の割合が7割を超えた地域は、上位から順に東海、近畿、関東、九州となり、歴史的に見て故繊維業者や再生利用する産業が近隣にある地域という特性が考えられる。回収物を利用する需要先の出口が確保できるため、行政の回収ルートも明示されていると思われた。