著者
高橋 正樹 岸野 洋久
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.47-60, 2001-03-31 (Released:2016-09-30)
参考文献数
13

人生の各段階で私たちはさまざまな出来事(ライフイベント)に遭遇する。困難な状況下における人の意識や行動(対処)の様式は、イベントの有無や置かれた環境のみならず、幼児期から現在にいたる個人の人生経験にも大きく影響される。そして、この対処が続く人生の行動様式を形作って行く。こうした人生の長期にわたる履歴をはかる手法として、詳細な口述記録に基づくライフヒストリー研究や人生のある側面を投射した記録を繋ぎ合わせて行くライフコース研究がある。本稿では、集団解析を通じて、記憶化された人生の出来事の持続時間と他の出来事による置き換わりの過程を定量化することを試みる。目黒区住民を対象とした質問紙調査から、結婚や親の死、子の誕生などが強い出来事として記憶化される、という全体の傾向を明らかにした。ライフコースに添った思い出の置き換わりが見られるが、女性に比べ男性の方が置き換わりの程度が大きいこと、置き換わりは職業上の出来事の記憶化によって促進されること、通常の人生軌道では予期されていないような出来事は長期にわたり記憶化される傾向があることなどが明らかになった。また、集団の探索的解析により「戦争体験」といった同時代経験の重みを量的に位置づけることができた。人生の実証分析というテーマの中に、質的アプローチと量的アプローチの統合への可能性を読み取ることが期待される。
著者
佐藤 嘉倫
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.277-290, 2016 (Released:2017-01-16)
参考文献数
39

本稿の目的は, 数理社会学が社会的不平等研究に貢献するためにはミクロ・マクロ・リンクを意識する必要があることを示すことである. この目的のために, まず既存の量的研究と質的研究の問題点を指摘し, いくつかの数理モデルの論理構造を検討し, それらがミクロ水準とマクロ水準の移行を適切に扱っていることを主張する. 既存の量的研究は高度な統計分析により重要な知見を得てきたが, その知見を生み出した社会的メカニズムの分析が弱い. 一方, 質的研究はその社会的メカニズムを丹念に解明しているが, その知見の一般性について留保が必要である. この両者の問題点の解決策の1つとして, 数理モデルによる社会的不平等の解明がありうる. そこで本稿では相対的リスク回避モデル, 地位序列の生成モデル, 信頼と不平等のエージェント・ベースト・モデルの論理構造を検討し, それらがミクロ・マクロ・リンクを踏まえたものであることを示す. 今後の数理モデルもそのような方向性を持つことで社会的不平等研究に貢献するだろう.
著者
松本 雄大
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.99-112, 2019 (Released:2020-06-25)
参考文献数
25

本稿の目的は,ベイズ統計モデリングによってAPC分析の既存モデルを体系的に整理することである.年齢・時代・コーホートには線形従属の関係があり,識別問題を解消するための制約条件が必須となるが,その分析枠組みは現状においてまとめられていない.そこで本稿では,パラメータの縮小化に着目し,正規分布を事前分布として仮定することで各モデルが表現できることを示す.Intrinsic Estimatorと同等なリッジ回帰モデルは,デザイン行列のランク落ちを純粋に数理的な現象として捉え,すべてのパラメータの2乗ノルムを最小化することで「あらゆる特殊解の平均」に相当する推定値を得る方法である.ベイズ型コウホートモデルとして知られるランダムウォークモデルは,パラメータの1次階差の重み付け2乗和を最小化する制約であり,時系列構造を想定した付加条件というAPCの識別問題を考慮した克服方法となる.他にも等値制約モデルとランダム効果モデルを紹介し,シミュレーションによって各モデルの推定値と,その結果が得られる数理的なメカニズムを検討した.
著者
海野 道郎 長谷川 計二
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.5-19, 1989-03-24 (Released:2009-03-31)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本稿の目的は、(1)社会科学において「意図せざる結果」の概念が持つ重要性を主張するとともに、(2)「意図せざる結果」について概念的検討を加え、今後の分析のための枠組みを提供することにある。社会科学の古典において「意図せざる結果は繰り返し論じられてきた。さらに現代においても「自己組織性」や「社会運動論」などの現代社会学の最先端で「意図せざる結果」が論ぜられており、この概念の重要性が示唆された。 これらの研究の中でとりわけ重要なのはマートンとブードンである。そこでまず、マートンの「潜在機能」および「予言の自己成就」の2つの概念に検討を加え、これらの概念が「意図せざる結果」の下位類型であることを示した。次に、ブードンの研究を取り上げ、「意図せざる結果」の類型化の問題点を指摘するとともに、個々の行為が集積されるプロセスに着目した類型化の必要性を示唆した。最後に、ブードンによる「意図せざる結果」に関する社会理論の4つの形式─「マルクス型」、「トックヴィル型」、「マートン型」、「ウェーバー型」─を取り上げ、これらの類型が、ブードンの「方法論的個人主義」の立場と密接に関連して設定されていることを示し、「意図せざる結果」が生ずるプロセスについて一般的な枠組みを示唆した。
著者
藤山 英樹 鈴木 努
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.45-48, 2018 (Released:2019-02-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1
著者
浜田 宏 七條 達弘
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.107-123, 2010

Boudon (1982)および Kosaka (1986)によって定式化された相対的剥奪の数理モデルは,主に同質なメンバーからなる集団のみを分析の対象としていたが,Yamaguchi (1998)およびReyniers(1998)の発展モデルにより,異質な成員からなる社会での相対的剥奪を分析できるようになった.本稿ではこれらのモデルを統合してさらに一般化することで,『アメリカ兵』に代表される経験的データをより体系的に説明することを目指す.モデルを分析した結果,投資コストについて恵まれた集団のほうが,恵まれていない集団に比して相対的剥奪率が常に高いという命題が得られ,この命題はデータによっても支持された.また理論的には,コストが連続分布に従う場合でも相対的剥奪率が昇進率の増加関数となる領域ならびに減少関数となる領域が存在する,というインプリケーションが得られた.
著者
橋本 健二
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.2_5-2_22, 2008

「格差社会論」が注目を集めるなかで、階級研究・社会階層研究は、拡大する経済格差と「格差の固定化」など、社会的に注目されている諸現象を十分解明することができず、社会学に対する社会的要請に応えることができない状態にある。このことは同時に、現代日本の階級研究・社会階層研究が、社会学の諸分野に階級または社会階層という有効な独立変数を提供するという固有の使命を十分に果たしえない状況にあるということを意味する。<BR> 階級研究・社会階層研究の困難をもたらしたのは、その戦後日本における独特の展開過程だった。そこでは階級という概念が、政治主義的な主体、あるいは前近代的性格を残した世代的に固定的な集群とみなされ、対称的に社会階層は、連続的な序列、あるいはその中に人為的に作られた操作的カテゴリーにすぎないとみなされた。このため日本において階級と社会階層は、その有効性と現実性を大きく制約されてしまった。<BR> 階級研究・社会階層研究のこうした弱点と困難を克服するためには、(1)Marxの両極分解論を明確に否定して、資本家階級、新中間階級、労働者階級、旧中間階級の4階級図式、あるいはそのバリエーションを採用するとともに、(2)階級所属が産業構造、労働市場、家族、国家などさまざまな制度によって媒介されることによって形成される社会的カテゴリーとして社会階層を定義することが有効である。本論文ではこうしたアプローチを「階級―社会階層研究」と呼び、1965年SSM調査データ再コードデータの分析によってその有効性を明らかにする。
著者
林 直保子
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.19-32, 1993
被引用文献数
1

これまで行われてきた囚人のジレンマ(PD)研究は、PDを孤立した2者関係として捉えるにとどまり、集団内に存在する2者間におこる状況として捉えることをしてこなかった。本稿では、3者以上の集団と、その中に生れる複数のPD関係を考えることにより、従来のPD研究の限界を克服することを目指している。そのために本稿では、集団の各成員が自分のつきあう相手を選択し、相互指名によってPD関係が成立するという状況――「ネットワーク型囚人のジレンマ」を設定する。このような状況では、特定の2者間に将来の関係が保証されていないために、PDにおける戦略的行動によって相互協力関係を築くことは難しくなる。従ってこのような選択的交際状況においては、孤立した2者PDにおける相互協力達成のためには最も有効であるとされてきたtit-for-tat(TFT)戦略は、そのままの形で有効性を発揮することはない。本稿では、ネットワーク型PD状況ではどのような戦略が可能で、また有効なのかということを調べるために、Axelrod(1984)が同一相手との反復PDにおいて行った「戦略のコンピュータ選手権」という方法をネットワーク型PDに用いた。その結果ネットワーク型PD状況で最も有効な戦略は、相手の裏切りに対しては非指名という形で対応するout-for-tat(OFT)戦略であることが明らかにされた。このOFT戦略は、TFTと非常に良く似た性質をもつ戦略であり、対象選択レベルに適用されたTFTと言うことができる。
著者
鈴木 譲
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.331-344, 2000-10-30 (Released:2016-09-30)
参考文献数
15

本稿では、これまで主に哲学者、論理学者の間で議論されて来たニューコーム問題を数理社会学の観点から論ずる。ニューコーム問題とは、予言者の存在を仮定したパラドックス的設定の下での意思決定の問題である。予言者の能力によってこの問題の性質は大きく異なるが、本稿ではいわゆる予言者の完全性を仮定した場合に議論を限定し、この問題を2つの観点から論じる。第一は数理論理的な観点、特に公理系の無矛盾性の観点である。結論としては、ニューコーム問題は合理的意思決定の問題としてはそもそも決定不可能な命題であり、因果律の方向が本質的に重要であることを示す。因果律はその方向に応じて、順因果律と逆因果律の2種類を考えることが出来る。第二は社会学的観点であり、前述の数理論理的観点から得られた定式化を社会現象に応用することを試みる。この応用の具体例として、Weberのプロテスタンティズムの倫理のフォーマライゼーションを行い、カルヴィニズムにおける信徒の意思決定が逆因果律の論理に対応していることを示す。
著者
白波瀬 佐和子 石田 浩
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.185-201, 2018 (Released:2019-09-28)
参考文献数
53

本研究の目的は,個々人のライフコースで発生する様々なイベントを出身階層との関係から検討していくことにある.人生の初期,中期,後期におけるライフイベントの発生に着目し,それらに対する出身階層の効果を検討することで,今までの労働市場を中心に展開された社会階層研究とは異なる新たな地平を切り開くことを試みる.本論文では,ライフコースにおける3つのステージに着目する.40歳までの初婚,標準的なライフコースを歩んできたか,そして,高齢期における世帯類型に注目して,出身階層の影響の有無を検討する.本論で分析するデータは,2015年SSM調査である.具体的なリサーチクエスチョンは,(1)3つのライフステージのイベントや状況に出身階層の影響が認められるか,(2)父階層と母階層を区別することで両者の効果に違いがあるのか,(3)本人が獲得した学歴によって出身階層からの影響に違いがあるのか,である.分析結果によれば,いずれのライフステージにあっても出身階層の効果が認められ,その効果はライフステージの後半にあっても確認された.また,学歴によって出身階層からの効果に異質性はみられず,たとえ高学歴を獲得したとしても出身階層の不利さを挽回,あるいは恵まれた出身階層の効果を強化するような交互作用はみられなかった.初期の格差(出身階層)は個人のその後のライフイベントに継続して影響を及ぼしていた.
著者
数土 直紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.2-19, 2016 (Released:2016-08-06)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本稿は,新しい分析概念として複合化された社会メカニズムを提示することを目的としている.この概念は,有名なコールマンボート(Coleman 1990=2004)から想を得ている.従来のコールマンボートでは一連の因果関係だけが想定されているが,新しい概念では複数の因果関係が併存することを想定している.このように想定することで,私たちは複雑な社会現象をより深く理解することが可能になる.本稿では,新しい分析概念の有効性を示す一つの事例として,回帰モデルの有限混合を前提にした性別役割意識の分析をおこなった.最近の世論調査によると,日本人の性別役割意識の趨勢が不安定化している.このような変化を説明するためには,高学歴化・女性の労働力参加と性別役割意識を結ぶ2つの因果関係を想定することが必要になる.一つは性別役割意識に囚われなくなる人びとを生むが,もう一つは,ワークライフバランスを無視した働き方を強いることで,性別役割意識を肯定するような人びとを生む.その結果,性別役割意識の趨勢が不安定化するのだ.SSP-I 2010 (N=1,739) による分析結果は,本稿の仮説を支持するものになっている.このことは,複雑な社会現象の解明には,複合化された社会メカニズムの存在を仮定することが有効であることを明らかにしている.
著者
盛山 和夫
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.2_85-2_100, 1988-10-09 (Released:2009-03-06)
参考文献数
7
被引用文献数
3

権力という概念は、われわれが日常的に社会的世界を理解する上できわめて重要な役割を果たしている。そこでは、権力は、世界に作用を及ぼすところの実体であり、独立した要因であると概念化されている。「権力の大きさ」とか「権力の大小」といった概念は、実体としての権力を前提にしている。 しかしながら、このような実体としての権力の実在は疑わしい。ニュートン力学におけるような物理的な力は実在するかも知れないが、社会学理論においてそれと同等の役割を果たすべき実体としての権力は、存在しないと考えた方が、これまでの権力理論の混乱と失敗をよりよく説明することが出来る。ここで、実体としての権力と、被説明項としての権力現象とを区別することが重要である。後者は、実際に観測され、説明を求められているさまざまな権力現象である。それに対して、前者はそうした権力現象を説明するために、日常的な社会理解において考え出された説明要因である。しかも、これは説明要因として、厳密な検討に耐えうるものではなく、結局のところ幻想的な要因であると考えられる。 したがって、ありうべき権力理論においては、もはや説明要因としての権力概念を保持することはできない。むしろ、さまざまな権力現象を現象に即して説明していく試みの蓄積が必要である。
著者
Tsai Shu-Ling 鹿又 伸夫
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.179-195, 2011

&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;This paper examines whether and how educational expansion affects inequality of educational opportunity, focusing on the two hypotheses which argue that educational expansion transforms class inequality through saturation of education. Under the condition that a level of education approaches nearly saturation, the MMI hypothesis claims class inequality in attaining the level of education begins to decrease and the EMI hypothesis maintains class inequality over types within the level of education emerges. Taiwan and Japan showed similarity in educational system, but education in Taiwan has expanded more drastically than that in Japan. To test the hypotheses, utilizing their different time point in appearance of saturation caused by the respective pace of expansion, we present the expectations on changes in class inequality for the two countries. The result of analysis using survey data collected in each country is more consistent with the MMI rather than the EMI. Class inequality in attaining levels of education persisted until approaching saturation, but reduced in attaining senior high school education in Japan when this level of education reached saturation. Class inequality in attaining university education rather than junior college over types of higher education emerged clearly corresponding to approaching saturation in Taiwan but appeared in Japan before saturation. The result also indicates that educational expansion urges the transformation of class inequality and gender inequality through respective process. Educational expansion leads to reduction of gender inequality in attaining levels of education irrespective of rapidity and saturation of expansion and without interaction by class and gender in both countries, but hardly erodes gender-specific educational paths institutionalized by gender norm or preference preserved in Japan.
著者
瀧川 裕貴
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.215-223, 2011 (Released:2012-01-31)
参考文献数
17
被引用文献数
2

社会階層研究における理論の不在が指摘されるようになってすでに久しい.産業化の進展に伴う階級間の機会格差の消滅を予言した近代化理論と逆に階級対立の激化を予言したマルクス主義は,ともに決定的に誤っていたことが明らかになった(原・盛山 1999).その後に提唱されたいわゆるFJH 仮説は,産業化諸国における社会移動の「機会格差」の質的パタンの同一性を主張するもので,確かに実証データとの適合度は高い(Featherman et al. 1975).だがこの仮説は,なぜ産業化が進展した後でも階級間の「機会格差」が残り続けるのかを,理論的に説明するものではない. もう少し的を絞った問題としては教育,特に高等教育への進学における社会階層格差の存続をいかにして説明するべきかという問題がある.もちろん,これは社会階層全般における持続的不平等の問題と密接に関連している.高等教育を媒介として階層間の機会格差が持続するからである.さて,高等教育における持続的不平等とは,産業化の進展に伴い教育機会は全般的に大きく拡大したにもかかわらず,階層間の進学率の格差が残り続ける現象をいう.このような現象は,いくつかの例外を除き産業化を達成した諸国において共通に観察されている. 高等教育における持続的不平等の問題については,近年になっていくつかの注目すべき理論的考察が提出されてきている.なかでもR.ブリーンとJ.ゴールドソープが提唱した相対的リスク回避モデルは,大きな注目を集め,多くの実証的追試を産んだ3), 4).にもかかわらず彼らの相対的リスク回避モデルの定式化は不必要に煩雑であり,かつ多くの点で理論的な問いに答えるためには不十分であることは否めない.そこで,本稿ではブリーンとゴールドソープのモデルに対して筆者が与えた新たな定式化を紹介し,このモデルの意義と限界について説明を試みたい.
著者
高坂 健次 吹野 卓
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.93-116, 1989

天然の漁業資源は、一方では自然的再生産メカニズムを享受しているものの、他方では、人間の手による乱獲のためにしばしば枯渇の危機に晒されている。本稿では、資源の再生産メカニズムの仮定をモデルに組み込み、(1)漁獲規制を遵守した漁獲戦略と、(2)規制を無視して可能な限りの漁獲をする漁獲戦略、の2戦略が選択可能な状況について考察する。そして、漁獲活動がDawes(1975)の定式化による「社会的ジレンマ」に陥るのは、資源再生産と漁獲に関するパラメータが特定の関係を持つ場合だけであることを示す。あわせて、囚人のジレンマ・ゲーム論的な観点から、乱獲の数理モデルの社会学的含みについて考察を加える。
著者
山田 昌弘
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.94-98, 2016 (Released:2016-08-06)
参考文献数
2
被引用文献数
1