著者
仲村 拓真
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.240-254, 2019-11-01 (Released:2019-12-09)

1933年の改正図書館令による中央図書館制度の再解釈を試みるため,成立当時の雑誌記事,会議録等を史料とし,成立及び運用をめぐる関係者の意見を分析した。結果として,代表となる図書館が他館を指導する考え方は図書館令改正運動が初出ではないこと,成立の経緯では,日本図書館協会に比べ,青年図書館員聯盟では大きな関心事とならなかった可能性があることなどを明らかにした。運用については,①活動内容の問題,②活動条件の不備,③図書館間の関係性,④中央図書館の実態把握,に関して,批判や問題点の指摘があったことが判明した。
著者
中戸川 陽子
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.16-29, 2010-05-01 (Released:2017-05-24)

本稿は,相模女子大学附属図書館を事例として,大学図書館における貴重書指定基準制定に関わる問題点を明らかにすることを目的とする。相模女子大学附属図書館では,1991年度より貴重書指定基準策定の試みがなされてきたが,2009年度まで制定にいたらなかった。18年間にわたる貴重書指定基準制定の経緯を考察することによって,図書館と教員の貴重書に対する考え方の差異や図書館と教員のかかわりの重要性が明らかになった。
著者
吉田 右子 Yuko YOSHIDA
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 = The library world (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.189-203, 2019-09

本稿では公民館設置の基点に立ち戻り,公民館を発案した寺中作雄の言説を中心に,公民館構想における図書館の位置づけを検討した。占領期公民館構想においては既存の図書館との関係や公民館内の資料提供サービス機能が提示されつつも図書館界と公民館界による領域横断的な議論はなされず,両者の一体的運営に向けた方向性は示されなかった。両者の関係性は図書館と公民館での個別的連携にとどまった。個別法を持つ図書館と社会教育法に規定された公民館の制度上の複線構造により,図書館と公民館は分離して論じられ今日に至っている。
著者
竹中 園子
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.485-500, 2018-09-01 (Released:2018-10-12)

神戸女学院において図書館学講習会が行われたのは,昭和11・12両年度であった。本稿は,この講習会の立案者であり神戸女学院図書館の初代館長であった横川四十八と,彼が招請した森清をはじめとする講師たちについて述べることにより,図書館員養成と女性図書館員,あるいはまた戦前期の時代の様相を反映する読書の自由,開架制等をめぐる横川の図書館観について考察するものである。
著者
村上 幸二
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.288-299, 2018-01-01 (Released:2018-02-16)

学校図書館メディア活用能力の育成を教科指導の中で行う融合方式は,利点が多い一方で教科との両立が難しいとされる。本研究では,教科における指導と評価に着目し,学校図書館メディア活用能力育成の内容と関連させることで両者の両立を目指した。例として,小学校第4学年国語科の「話すこと・聞くこと」の領域を取り上げ,本研究で提案する融合方式によって,学校図書館メディア活用能力育成の授業を設計した。授業の実践をもとに考察したところ,学校図書館メディア活用能力の育成と教科指導との両立が可能であることを確認した。
著者
北 克一 村木 美紀
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.266-277, 2004-03-01 (Released:2017-05-24)

コンビュータ目録環境下での主題検索ツールとしての二つの件名標目表,『中学・高校件名標目表第3版』及び『基本件名標目表第4版』について,前者の後者への変換・包摂について検討を行う。両件名標目表は,共に事前結合方式による件名標目・参照をもつ体系であるが,検討は,前者での件名規定にあたる「件名標目表の構成」の論旨展開に従って行い,若干の例外的処理を除いて,変換・包摂することに問題がないことを実証した。