著者
Tsuji Keita 辻 慶太
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, 2015-11

図書館の利用を増加させるラーニング・コモンズ(LC)像を調査分析した。具体的には,小山(2012)に示されている24のLCをサンプルとし,『日本の図書館:統計と名簿』に記されている入館者数,貸出数,参考受付総件数を利用量として取り上げ,これらを増加させるLCの要素を分析した。結果,プリンタ,コピー機,ノートPCがあり,学生一人当たりコンピュータ設置台数が多く,さらにTA・SAによる支援があって,1階に設置されているLCは,他のLCに比べて,入館者数や参考受付総件数を増加させる可能性があることが示された。
著者
土居 陽子
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.18-26, 2003

国の施策に沿ってボランティア導入は促進され,増加の一途を辿っているが,それが却って学校図書館の充実を妨げるのではないかとの危倶がある。つまり,司書教諭とボランティアだけで学校図書館の機能が十分に発揮できるのか,ボランティアが入ったことで司書配置の道を閉ざすのではないか,といった心配である。実際にボランティア活動に関わっている人たちの中にもそうした懸念を抱いている人は多い。本稿では,学校図書館の充実にとって,ボランティア導入がどんな影響を生み出すのか,問題点は何か,ボランティアの導入をどう考えるかなど,現場に視点を置いて考察するとともに,学校図書館に必要な「人」についても若干の意見を述べてみたい。
著者
山本 順一
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, 2011-09-01
著者
川崎 良孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.200-214, 2016-09-01 (Released:2017-06-26)

本稿はウェイン・A.ウィーガンドが2015年に刊行した『生活の中の図書館』(Part of Our Lives: A People's History of the American Public Library, Oxford Univ. Press, 2015)を取り上げる。この本は研究にもとづくアメリカ図書館の通史であり,その視点,方法,解釈の点で,これまでにない斬新な業績になっている。本稿では,同書の内容,図書館史研究上の意義を明らかにし,第4世代図書館史研究の到達点を示す。そしてウィーガンドの図書館史解釈を文化調整論と名づけた。
著者
吉田 右子 坂田ヘントネン 亜希
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.108-124, 2020

<p>本研究はフィンランドの作家と図書館のための公的支援システムに焦点を当てて,公共図書館と関連づけられた(1)図書館助成金制度(2)貸与補償制度(著作権補償制度)(3)資料購入・購読補助制度を,フィンランド文化政策全体を射程に入れて検討した。分析の結果,これらの助成制度の意義として,創作者側の文化創造を保障することで文芸の幅と厚みを担保し受取側の多様な文化へのアクセスを保障する基盤を創出していること,少数話者言語であるフィンランド語の文芸を活性化し保護する役割を担っていることの2点を導出した。</p>
著者
川崎 良孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.206-223, 2014-09-01

本稿はフロリダ州で生じた絵本『キューバ訪問』をめぐる事件を取り上げて,経過,連邦地裁や控裁の判決を実証的に記述する。親からの除去の申し入れにたいし,教育委員会は除去を決定した。それを不服としてアメリカ自由人権協会が提訴し,控裁は教育委員会の措置を支持した。判決はピコ事件判決(1982)が示す除去の基準である「教育的適性」を梃子に,絵本の記述の誤りや省略を理由に原告の訴えを退けた。本稿は「教育的適性」という基準の曖昧さを指摘するとともに,プレジデンツ事件(1972)以降の学校図書館蔵書をめぐる裁判事件の系譜に照らして,本判決の思想的な意味を探っている。