著者
鞆谷 純一
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.312-322, 2006

日中戦争中,北京においては,日本軍に協力する中華民国新民会が図書館等に所蔵されている抗日図書を接収した。中華民国新民会の任務は,中国民衆の親日化にあり,抗日図書の接収もその任務の一環だったのである。接収された抗日図書は,日本人図書館員の協力も得ながら,新民会によって整理され,各種の目録が作成された。
著者
長坂 和茂
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.304-316, 2017-01-01 (Released:2017-06-26)

日本図書館協会の総裁徳川頼倫は,1923年から特別預金5万円の利子として年3000円を協会に対して支払い,財政的に支援している。その利子を当時の協会財政と照らし合わせ,利子の影響力の大きさと,使途について調査した。 年3000円とは当時の日本図書館協会の会費収入に匹敵する重要な収入源であり,図書館雑誌の月刊化や図書館週間の宣伝などに使われていることが判明した。 特別預金利子が大正期の日本図書館協会の財政にとって,大きな役割を果たしていることが明らかとなり,華族による社会貢献の一端を見ることができる。
著者
福井 佑介
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.334-347, 2011-01-01 (Released:2017-05-24)

本論文は,熊取図書館相互貸借拒否事件に関する大阪地裁判決を取り上げたものである。地方自治法上の「公の施設」や,船橋市西図書館蔵書廃棄事件に関する最高裁判決で判示された「公的な場」といった法的概念を用いて,当該地裁判決の判例上の位置付けを整理した。その上で,相互貸借制度を中心に据え,当該地裁判決の意義について考察した。そして,公的な場を,相互貸借で結びついた公立図書館総体としての公的な場へと変容させるという意義を有しているとの結論を得た。また,当該地裁判決を基にした相互貸借の運用についても示した。
著者
長澤 多代
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.228-243, 2015

本稿では,教員と図書館員の連携を促す行為/相互行為の戦略について,アーラム・カレッジのケース・スタディをもとに明らかにした。分析の結果,図書館関係者が【教員に対する直接的な支援】を実施して図書館の学習・教育支援機能に対する教員の理解を深めようとしていること,その中で,【着任前後の教員】を主な支援対象に定めたり,図書館や図書館員が【協力的であることを印象づけ】たり,【教員と教員をつない】だり,図書館内外や学内外の【いつでもどこでも】可能な限り支援をしたりしようとしていることが明らかになった。
著者
川崎 良孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.200-214, 2016

本稿はウェイン・A.ウィーガンドが2015年に刊行した『生活の中の図書館』(Part of Our Lives: A People's History of the American Public Library, Oxford Univ. Press, 2015)を取り上げる。この本は研究にもとづくアメリカ図書館の通史であり,その視点,方法,解釈の点で,これまでにない斬新な業績になっている。本稿では,同書の内容,図書館史研究上の意義を明らかにし,第4世代図書館史研究の到達点を示す。そしてウィーガンドの図書館史解釈を文化調整論と名づけた。