著者
星野 三喜夫
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 = Bulletin of Niigata Sangyo University Faculty of Economics (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.54, pp.47-62, 2019-10

ベトナムは9,600万人の人口を擁し、平均年齢も31歳と若く、ポテンシャルの高い国である。成長が鈍化傾向にあるアジア諸国・地域の中で高い経済成長を続けている。またその地理的な優位性と魅力ある投資環境から、世界各国・地域の有力企業が豊富な労働力と安価な人件費を求めて生産拠点をベトナムにシフトさせている。ベトナム経済の好調要因は、このような豊かで若い労働力と活況な国内消費、TPP加盟や全方位外交による外国資本の呼び込み、理数系教育施策等に求められる。一方、同国国営企業の改革は実質的に進んでおらず、TPP発効を受け喫緊の課題となっている。他方、ベトナムの投資環境の魅力度の高さは企業アンケート調査からも明らかで、現地マーケットの今後の成長性や安価な労働力、優秀な人材等に有望理由が求められる。投資インセンティブとして税制優遇措置等も導入されており、大型案件を含め外国からの投資は着実に増加している。更なる外国投資誘因に向けた課題として、労働コストの上昇、法制運用の不透明性、管理職クラスの人材確保難、インフラ未整備等が挙げられ、今後これらの改善が望まれる。
著者
秋山 正道
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.55, pp.29-36, 2020-02

本論は新潟県内(以下「本県」と表記)における空襲被害の実際を明らかにすることを目的とする。時期は第二次世界大戦中(1939~1945)とする。第二次世界大戦中、日本が受けた空襲被害は1945年にほとんどが集中している。その嚆矢が3月9日深夜から10日にかけて行われたいわゆる東京大空襲であり、最大の山場が8月6日の広島、8月9日の長崎への原爆投下であり、これが日本政府のポツダム宣言受諾に大きく影響したことは周知のとおりである。この空襲はすべて米軍によって行われた。中小規模の都市への空襲は6月17日~18日にかけて鹿児島・大牟田・浜松・四日市の4都市に始まり8月14日の熊谷、伊勢崎(群馬県)の都市空襲まで続いた。この間、18回にわたり空襲が繰り返し行われ、60都市がその被害を受けた。しかし、日本政府がポツダム宣言を受諾した8月14日に空襲を受けたのは上の2都市のほかに大阪市と秋田市もあったことで分かるように被害の詳細は必ずしも正確にされてはいない。 本県においても空襲を受けた都市として長岡市が知られているが、小規模ながら他の都市でも空襲の被害が出ている。そこで、本論では、先ず長岡市の空襲被害を中心に述べ、ついでその他の県内各市の被害の実際について述べることによって本県の空襲被害の全体を明らかにする。
著者
安達 明久
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.57, pp.1-11, 2021-01

本研究は、人口増を実現している小規模自治体216団体に着目し、これら自治体の発展戦略の特徴と有効性を定量的に解明したものである。分析にあたっては、小規模自治体に共通する特徴を「人口・雇用・財政」の3つの観点から抽出し、その結果を踏まえて小規模自治体を8つの類型に分類した上で、類型毎の特徴を統計的手法により分析した。その結果、人口増を実現している小規模自治体は、8つの類型に分類できること、そのうち「ベットタウン型」「製造業型」「物流拠点型」は実現率が高く自治体財政の改善の点でも有効性が高いが、「農業型」「宿泊型」の2類型は実現率が低く、自治体財政への改善効果の点でも有効性が低いことが明らかとなった。
著者
平野 実良
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.55, pp.19-28, 2020-02

地域通貨は、地域経済の活性化、住民福祉の支援、社会問題の解決、コミュニティの活性化などを目指し、発行主体・参加主体・発行方式・目的・規模といった点において多種多様なものが存在している。我が国では、1990年代後半から2000年代前半にかけて多くの地域通貨が生み出されたが、2005年頃をピークにして下降している。地域通貨には、始めることはそれほど難しくないようであるが運営(継続)していくことは難しい、という特徴があると考えられる。運営上の課題はいくつかあるが、中でも流通量・発行量が重要あるいは一番大事な指標といわれている。本稿では、新潟県柏崎市で流通している地域通貨:風輪通貨を事例とし、2017年度に実施した柏崎市活性化を目指す地域通貨流通のための市民意識・消費動向調査をとおして商店街利用状況、商店街に対する不満、不足している業種、および、地域通貨と風輪通貨の認知度や関心の度合いなどの現状と課題を明らかにし、商店街活性化に対しての地域通貨の利活用方法を検討する。これは、商店街の状況を精査することにより現状や課題を把握し、その中から重要度や優先度の高いものを見つけ出し、その課題に対して風輪通貨をどのように利活用すれば適切かつ効率的に効果を最大限に発揮できるかを考えた結果として有意義なものである。
著者
金 光林
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.56, pp.9-16, 2020-06

筆者は東アジアの姓氏の発生と変遷過程についてこれまで研究を進めてきた。この研究をさらに発展させる形で、今回は東アジアの族譜の形成と発展についてまとめた。 本稿においては、先行研究の成果を踏まえながら、中国・朝鮮・日本の族譜(系図)の形成と発展の過程を辿り、中国族譜の編纂目的・体制(形式)・機能について調べ、中国と韓国・朝鮮の族譜の数と所蔵状況について確認した。そして膨大に残されている族譜が現代の研究資料としてはどういう価値を持ち、そこからどういう学問的成果が期待できるのか、という問題について考えてみた。 族譜は膨大な数の資料を残しながら、従来、この資料を対象にした研究が活発には行われなかった。それは族譜が収録された個々人の家族・宗族関係、出生、死亡などの私的な記録に偏り、膨大の資料の割には社会との関連で活用できる情報が乏しいこと、現存する族譜は中国でも、朝鮮でも近代初期に編纂されたものが多数であり、事実関係に信憑性が足りないものも多く、文献として活用する場合慎重な扱いが必要であり、族譜の編纂目的、それの持つ機能が現代社会の価値観にあまりなじまないということが族譜を対象とした研究が振るわない原因だと考えられる。そのために、族譜は歴史研究においては補助資料として活用されるに留まっていた。しかし、族譜に対して、新しい視点と多様な方法を持ち込むことで新たな学問的成果が期待できるようになった。
著者
星野 三喜夫
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 = Bulletin of Niigata Sangyo University Faculty of Economics (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.52, pp.11-22, 2019-01

トランプ米国大統領の英語を主要歴代大統領や彼と大統領選で戦った候補と比較すると、文法は小学校5年から6年生レベル、語彙は8年生に届かない低いレベルである。また彼の英語には、繰り返しや口語的な誇張表現の多用が見られ、スラングや上品でない言葉も含まれる。トランプ大統領が自ら認めたと思われる、2018年5月24日付けの北朝鮮金正恩労働党委\n員長に宛てた首脳会談の「中止」を告げる書簡をチェックすると、語法や言い回しにおいて指摘すべき点が多々ある。英語を母語とする人が、たとえ米国の大統領であったとしても、必ずしも相応しい英語を書く訳ではなく、時には間違った、あるいは望ましくない英語を書いている。トランプ大統領がSNS等で書く英語は子供っぽく、また誇張表現や感情表現が多いが、スピーチライターが慎重を期して書き、トランプ大統領がゆっくり発している大統領選勝利演説や大統領指名受諾演説、一般教書演説等は英語学習において有用である。英語学習者はその点を踏まえて彼の英語を活用するのが良い。
著者
星野 三喜夫 Mikio HOSHINO
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 = Bulletin of Niigata Sangyo University Faculty of Economics (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.52, pp.11-22, 2019-01

トランプ米国大統領の英語を主要歴代大統領や彼と大統領選で戦った候補と比較すると、文法は小学校5年から6年生レベル、語彙は8年生に届かない低いレベルである。また彼の英語には、繰り返しや口語的な誇張表現の多用が見られ、スラングや上品でない言葉も含まれる。トランプ大統領が自ら認めたと思われる、2018年5月24日付けの北朝鮮金正恩労働党委員長に宛てた首脳会談の「中止」を告げる書簡をチェックすると、語法や言い回しにおいて指摘すべき点が多々ある。英語を母語とする人が、たとえ米国の大統領であったとしても、必ずしも相応しい英語を書く訳ではなく、時には間違った、あるいは望ましくない英語を書いている。トランプ大統領がSNS等で書く英語は子供っぽく、また誇張表現や感情表現が多いが、スピーチライターが慎重を期して書き、トランプ大統領がゆっくり発している大統領選勝利演説や大統領指名受諾演説、一般教書演説等は英語学習において有用である。英語学習者はその点を踏まえて彼の英語を活用するのが良い。
著者
権田 恭子 GONDA Kyoko
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 = Bulletin of Niigata Sangyo University Faculty of Economics (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.51, pp.27-53, 2018-07

本稿では、大学地域コラボ商品の販売イベントである「大学は美味しい!!」フェアへの出展を契機に、学内の個別の地域連携活動が横のつながりを持ち、大学全体の特色づくりとして位置づけられるようになった、新潟産業大学の実践事例を紹介し、今日、喫緊の課題である、大学におけるアクティブラーニング推進のために求められる、学内連携体制の構築という視点を提示したい。「大学は美味しい!!」フェアとは、全国各地の大学による"大学発"のうまいものを紹介、販売する新宿高島屋の人気催である。本学ではこのイベントに2013年開催の第6回から2017年開催の第10回まで、5年連続参加した。イベント全体としてはもともと農学部や家政学部の出店が多い中で、本学は経済学部として、地元産の農産物や銘菓等の地域に関わりのある商品に注目し、地域の企業と協力した商品開発によって、地域のPRや活性化を目指した。本学では複数のゼミナールが開発した商品を持ち寄り、その他に主に販売を担当するゼミナールを設け、学内横断的に分担、協力することで、このイベントへの参加が学内のさまざまな地域連携活動の成果発表の場として位置づけられ、大学の代表的な地域連携活動として認識されるまでになった。この実践事例から指摘できる点として、大学における地域連携、フィールドワーク型のアクティブラーニングの推進を促すためには、複数ゼミナールの参画、協働体制を教員間で自発的に構築することが有効であること、そのためには地域連携活動を正課の教育活動に位置づけるという新たな価値が大学全体として共有されることが重要である。既存の価値観や組織文化に留まらない、新たな組織の目的に向かって、組織全体と個人が共鳴しながら進化を遂げていく「進化型(ティール)組織」への転換が求められる。
著者
小林 健彦 KOBAYASHI Takehiko
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 = Bulletin of Niigata Sangyo University Faculty of Economics (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.51, pp.55-98, 2018-07

倭国へ漢字を公伝させたとする、隣地、韓半島・朝鮮半島に於いても、残存する信憑性の高いものは少ないものの、古来、種々の記録類が作成されていたものと推測される。その中に於いても、様々な災害記録が残されている。そうした自然災害に対する認識は、災害情報の記録にも反映され、更には、日本へも影響を与えていたのであろうか。本稿では、そうした観点より、韓半島に於ける対災害観や、災害対処の様相をシリーズ文化論として窺おうとしたものである。「三国史記」は、中国大陸で行なわれていた正史編纂事業を大いに意識して作成されたらしく、その意味に於いては、日本に於ける六国史、取り分け、「日本書紀」的存在であったのかもしれない。それ故に、その編纂に際しては、東アジア世界に特有の、特定の歴史観、国家観、対外観、宇宙観、そして、対自然(災害)観等が色濃く反映されていた可能性もあり、史料としての取り扱いには慎重であるべきであって、慎重な史料批判も必要とされるであろう。つまり、正史である以上、そこに記された事象に曲筆、虚偽、隠蔽、粉飾、宣伝等の作業が存在していることも十分考慮されるのである。又、記録の特性上、編纂者の故意ではないものの、結果としてその事象が偽であったり、偏見や誤解が包含されている可能性に就いても、排除をすることは出来ないであろう。取り分け、「三国史記」―「百濟本紀」に於いては、如何なる対自然災害観や、災害対処の様相が記録されていたのか、いなかったのかを追究することが本稿の目的とする処の1つである。更には、こうした素材を使って、韓半島に於ける災害対処の様相を文化論として構築をすることが出来得るのか、否かを検証することも2つ目の目的として掲げて置く。
著者
沼岡 努 NUMAOKA Tsutomu
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.1-18, 2018-02

本稿の考察の対象は、合衆国南部アンティベラム時代の農村社会におけるいわゆる「中間層」にある。その大半をヨーマンリーが占めたことから、考察の中心はヨーマンとなる。アメリカ史における「中間層」およびヨーマンリーの定義、歴史的役割に関してはいまだに議論が多い。そこでこの小論では先ず「中間層」の中で数的優位を占めたヨーマンリーの研究史的回顧を試みた。ヨーマンの定義を耕地面積および奴隷数の観点からおさえた後に、実際のヨーマンの生活実態および彼らの経済活動を考察した。ヨーマンの生活は質素ではあったが困窮をきわめる程ではなく、作物栽培と家畜飼育を基軸とする自給自足的な経済的営みであった。剰余作物が出た際彼らは外界との接触、特にプランターとの取引をおこなった。ヨーマンは作物の生産、収穫物の処理等、様々な点で普段からプランターにある程度依存し、また協力を求めたが、一方のプランターも不足しがちな生活食糧を購入することができ、基本的には相互補完・協力関係を形成した。また、ヨーマンの中にはプランテーション経営の中核的役割を果たす奴隷監督に就く者もいた。この意味で南部ヨーマンのプランテーション社会における存在価値は高かったといえる。だがその反面、「中間層」に属する小売商人、酒場経営者たちの奴隷との非合法的取引はプランターの不安・恐怖の原因となり、地域コミュニティーにかなりの影響を与えた。
著者
小林 健彦 KOBAYASHI Takehiko
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 = Bulletin of Niigata Sangyo University Faculty of Economics (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.49, pp.49-89, 2017-07

日本に於いては、同じ様な場所に於いて繰り返されて来た、殆んど周期的な地震の発生に依り、人的、物的にも多大な被害を被って来たのである。人々(当該地震に関わる被災者達)は、そうした大規模な震災の記憶を、文字情報としては勿論のこと、それ以外の非文字認知的手法―説話・伝承・地名・宗教施設・石造物・信仰等、としても残し、子孫への警鐘・警告、又、日常生活上の戒めとして来たのである。それは、日本社会で大多数の人々(為政者層、被支配者層の人々)に依って、或る事柄の記録が、文語資料として残される様になるのは、近世に入って以降のことであったからである。これは、寺子屋・郷学・私塾・藩校・藩学等に見られる教育機関の普及や、社会の安定、貨幣経済の成熟、農業振興等の理由に依る。それ以前の段階に於いては、文字を使用した形式での情報共有は困難であったのである。本稿では、そうした視角に立脚し、地震鎮めの効果を期待して実施されていた、「要石(かなめいし)信仰」に焦点を当てつつ、その太平洋沿岸諸地域と、日本海沿岸諸地域間での残存状況を比較、検討しながら、その差異の検証、分析や、その背景、経緯等に就いて考察を加えたものである。
著者
星野 三喜夫 HOSHINO Mikio
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 = Bulletin of Niigata Sangyo University Faculty of Economics (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.48, pp.1-19, 2017-01

フィリピンと中国の南シナ海を巡る係争に関し2016年7月12日に常設仲裁裁判所が出した裁定は、中国の南シナ海域内の資源に対し中国が主張する管轄権や歴史的権利を否定したが、同裁定は常設仲裁裁判所が執行機関を持たないことから「強制力」がない。しかしながら、たとえ「強制力」はないとしても裁定は「最終的」かつ「法的拘束力」を持つ。中国は下された裁定に従う意向を見せず、同海域での動きを活発化させている。裁定は力ではなく法に基づく海洋法秩序の維持という観点から、当事国のみならずすべての国・地域が真摯に受け止めるべきものである。国連海洋法条約により組織された常設仲裁裁判所によって出された裁定を尊重しないということは、中国が国連の加盟国として国際社会で法と秩序を守る責任感を欠如していること、また、国連の常任理事国としての失格がないことを認めたのと同義である。日本及び国際社会は、国連という国際社会の秩序の枠組みと法規範に基づいて決定されたことでであっても、強大な軍事力と経済力を持ってすればこれを無視することもできる、といった誤ったメッセージで既成事実(fait accompli)を形成してしまわないよう、裁定に従わない中国に対し、あらゆる場で協調して対応していく責務がある。今次の裁定は、旧約聖書の羊飼いの少年ダビデが巨漢戦士ゴリアテを倒し勝利した寓話を思い起こさせるが、フィリピン及び周辺国・地域をローマ軍を撃破した古代ギリシャのピュロス王の「割に合わない勝利」に終わらせてはならない。
著者
片岡 直樹 KATAOKA Naoki
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.33-47, 2017-07

日本における乾漆像には脱活乾漆像と木心乾漆像の2種類がある。このうち脱活乾漆像は中国(唐)からもたらされた技法によるもので、7世紀半ばから8世紀(白鳳時代~天平時代)にかけてつくられた。木心乾漆像は日本独自のもので、8世紀末から9世紀初頭(天平時代末期~平安時代初頭)につくられた。本稿では日本の乾漆像の主要な作例について、その成立過程と制作技法を紹介するとともに、中国・韓国の作例との比較を通して若干の私見を述べることにしたい。
著者
小林 健彦 KOBAYASHI Takehiko
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 = Bulletin of Niigata Sangyo University Faculty of Economics (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.47, pp.75-99, 2016-07

日本古代に於ける自然災害や疾病がどの様な認識の下に置かれ、それらに対してどの様な対処法が採用されていたのかに就いては、尚、類推の域を出ることは無い。「日本書紀」は、日本で初めて記録された正史として、神話を始めとした様々な事象が日本風の正格漢文で作文されたものである。そこには、政治的な出来事を始めとして、外交、戦争、自然災害、疾病、人々の営み、文化、文芸、天文現象、宗教等、様々な分野の事象が盛り込まれた。それらが事実であるか、否かは別として、古代当時の人々の実態を窺がい得る手掛かりを与えてくれるものである。本稿では、「日本書紀」全30巻に記された歴代天皇の事績の内、自然災害や疾病に焦点を当てながら、安定したサンプルとして、天皇不豫~崩御に至る過程を中心として検証することに依り、それを以って、古代に於ける疾病や、自然災害に対する認識を垣間見ようとするものである。
著者
堀口 俊二 下斗米 哲明 HORIGUCHI Shunji SHIMOTOMAI Tetsuaki
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 = Bulletin of Niigata Sangyo University Faculty of Economics (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.48, pp.65-77, 2017-01

オランダ測量術が1641年から1649年に日本に伝わった.江戸幕府(1603-1867)は国絵図作成のためにオランダ流測量術を奨励した.秘伝規矩元法別伝・八事絵巻と規矩元法別伝目録秘八目録図解は,清水貞徳(1645-1717)が確立したオランダ流測量術である.絵巻は題名,著者,年代不明である.目録は盛岡藩家臣簗田義智(義和)が1759年に盛岡藩別家の殿様に献上するために書いた.これら2つは,目録の最初の4ページを除けばほぼ同じ内容であり,どちらが古いか以前から問題となっている.本稿の目的はこれを考察することにある.このため我々は2つの違いを詳細に比較する.その結果「絵巻は目録より古いであろう.目録は殿様用に模写・改良したものである.」という結論を得る.さらに清水太右衛門尉貞徳の説明箇所では,絵巻では門弟は「数千人」とある.この「数千人」は当時の清水流測量術の隆盛を示す貴重な数値である.