著者
藤原 誠 道上 達男 箕浦 高子 青木 誠志郎 片山 光徳 坂山 英俊 柴尾 晴信 関本 弘之 長田 洋輔 福井 彰雅 水澤 直樹
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.312, 2007

昨春、新学習指導要領(いわゆるゆとり教育)による高校教育を受けた学生が大学に入学した。東京大学では、これに関連して以前から大学1,2年次における教育のあり方を検討するとともに、論理(モデルを立てる)と実証(実験によって確かめる)のサイクルを伴う自然科学導入プログラムの開発に取組んできた。<br>東京大学教養学部生物部会においては、従来の生命科学系(東京大学では理科2類、3類)学生対象の実習「基礎実験(生物)」の内容を吟味し、新たに「基礎生命科学実験」として新規3種目の開発を含む全11種目の全面的改訂を行った。また、今春から生命科学系の学生に加えて文系と理工系(理科1類)の学生にも実習選択の門戸が開かれるのにともない、教育背景が多様な学生にも効果的に実習内容を伝えられる教科書副教材(DVD教材)を作製した。<br>本大会では、「基礎生命科学実験」の植物関連種目である、(1)電気泳動による光合成関連タンパク質の分離、(2)植物の多様性と生殖(クラミドモナスの接合、シダ植物の世代交代、テッポウユリの花粉管伸長)、(3)被子植物の維管束構造の紹介も含めて、我々の取組みを発表する。
著者
池内 桃子 山口 貴大 堀口 吾朗 塚谷 裕一
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.181, 2008

シロイヌナズナの優性変異体<I>rotundifolia4-1D</I>では、細胞数が長さ方向特異的に減少して葉が短くなる。この仕組みを明らかにするために、我々は原因遺伝子である<I>ROT4</I>遺伝子の機能を調べている。<I>ROT4</I>は、6.2kDaの低分子タンパク質をコードしている。その機能領域が、C末端側のROTUNDIFOLIA4-LIKE/DEVILファミリーに共通の領域付近にあることは既に判明していたが、詳細な機能領域は同定されていなかった。また、その領域が切り出されているのか否かを示す知見は、今までに得られていなかった。今回我々は、まず<I>ROT4</I>のコード領域をN末端側およびC末端側から削り込んだものを過剰発現させ、その表現型を調べることにより、機能に必要十分な領域の絞り込みを行った。また、生体内における分子内プロセシングの有無を調べるために、まずROT4:GFPおよびGFP:ROT4融合タンパク質を過剰発現させ、表現型からその機能を評価した。その上で、免疫ブロッティング法を用いて、発現したタンパク質のサイズを調べている。上記の解析およびタグを用いた他の解析に基づき、ROT4の分子機能について議論する。
著者
池内 桃子 山口 貴大 堀口 吾朗 塚谷 裕一
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.108, 2009

<I>ROT4 (ROTUNDIFOLIA4)</I>は、陸上植物に広く保存された、機能未知の低分子タンパク質をコードする遺伝子である。シロイヌナズナにおいては、<I>ROT4</I>単一の機能欠損変異体は表現型を示さないが、その過剰発現体では、側生器官を構成する細胞が長さ方向特異的に減少するほか、背丈の矮小化、花柄基部やトライコーム基部の組織が突出するといった多面的な表現型を示す。また,根の短小化が今回新たに見出された。このように、<I>ROT4</I>は植物の発生において重要な機能を担っていると示唆されるが、その分子機能はほとんど明らかになっていない。<br> そこで我々は、まず<I>ROT4</I>の各種deletionシリーズの過剰発現体を作出し、その表現型を調べた結果、 32残基からなる領域が機能に必要かつ十分であることを同定した。この領域は、分子内プロセシングを受けて切り出されることなく機能しているということが、GFPとの融合タンパク質を用いたこれまでの実験から示唆されており、現在その確認を進めている。また、HSP-Cre/Lox系を用いてGFP:ROT4をキメラ状に発現する形質転換体を作成したところ、GFP:ROT4が発現しているセクターにおいて自律的な表現型が観察された。さらに、葉柄-葉身境界の位置がずれる興味深い表現型も見出された。これらの解析の結果を総合し、ROT4の植物の形態形成における機能について議論したい。
著者
田中 将大 幸田 泰則
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.704, 2011

頂芽優勢はIAAが側芽の休眠を誘導することにより生じ、CKはそれを打破する。IAAそのものは側芽の休眠を直接誘導できないことなどから、IAAは根で何らかのシグナル物質を生産させ、それが直接的に側芽の休眠を誘導している可能性が示され、その候補物質としてストリゴラクトンが単離された。我々はバレイショ根の抽出物中に種子発芽や側芽の生長を強く阻害する活性が存在することを見出した。しかし、純化過程での活性本体の挙動はストリゴラクトンとは異なるものであった。そこで、根で生成される側芽休眠誘導物質の単離を試みた。<br>[方法・結果] IAAは側根形成を促進し根量を増加させる。そこでIAA含む液体培地でバレイショ根を大量に単独培養し、抽出材料として用いた。一節を含むバレイショ茎断片を培地に移植すると頂芽優勢が打破され側芽が生長を開始する。この培養系を側芽休眠誘導活性の検定法として用いた。根の抽出物を溶媒分画法により分け、側芽休眠誘導活性を調べた結果、水溶性分画に強い活性が認められた。活性を指標として単離・精製を進めた結果、分子量434の物質が単離された。フラグメントパターンからこの物質は未知のものであると思われた。現在、この物質の頂芽優勢への関与を調べるため、IAAがこの物質の含量に及ぼす影響について検討中である。また構造決定を試みている。
著者
佐々木 直文 佐藤 直樹
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.279, 2010

特定の種における複数の環境型を同時に解析することにより、これらのゲノムで共通な仮想的なゲノムの構造を知ることができる。これらのゲノムは、「ゲノムコア」と呼ばれるゲノム間で共通に保存されているシンテニー・ブロックと、HGTによる遺伝子の出入りが確認される、「ゲノムアイランド」領域のモザイク構造になっていることが知られているが、従来の遺伝子の隣接関係に基づく組み合わせ探索の方法では、非常に近縁であるこれらのゲノム間において、ゲノムアイランド領域とゲノムコアのゲノム上での再構成単位を同時に可視化することは難しかった。我々はこれらを可視化することが可能な「位置プロファイル法」を開発した。前回の報告では我々の開発した位置プロファイル法による、シアノバクテリア16種間の解析結果を報告した。本発表では、本手法の近縁ゲノム間の解析への活用事例として、拡張したデータセットによる手法の評価と既存法との比較、およびシアノバクテリア36種での解析と根粒形成菌の近縁種間の解析によって明らかになった、近縁ゲノム間のゲノムの構造的進化とその働きについて報告する。
著者
酒井 達也 A. Jones Mark Smirnoff Nicholas 岡田 清孝 O. Wasteneys Geoffrey van der Honing Hannie 西岡 美樹 上原 由紀子 高橋 美穂子 藤澤 紀子 佐治 健介 関 原明 篠崎 一雄
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.716, 2008

キネシンモータータンパク質は様々な生物において細胞の先端成長及び細胞の形の決定に関与していることが知られている。シロイヌナズナゲノム中には 61 遺伝子のキネシン関連遺伝子が存在することが明らかになっているが、その多くは機能が明らかになっていない。我々はアルマジロリピートドメインを持つ植物特異的キネシン関連タンパク質 ARK1 がシロイヌナズナ根毛の先端成長に関与することを明らかにした。ark1 突然変異体根毛は波状、時に枝分かれの表現型を示し、内側の微小管はより重合して量及び長さが促進されていた。すなわちARK1は根毛内部の微小管量を限定する働きを持ち、これが根毛の先端成長を制御することが示唆された。ARK1 はARK2 及び ARK3 の二つのパラログ含む遺伝子ファミリーをシロイヌナズナゲノム中で形成しており、ARK2 が根の表皮細胞の形態形成に関与することを明らかにした。さらにARK タンパク質と結合する因子として NEK6 タンパク質リン酸化酵素を同定した。nek6 突然変異もまた、シロイヌナズナ表皮細胞の形態形成に多面的な影響を与えており、NEK6 が ARK キネシンに関連した微小管機能を介して細胞の形態形成に関与することが示唆された。
著者
佐々木 直文 佐藤 直樹
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.59, 2009

近縁種ゲノムを比較するとゲノムが構造的に安定的な領域(core domain)と流動的な領域(flexible domain)が見いだされる。このうち流動的な領域はゲノムの安定的な構造の間にパッチ状に存在しており、遺伝子の水平移動(HGT)に関連した遺伝子が存在していることが知られている。一方、安定的な領域は遺伝子の並びが比較的保存され、機能的、構造的にゲノムのコアになっていることから、ゲノム再編成の解析に有効であると考えられる。本研究では、進化的に近縁である海洋性シアノバクテリア14種についてゲノム比較を行い、ゲノムの安定的な領域における遺伝子間の距離関係の情報を解析した。その結果、これらの安定的な領域が7つの仮想的な連鎖グループ(VLG)から構成されていることが明らかになった。さらに、これらのVLG間の位置関係を解析した結果、それぞれのVLGが複製開始領域(ori)を基準として決まった位置関係を持っていることが分かった。これらの結果は、ゲノムコア領域がゲノム再編成の情報を持っていることを示唆している。
著者
前田 麻起子 崎浜 靖子 福士 幸治 橋床 泰之
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.0884, 2009 (Released:2009-10-23)

含窒素色素であるベタレインは植物四大色素の一つであり、ベタシアニン(赤)とベタキサンチン(黄)がある。ベタレインの分布はアカザ科やヒユ科など一部の植物に限られており、赤系フラボノイドのアントシアニンとは排他的に存在する。アントシアニンを含むフラボノイドは、活性酸素及び活性窒素消去能を持ち、植物細胞においても抗酸化機能を有していることが報告されている。一方、ベタレインの生理機能に関する報告は殆どない。そこで本研究では、ベタレインの植物細胞における機能解明の一環として、その抗酸化能を検討した。 赤ビート(Beta vulgaris L.)根から主要色素2成分(BBx、BBc)を分画した。各々の吸収極大波長は480 nm、538 nmに見られ、光吸収特性がベタキサンチン及びベタシアニンにそれぞれ一致した。活性窒素の一種である一酸化窒素(NO)及びペルオキシナイトライト(ONOO-)をBBx、BBcに対して反応させると、NO添加による変化は見られなかったが、ONOO-添加においてはBBx、BBcの顕著な退色が観察された。この退色反応はONOO-の添加量に依存しており、ONOO-スカべンジャーであるグルタチオンによって抑制された。以上の結果から、ベタレインがONOO-消去能を持つと判断した。H2O2等の活性酸素種との反応も併せて、ベタレイン抗酸化能を考察する。
著者
大坪 由佳 松井 弘善 多賀 有里 日比野 孝紀 金田 隆志 磯貝 彰 蔡 晃植
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.187, 2010

過敏感細胞死は、植物が非病原性菌株を認識したときに誘導される免疫反応の一つであり、核DNAの断片化や膜の透過性喪失などを伴うプログラム細胞死である。我々はこれまでに、イネの過敏感細胞死はOsNAC4によって誘導されることを明らかにした。そこで、OsNAC4による過敏感細胞死誘導の機構を明らかにすることを目的とし、過敏感細胞死誘導時のOsNAC4の局在について調べた。その結果、過敏感細胞死誘導時にOsNAC4はリン酸化されることで核に移行することが示された。また、このOsNAC4の核移行には、分子内のNACドメインのN末端とC末端の領域で制御されることが示された。次に、<I>OsNAC4</I>のRNAi形質転換体を用いたマイクロアレイ解析によって、OsNAC4が139個の遺伝子の発現を制御することが明らかになったので、OsNAC4による転写制御機構について調べた。まず、酵母two-hybrid法を用いてOsNAC4と相互作用するタンパク質の探索を試みたところ、同じサブファミリーに属するOsNAC3と相互作用することが確認された。そこで、OsNAC3が過敏感細胞死誘導に関与するかを一過的発現によって調べたところ、OsNAC3も過敏感細胞死を誘導することが明らかになった。以上の結果から、OsNAC4がOsNAC3と二量体を形成し、過敏感細胞死誘導に関与する遺伝子の発現を制御している可能性が示された。
著者
高橋 宏二 与儀 幸代 木藤 伸夫 加藤 潔
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.277, 2008

細胞壁の伸展特性(張力-伸展速度曲線)は、ロックハート方程式に基づく直線近似によって数値化した二つのパラメータ(壁展性および臨界降伏張力)で簡便に記述されてきた。これら二つのパラメータは伸長生長に伴う細胞壁伸展でpH依存的に調節されるが、私たちはキュウリ(<I>Cucumis sativus</I> L.)胚軸の細胞壁でいずれのパラメータもエクスパンシン(CsEXPA1)によって制御されうることを示した(2006)。ササゲ(<I>Vigna unguiculata</I> L.)の細胞壁において臨界降伏張力のみを制御するタンパク質としてイールディンが示されているが、同時にエクスパンシンも存在すると考えられている。しかし、壁伸展パラメータ制御におけるエクスパンシンとイールディンの役割分担については知見が乏しい。そこで今回、両タンパク質をササゲ細胞壁から抽出・精製し、それらの機能を同一の細胞壁試料で比較検討することにした。測定装置として自動微小応力計(PCM)を使用し、解析法として張力スイープ法を用いた。<br> 現在までのところ、ササゲ胚軸の細胞壁から抽出したエクスパンシンは、壁展性だけでなく臨界降伏張力をも調節しうることが明らかになっている。講演では、細胞壁試料の調整法、熱処理条件およびイールディン機能と比較検討した結果についても合わせて報告する。
著者
遠藤 求 望月 伸悦 鈴木 友美 長谷 あきら
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.158, 2006 (Released:2006-12-27)

植物にとって光は重要な情報源であり、発芽や花成などさまざまな生理応答に関わっている。花成に重要な光受容体としてフィトクロムとクリプトクロムが知られているが、これらが実際にどの器官/組織で光を受容し花成を制御しているかは不明であった。これまでに、我々はシロイヌナズナにおいてフィトクロムBは子葉の葉肉細胞で花芽形成を制御していることを明らかにした(Endo et al., 2005)。 我々は今回、クリプトクロム2(cry2)がどこで働き花成を制御しているのかを明らかにした。器官/組織特異的な発現が知られているプロモーターにCRY2-GFP融合遺伝子をつないだコンストラクトを作成し、cry2欠損変異体に形質転換した。また比較のため、CRY2-GFPを内在性プロモーターで発現させる形質転換体も作出した。これらの植物でcry2-GFPタンパク質の発現パターンと花芽形成を調べた結果、維管束でcry2-GFPを発現させた場合にのみcry2欠損変異体の遅咲き表現型は相補され、葉肉、茎頂、表皮、根でcry2-GFPを発現させた場合では表現型の相補は観察されないことが分かった。また組織レベルでの遺伝子発現を調べた結果から、維管束のcry2は花成制御に重要な遺伝子の一つであるFLOWERING LOCUS Tの発現制御を介して、細胞自律的に働いていることが示唆された。
著者
宮武 史尊 平岡 英士 真野 純一
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.265, 2006 (Released:2006-12-27)

活性酸素種が不飽和脂肪酸を酸化すると過酸化脂質が生成し、酵素的あるいは非酵素的反応を経て毒性の強いα, β-不飽和アルデヒド(活性アルデヒド)が生じる。我々は活性アルデヒドの光合成への影響を調べた。ホウレンソウ葉から単離した葉緑体を2 mMアクロレイン中暗所25℃で8分間処理すると、CO2還元活性は100% 阻害された。4-hydroxy-2E-nonenal, クロトンアルデヒドも同条件でCO2還元活性をそれぞれ75%, 50% 阻害した。一方、電子伝達系(H2O→NADP+)の阻害は最大5%であり,活性アルデヒドによってカルビン回路が優先的に阻害されることがわかった。α,β-不飽和結合を持たないアルデヒドは同じ炭素鎖長の活性アルデヒドに比べてCO2還元活性阻害の大きさは半分以下であった。アクロレインによりCO2還元活性が100% 阻害されたとき,カルビン回路の諸酵素は以下の割合で失活した。5-ホスホリブロキナーゼ, 90%;グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ, 73%;アルドラーゼ, 47%;セドヘプツロース1,7-ビスホスファターゼ, 32%;Rubisco,23%;フルクトース1,6-ビスホスファターゼ,22%。これらの酵素の部分的失活がかけ合わさり,CO2還元が完全に阻害されたと考えられる。
著者
明石 欣也 横田 明穂
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.S4, 2003-03-27 (Released:2004-02-24)

乾燥ストレスは、植物の生産性を律速する主要な環境要因の一つである。一方、自然界には乾燥ストレスに極度に強い野生植物が存在し、多様な適応戦略でストレスに対処していることが知られている。それらの耐性を担う分子生理機構を解析するに当たり、我々はアフリカ・ボツアナ共和国のカラハリ砂漠に自生する野生スイカに注目している。この植物は、乾燥条件下において水分をほとんど失わずに生存する能力を持ち、また強光傷害の回避機構に優れているが、興味深いことに一般に乾燥に弱いとされるC3型の光合成代謝を営む。この野生スイカはストレス下において極めて特殊なアミノ酸代謝制御を行い、葉内にアルギニン生合成経路の中間体である新規適合溶質シトルリンを約300 mMまで高蓄積する。このシトルリンは、反応性の高い活性酸素種であるヒドロキシル・ラジカルを消去する能力に驚異的に優れている。また野生スイカにおいては、乾燥ストレスに際して他の一般植物とは異なるシグナル情報伝達が行われ、DRIP-1、メタロチオネイン、シトクロムb-561などの新規タンパク質を誘導する。これらのタンパク質のいくつかは、野生スイカにユニークなストレス耐性機構に寄与していることが示唆される。野生スイカを用いた研究は、植物の乾燥応答を理解するにあたり、モデル植物の研究では得ることのできない有用な知見を提供しており、その応用を図る上でも興味深い。
著者
古株 靖久 加藤 伸彦 佐藤 文彦
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.443, 2006 (Released:2006-12-27)

オウレン(Coptis japonica)が生合成するベルベリンは抗菌活性等をもつ有用イソキノリンアルカロイドである。当研究室で確立されたオウレン培養細胞はベルベリン生合成活性が高く、かつその生合成酵素遺伝子のほとんどが単離されていることからアルカロイド生合成系のよい研究モデルである。本研究では同細胞を用いてベルベリン生合成系の転写制御因子の単離と機能解析を試みたので報告する。まず同生合成系に関与する転写因子の単離を目的に高生産選抜株のEST約5000クローンを配列決定し、これらの配列からBLASTx検索により約50の転写因子相同配列を見出した。相同性等をもとに27クローンを選抜し、その転写調節活性を一過的RNAi法(BBB 69:63,2005)により解析した。候補遺伝子配列特異的に作製した二本鎖RNAをオウレンプロトプラストへ導入し、3日間培養後に生合成酵素6OMTの転写産物量を定量することにより解析した。その結果、clone#48の発現抑制に伴って6OMTのmRNAが劇的に低下するという結果を得た。他の生合成遺伝子の発現量を測定した結果、測定した8の遺伝子全てで低下を認めた。一方actinや一次代謝系GAPDH、Chorismate mutaseへの影響は認められなかった。clone#48にはbHLHの保存配列が存在し、CjbHLH1と名付けた。CjbHLH1によりベルベリン生合成系が特異的かつ包括的に制御されていることが示唆されたことより、現在、安定形質転換体を作成し、その機能の解析を進めている。
著者
末岡 啓吾 檜山 哲夫 仲本 準
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.328, 2006 (Released:2006-12-27)

酸素発生型光合成におけるNAD(P)H dehydrogenaseの役割、特にcyclic電子伝達系における役割が近年注目を集めている。しかしながら、いまだこの酵素は均一に精製されておらず、サブユニット組成に関して不明な部分が多い。そこで本研究では好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus elongatusにおけるNAD(P)H dehydrogenaseのサブユニット組成解明を目的とした。Thermosynechococcus elongatusを強い酸化ストレス条件下(強光+methyl viologen)に曝したところ、70 kDaと140 kDa のNAD(P)H dehydrogenase活性が誘導された。この結果はこれらのNAD(P)H dehydrogenaseが酸化ストレス条件下での適応メカニズムに関与していることを示唆しており、cyclic電子伝達系への関与を期待させる。これら酸化ストレスで誘導された活性タンパク質について、それぞれnative PAGEで活性染色によるバンドとタンパク染色によるバンドが一致するような標品にまで精製した。本年会ではこれらのNAD(P)H dehydrogenase について、それぞれ酵素学的性質およびサブユニット組成について報告したい。
著者
今元 泰
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.S055, 2007 (Released:2007-12-13)

紅色光合成細菌の光センサー蛋白質であるPhotoactive yellow protein(PYP)は、代表的なPASドメイン蛋白質である。PYPは125アミノ酸残基からなる小さな水溶性蛋白質であるため、PASドメインが単独で存在し、機能していると考えられている。また、高分解能で高次構造が解明されているため、特に反応メカニズムを詳細に解明するためのモデル蛋白質として注目されている。PYPの発色団は、システイン残基にチオエステル結合したp-クマル酸(4-ヒドロキシケイ皮酸)で、吸収極大波長は446nmにある。暗状態での発色団は脱プロトン化したトランス型であるが、光を吸収するとシス型に異性化する。その後、吸収スペクトルの異なる反応中間体(L、M、M')を経てもとの暗状態に戻るという光反応サイクルを持っている。この過程で、発色団が静電的に中性となり、蛋白質部分に大きな構造変化を起こして紫外部に吸収極大が移動した中間体であるM'が、活性中間体であると考えられている。最近の研究から、これらの構造変化は、発色団を中心とした水素結合ネットワークの変化や、CH/π、CH/Oのような「弱い」相互作用の変化によって起こることがわかってきた。シンポジウムでは、PYPの光反応にサイクルに関する最近の知見を紹介し、LOVドメイン光受容蛋白質との類似点について議論したい。
著者
今井 久美子 大橋 洋平 柘植 知彦 吉積 毅 松井 南 岡 穆宏 青山 卓史
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.S050, 2006 (Released:2006-12-27)

Endoreduplicationは有糸分裂をせずにDNAの複製を繰り返して細胞のploidy(倍数性)が上昇する細胞周期で、特に植物では様々な組織の発生・分化に関わっており、例えばシロイヌナズナでは成熟ロゼット葉を構成する細胞のほぼ8割で起きている。植物体ではこの現象によって上昇するploidyは組織に応じてほぼ一定の範囲内に制御されているが、動物では癌化に関連して無秩序に起こる場合が多く、主に細胞周期の異常としてそれが起こる原因についての研究が進められてきた。植物においても、通常の細胞周期からendoreduplicationへの切り替わりに関する因子を中心として解明が進んでいるが、一方でその終了に関わる因子については存在の有無についても良く分かっていなかった。我々は植物サイクリンA2がendoreduplicationの終了に関わる主要因子であり、DNA複製の繰り返しを阻害していることを確認した。植物細胞はそのタイプに応じてendoreduplicationの促進・抑制因子のバランスを調整して巧妙にploidyを制御していると考えられる。