著者
矢作 明子 辻 慶太
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.290-301, 2009-01-01

日本の公共図書館におけるフィルタリングソフトの導入状況と性能を調査した。まず公共図書館155館において,都道府県立は85.3%,市区町村立図書館は76.9%がソフトを導入していること,導入ソフトにはi-FILTERやInterSafeが多いことが示された。性能調査では上記2ソフトが稼働する端末で検索を行い,4,640件のWebページを調査した。結果,「学校裏サイト」といった新しい概念に対しブロック漏れが起きやすいこと,有害ページのブロック率はi-FILTERの方が高く,逆に無害ページの誤ブロック率はInter-Safeの方が低いことなどが示された。
著者
田井 郁久雄
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.56-75, 2001-07-01 (Released:2017-05-24)

岡山市の中心地域に位置する地区図書館である岡山市立幸町図書館では,2000年4月から,火曜日〜金曜日の開館時間を2時間延長した。本稿では,1999年度と2000年度の利用統計を比較して,開館時間延長のサービス効果を検証した。開館時間は長ければよいというものではない。延長に見合うだけの一定の効果がなければ成功したとはいえない。幸町図書館の場合はどうだったか,期待したほどの効果がなかったとすれば何が問題なのか,サービスの向上のための方策として開館時間の延長の優先度をどう考えるべきか等の問題について考察した。
著者
土屋 深優
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.160-176, 2022-09-01 (Released:2022-10-01)

本研究はアイデアストアを事例として,社会的包摂概念に基づく公共図書館再編の意義と再編後の変化の検討を目的とする。研究方法として文献調査とインタビュー調査を用いた。調査の結果,アイデアストアは地域住民の社会的包摂を目的として,住民の要望が反映された図書館再編を実施したことが明らかとなった。再編後,図書館への訪問数が増加し,社会的包摂サービスの前提となる来館と図書館サービス認知の効果が示された。再編後も,アイデアストアは地域の実態に合わせて,サービスの内容を継続的に改善していることも明らかとなった。
著者
大島 真理
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.224-235, 2004-11-01 (Released:2017-05-24)

戦後日本の占領軍支配下において作られたCIE図書館に,多くのアメリカ人女性図書館長を見出すことができる。CIE図書館の利用者の書いた資料から,実際的なCIE図書館の姿を分析すると同時に彼女らの業績を調査した。さらに来日の背景の分析,日本の図書館界に及ぼした影響などについて考察する。
著者
千葉 孝一
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.15-27, 2021-05-01 (Released:2021-06-18)

本論は「書誌レコードの機能要件」(FRBR)と「日本目録規則2018年版」(NCR2018)の議論の根幹にある「著作」「表現形」「体現形」「個別資料」について,できる限り理系の用語を使わずに,文系の視点で捉え直す試みである。このグループは,「同一性」と「差異性」によって把握することができ,図書館以外の分野にも適用可能だが,「著作」と「表現形」に関する具体的な運用ルールは各分野で異なるローカルルールとなる。FRBR は図書目録にパラダイムシフトをもたらしたのである。
著者
米谷 優子
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.16-35, 2019-05-01 (Released:2019-06-14)

学校図書館は,児童文庫等と呼ばれていた過去から,戦後には「学校図書館」と呼ばれるようになってきた。しかし,現在でもなお公的文書で「図書室」の語も散見される。本研究では,学校図書館の呼称の用いられ方の現状を,教育施設,図書館,及び建築の各視点から検討し,呼称と機能の認識について考察した。呼称の相違は,学校図書館の機能の捉え方・認識の差を反映している。「専門」の「人」がいる「図書館」として認識されその機能が強化されるよう,「学校図書館」の語を徹底することが必要である。
著者
塩崎 亮
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.2-14, 2021-05-01 (Released:2021-06-18)

ソーシャルメディアを歴史的記録して残すことは可能なのだろうか。本稿では,大学生と一般個人に対して,研究者,所属機関,国立国会図書館が公開ツイートをアーカイブするという架空のシナリオを複数提示し,その許容度を質問票で尋ねた集計結果について報告する。結果,シナリオ間,Twitter 利用経験の有無別,年代別で有意な差は確認できなかった。一方,一つ以上のシナリオを許容できないと回答したものが対象者の半数を超え,そのうち,プライバシーの観点から,あるいは特段の理由なく許容できないという反応が多数を占めた。
著者
前田 稔
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.154-163, 2006-09-01 (Released:2017-05-24)

船橋市西図書館の蔵書廃棄事件最高裁判所判決が示した「公的な場」,「公正」について考察した。「公的な場」の概念とパブリック・フォーラム論との関係,「思想,意見等を公衆に伝達する」機能からみた図書館職員の職務の「公正」,購入と除去の違いについて検討した。その結果,表現の自由と思想の自由の両者を基礎に職務の独立性を支える新たな概念として「公的な場」概念が示されたと評価するに至った。