著者
内田 龍史
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.139-153, 2007-10-31 (Released:2008-01-08)
参考文献数
25
被引用文献数
3

近年、フリーターの増加が社会問題となっているが、学校から職業への「移行」(Transition)に関する研究からは、性別では女性が、また、学歴・家庭背景などが相対的に低い状況にある若者がフリーターになりやすいことが指摘されている。しかし、若者のフリーター「選択」に影響を与える要因についての量的な検討は多くはない。 本論文は、フリーター選択と近年着目されている社会的ネットワークとの関係に着目し、高校3年生を対象とした質問紙調査から、限定された社会的ネットワークがフリーター選択に影響を与えているかどうかについて検討を行った。その結果、高校生のネットワーク構造は「安定・ホワイトカラー」「不安定・ブルーカラー」ネットワークの2つに分類され、「安定・ホワイトカラー」ネットワークに組み込まれている高校生はフリーターを選択せず、逆に「不安定・ブルーカラー」ネットワークに組み込まれている高校生はフリーターを選択する傾向が見られた。高校生が組み込まれている社会的ネットワークの存在が、若者たちの進路分化に影響を与えていることが示唆されたのである。
著者
志水 宏吉 棚田 洋平 知念 渉 西田 芳正 林嵜 和彦 二羽 泰子 山本 晃輔 榎井 縁 内田 龍史 石川 朝子 高田 一宏 園山 大祐 堀家 由妃代
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究の目的は、「マイノリティ集団に対する排除と包摂」という視点から、現代日本の学校教育システムが有する制度的・組織的特性とそこから生じる諸課題を把握し、その改革・改善の方途を探ることにある。そのために、「被差別部落の人々」「外国人」「障害者」「貧困層」という4つのマイノリティ集団を設定し、彼らに対する教育の場における排除を、1)彼らの教育機会の現状、2)それに対する当事者の経験や評価の2側面から把握する。
著者
内田 龍史
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.31-43, 2019-08-30 (Released:2021-02-26)
参考文献数
43

部落差別は,近世以前の身分制を出発点とするものの,自由と平等をその基本理念とする近代社会において,差別が告発される形で生成されてきたと言えよう.そうした告発は,部落差別を撤廃するための国策を求める運動へと展開され,同和対策審議会答申(1965年)によって「実態的差別」と「心理的差別」,さらにはその悪循環を断ち切ることが行政の責務とされた.そのうえで実施された同和対策事業は,事業対象を求めることとなり,「同和地区」「同和地区住民」などといったカテゴリーが生成された. こうしたカテゴリーは,ターゲット型政策の実施・運用にあたって必要不可欠であるが,他方で施策の対象となる人々へのマイナスイメージや「ねたみ」・「逆差別」意識を生み出した.そうした意識は,今日まで引き続く部落差別の一端をなしていると言えよう. 現代社会において,差別が生成・維持されるメカニズムを考えるにあたり,部落解放運動などの社会運動による「告発」のインパクトと,その帰結として実施される政策,さらにはそれによって生じる否定的な反応といった,部落問題においては決して目新しくはない視点は,新しいレイシズム・新しいセクシズムなどのように,今日的な「差別の生成メカニズム」を論じるうえで,改めて欠かせないのではないかと考える.
著者
稲月 正 谷 富夫 西村 雄郎 近藤 敏夫 西田 芳正 山本 かほり 野入 直美 二階堂 裕子 高畑 幸 山ノ内 裕子 内田 龍史 妻木 進吾 堤 圭史郎 中西 尋子
出版者
北九州市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

在日韓国・朝鮮人と日系ブラジル人との生活史の比較分析からは(1)「移民」第1 世代の多くは周辺部労働市場に組み込まれたこと、(2)しかし、移住システム、資本主義の形態などの違いが社会関係資本の形成に差をもたらし、それらが職業的地位達成過程や民族関係(統合)の形成過程に影響を与えた可能性があること、などが示されつつある。また、在日韓国・朝鮮人の生活史パネル調査からは、(1)1990 年代後半時点でも見られた祖先祭祀の簡素化やエスニシティの変化が進んでいること、(2)その一方で 「継承」されたエスニシティの持続性自体は強いこと、などが示された。
著者
加藤 眞義 舩橋 晴俊 正村 俊之 田中 重好 山下 祐介 矢澤 修次郎 原口 弥生 中澤 秀雄 奥野 卓司 荻野 昌弘 小松 丈晃 松本 三和夫 内田 龍史 浅川 達人 高木 竜輔 阿部 晃士 髙橋 準 後藤 範章 山本 薫子 大門 信也 平井 太郎 岩井 紀子 金菱 清
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、東日本大震災のもたらす広範かつ複合的な被害の実態を明らかにし、そこからの復興の道筋をさぐるための総合的な社会学的研究をおこなうための、プラットフォームを構築することである。そのために、(1)理論班、(2)避難住民班、(3)復興班、(4)防災班、(5)エネルギー班、(6)データベース班を設け、「震災問題情報連絡会」および年次報告書『災後の社会学』等による情報交換を行った。