著者
出口 弘
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.67-86, 2004-03-31
被引用文献数
2

本稿で我々は、エージェントベース社会システム科学の研究プログラムにひとつの数理的な基礎を与える、社会学習に関する動学的なモデルとその分岐構造を分析する。そのために代替案選択に関する非定常マルコフ過程を導入し、そこから社会学習動学(SLD)と呼ばれる動的システムを定式化する。SLDは、エージェントベースモデリングとそのシミュレーションに対する理論的枠組みを提供する。この力学系の平衡点を変化させるために境界条件を制御する間接制御に着目しSLDを規範の形成と崩壊のプロセスの分析に適用する。これはもともとR.アクセルロッドによって規範ゲームとメタ規範ゲームとして定式化されエージェントベースシミュレーションによって分析されたものである。本稿ではこれにSLDを用いた再定式化を与えたものを数理的に解析し、幾つかの性質を定理として明らかにする。これは結果として二次の社会的ジレンマ問題に対する一つの解を与える。