著者
小川 岳人
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第51回日本植物生理学会年会要旨集
巻号頁・発行日
pp.0345, 2010 (Released:2010-11-22)

シロイヌナズナの外部形態は生育環境に応じて適切に変化する。なかでも光条件と生育温度は、胚軸伸長ならびに葉柄伸長に大きく影響する環境要素である。近年、細胞伸長の正の制御因子である Phytochrome Interacting Factor4 (PIF4)が光シグナル伝達経路と温度シグナル伝達経路の共通因子として機能することが明らかとなった。我々は、光と温度による PIF4の機能制御機構を解明することを目的として研究を行っている。PIF4タンパク質がPhytocrome依存的に赤色光照射によって分解されることはよく知られた現象であるが、本発表では、青色光条件下および低温(16℃)条件下においてもPIF4タンパク質が不安定化することを報告する。恒常的に PIF4を発現させたシロイヌナズナを用いた実験から、これらの不安定化は 26Sプロテアソームを介した分解によるものであることが分かった。また、青色光による分解は光量依存的であり、赤色光による分解と同様に PIF4の Active Phytocrome Binding (APB)ドメインを必要とした。一方、低温による分解には APBドメインを必要としなかったことから、光による分解と低温による分解は異なるメカニズムによって引き起こされると示唆された。
著者
内海 俊樹 Mergaert Peter Van de Velde Willem Alunni Benoit Zehirov Grigor 石原 寛信 Kondorosi Eva 九町 健一 東 四郎 阿部 美紀子
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.0189, 2009 (Released:2009-10-23)

マメ科植物と根粒菌の共生窒素固定系は、細胞内共生の最もよいモデルである。しかし、根粒菌を共生状態へと誘導・維持する植物側因子についての知見は乏しい。タルウマゴヤシやエンドウとミヤコグサやダイズの根粒内部の根粒菌(バクテロイド)は、形態的・生理的に大きく異なる。これは、細胞内共生の成立に関わる植物側の分子戦略の違いを反映しているものと考えられる。タルウマゴヤシ根粒中には、NCRと総称されるペプチドが存在する。4または6システイン残基を保存するディフェンシン様ペプチドであり、400を超える遺伝子ファミリーを構成している。いずれの遺伝子もミヤコグサゲノムには存在しておらず、その発現は、根粒特異的である。NCR001と084は、感染細胞に特異的に存在しており、合成NCR001と035をアルファルファ根粒菌に添加すると、バクテロイドに特徴的な変化を誘導した。NCR遺伝子を発現するミヤコグサ形質転換毛状根を誘導し、ミヤコグサ根粒菌を接種して根粒を着生させた。そのバクテロイドは、ミヤコグサ根粒菌であるにも関わらず、タルウマゴヤシ根粒中のバクテロイドと共通した特徴を呈していた。このことは、タルウマゴヤシ根粒では、NCRペプチド群の複合的な作用が、根粒菌のバクテロイド化とその維持に関与していることを示唆している。
著者
三谷 奈見季 山地 直樹 馬 建鋒
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第51回日本植物生理学会年会要旨集
巻号頁・発行日
pp.0886, 2010 (Released:2010-11-22)

これまでに我々は典型的なケイ酸集積植物であるイネから内向きケイ酸輸送体Lsi1と外向きケイ酸輸送体Lsi2を同定し、これらの輸送体が根からのケイ酸の積極的吸収に重要であることを明らかにしてきた。またオオムギやトウモロコシからもそれらの相同遺伝子を単離し、イネのケイ酸輸送体と同じケイ酸輸送機能を有することがわかった。しかしその一方でオオムギやトウモロコシはイネに比べてケイ酸の吸収量が低く、植物の種類によってケイ酸吸収能力が異なる機構についてはまだ明らかにされていない。そこで本研究ではオオムギおよびイネ由来のケイ酸輸送体の発現量や局在性などを検討した。根での発現量をReal time PCR絶対定量法で比較した結果、Lsi1、Lsi2ともにオオムギよりイネで数倍高く発現していることが明らかになった。次に組織局在性の影響を検討するため、HvLsi1 promoter制御下でOsLsi1 およびHvLsi1をイネのlsi1変異体に導入した形質転換体を作成した。その結果OsLsi1、HvLsi1共に内皮細胞と外皮細胞に極性をもって局在し、イネ本来の輸送体と同じ局在性を示した。これらの形質転換体を用いてケイ酸吸収量を比較した結果、ケイ酸吸収量はOsLsi1を導入した株がHvLsi1を導入した株に比べ高い傾向が見られた。これらの結果はイネ由来の輸送体は強い輸送活性を有していることを示唆している。
著者
中尾 容子 深城 英弘 田坂 昌生
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.049, 2004-03-27 (Released:2005-03-15)

シロイヌナズナsolitary-root(slr)変異体は、側根形成が全く起こらない。この変異はオーキシン誘導性遺伝子Aux/IAAファミリーIAA14の機能獲得変異である。本来オーキシンにより不安定になるIAA14タンパク質はslr変異により安定化する。その結果、オーキシン応答性転写調節因子ARFsの機能を恒常的に抑制し、そのために側根形成や根毛形成、根や胚軸の重力屈性反応を阻害していると考えられる。そこで、組織特異的なオーキシン応答と根の形態形成の関係を明らかにする目的で、変異型IAA14(mIAA14)タンパク質とGRとの融合タンパク質(mIAA14-GR)を組織特異的に発現する形質転換体を作出した。mIAA14-GR融合タンパク質をIAA14プロモータ-で発現させた植物体では、Dex処理により主根がslr変異型の表現型を示した。このことから、mIAA14-GRはこの誘導系において機能することが確認された。そこでmIAA14-GRを根の中心柱特異的プロモーター(SHOOT-ROOT )で発現させたところ、側根形成が著しく抑制された。それに対して、側根原基形成時に特定の細胞で発現するSCARECROW遺伝子のプロモーターでmIAA14-GRを発現させたところ、異常な構造を持つ側根原基が形成された。これらの結果から、オーキシン応答が側根形成開始時には中心柱で重要であり、さらに側根原基形成過程においても原基内部で重要である事が示された。
著者
佐々木 克友 間 竜太郎 仁木 智哉 山口 博康 鳴海 貴子 西島 隆明 林 依子 龍頭 啓充 福西 暢尚 阿部 知子 大坪 憲弘
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.0614, 2008 (Released:2008-12-18)

我々は「新形質花き」の作出を目指し、トレニアを用いて重イオンビーム照射による変異導入を行っている。その中に、第2ウォールが萼化した表現型を示すトレニアmutantが2系統見出された。花器官形成のABCモデルから、これらmutantの表現型はクラスB遺伝子機能の欠損に原因があると予想された。本研究は、変異が導入された遺伝子の特定と、トレニアの花器官形成に関わる情報の収集を目的とする。トレニアのクラスB遺伝子であるTfGLOおよびTfDEFの発現を、野生型および上記mutantを用いRT-PCRにて解析した結果、2種のmutantではTfDEFは発現していたがTfGLOの発現が全く認められなかった。野生型および2種のmutantについてTfGLOゲノム領域を単離し配列を決定した結果、TfGLO遺伝子発現の欠失に直接の要因と推測される変異は見られなかった。このことから、2種のmutantにおけるTfGLO遺伝子の欠損は、上流の発現調節因子の変異に起因すると推察された。すでにシロイヌナズナ等でクラスB遺伝子の発現調節因子として報告されているAPETALA1、LEAFYおよびUFOの発現をRT-PCRで解析した結果、UFO特異的にmRNA量の減少が認められたので報告する。なお、本研究は、「農林水産研究高度化事業」によるものである。
著者
横正 健剛 山地 直樹 馬 建鋒
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第52回日本植物生理学会年会要旨集
巻号頁・発行日
pp.0960, 2011 (Released:2011-12-02)

ソバはアルミニウム(Al)耐性が強いだけではなく、地上部に高濃度のAlを集積する。生理学的な解析から、ソバはAlに応答し根からシュウ酸を分泌し、地上部ではAlをシュウ酸との錯体で液胞に隔離することが明らかとなっている。これらの過程には多くのトランスポーターの関与が考えられるが未だ同定されていない。私たちはソバのAl耐性及び集積の分子機構を網羅的に解析するために、Alで処理したソバの根からRNAを抽出し次世代シークエンサーを用いてEST解析を行った。均一化したcDNAライブラリーから遺伝子配列の決定を行い約10万のコンティグを作成した。また、均一化していないcDNAライブラリーを用いたショートリード解析から発現量の測定を行った。本研究では、トランスポーター候補遺伝子の中で発現上位にあるFeIREG2についてその全長の単離と機能解析を行った。RACE法を用いて完全長cDNAを単離したところ、FeIREG2はシロイヌナズナのFeとCo、Niの排出トランスポーターAtIREG2とアミノ酸レベルで約60%の相同性を示した。FeIREG2は根で発現し、Al処理6時間後には約20倍に増加していた。この遺伝子とGFPの融合遺伝子をタマネギ表皮細胞に発現させたところ、液胞膜に局在していた。これらのことからFeIREG2はAlの液胞への隔離に関与している可能性が考えられ、更なる解析を進めている。
著者
新岡 祥平 香取 拓 坂田 洋一 林 隆久 井内 聖 小林 正智 太治 輝昭
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第52回日本植物生理学会年会要旨集
巻号頁・発行日
pp.0438, 2011 (Released:2011-12-02)

セシウム(Cs)はカリウム(K)と化学的に類似しており、同様の経路を通り植物体に吸収され、微量で植物体に毒性を示す事が知られている。モデル植物Arabidopsis thalianaは世界中で1000種以上のaccessions(エコタイプ)が存在する。accessions間では百塩基に一塩基しか違いがないにも関わらず、形態形成やストレス耐性等に大きなバリエーションがあることが知られている。そこで本研究では、354種のaccessionsを用いてCs耐性評価を行った。その結果、実験系統Col-0と比較して顕著な耐性を示すCs耐性系統と、逆に高感受性を示すCs高感受性系統を見出した。Csストレス下における地上部のCs蓄積量を測定した結果、Cs耐性系統のCvi-0がCsを低蓄積している事が明らかとなった。