著者
有江 力 難波 成任 山下 修一 土居 養二 木嶋 利男
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.p570-575, 1987-10
被引用文献数
2

1985年5月, 栃木県今市市の鉢植えおよび苗床のエキザカム (Exacum affine Balf.) で菫葉に萎ちょう, 枝枯れを生じ, 株枯れを起こす未記載の病書が見出された。病株では地際部より発病枝に至る茎内部に褐変が認められた。この褐変部より分離された糸状菌は PDA 培地上で白〜白橙色の菌そうを形成し, 分生胞子は Verticillium 型および, Gliocladium 型の分生子柄から生じるフィアライド上に形成され, 子のうはこん棒〜円柱状で, 2胞の子のう胞子を8個含んでいた。これらの性状より, 本菌は Nectria gliocladioides Smalley et Hansen と同定した。また本菌によりエキザカムに原病徴が再現されたので, 本病をエキザカム株枯病 (stem blight of exacum) としたい。本菌による植物病害はこれまで記載されていないが, 今後土壌病原菌としても十分な注意が必要と考えられた。
著者
古屋 典子 河野 伸二 夏秋 啓子
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理學會報 = Annals of the Phytopathological Society of Japan (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.108-110, 2012-05-25
参考文献数
6
被引用文献数
2

バンチートップ病は,中南米を除く世界各地のバナナ栽培国に広がり,日本の沖縄県では,野原(1968)によって初めて報告された。本病の病原ウイルスは,Babuvirus属バナナバンチートップウイルス(Banana bunchy top virus;BBTV)で,本ウイルスに感染したバナナは,株が著しくわい化して葉は狭く直立し,果実は結実不良となるため,経済的被害が深刻である。そこで,我々は,沖縄県で栽培されている食用バナナおよび繊維用バナナであるイトバショウ(M。balbisiana var。liukiuensis,BBゲノム)において,BBTVに対する感受性を評価したところイトバショウは,BBTVに対して免疫性を有する可能性が認められたので,その結果を報告する。
著者
後藤 岩三郎
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.447-455, 1978
被引用文献数
5 12

標識品種H-79に銀河をもどし交配し,そのB<sub>5</sub>F<sub>4</sub>からもつれ銀河を育成した。もつれ(<i>la</i>)は戦捷の<i>Rb</i><sub>1</sub>と密接に連鎖する。戦捷&times;もつれ銀河,戦捷&times;もつれ亀の尾,銀河&times;H-79等の分析から次のことが明らかになった。(1)銀河には戦捷の<i>Rb</i><sub>1</sub>がとりこまれていない。これが銀河のいもち病抵抗性を低下させる主な要因と考えられる。田戦捷,真珠,双葉,秀峰やほまれ錦も銀河と同程度の抵抗性を示し,戦捷よりは弱い。したがって戦捷の高度抵抗性導入の育種過程の早い段階で低下したものである。(2)銀河には2対の抵抗性遺伝子があり,その相加的な効果で本品種の中程度の抵抗性を支配する。この2対は戦捷の他の2対の抵抗性遺伝子と複対立関係にあるか,あるいは極めて近く連鎖する。
著者
澤岻 哲也 嘉手苅 佳太 新崎 千江美 田場 聡
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.119-123, 2014
被引用文献数
7

我が国のマンゴー(Mangifera indica L.)は沖縄県,鹿児島県および宮崎県などの西南暖地を中心に栽培が盛んに行われているが,果実の流通過程においてマンゴー炭疽病の発病が深刻な問題となっている。本病は輸送中の果実に黒色円状の病斑が発症,進行するため,経済的損失だけでなく市場や消費者の信頼,さらには産地ブランドの評価にも大きく影響を与える。そのため,生育期の圃場における防除対策が急務となっている。マンゴー炭疽病は,Colletotrichum gloeosporioides (Penzig) Penzig and Saccardo(岸,1998)およびC. acutatum J. H. Simmonds(田場ら,2004)の2種の糸状菌によって引き起こされ,特にC. gloeosporioidesは圃場での優占種であることが明らかとなっている(澤岻ら,2012)。沖縄県の施設マンゴーにおける一般的な炭疽病対策は,出蕾期の1月以降から収穫期の7月まで,ビニール被覆による雨よけと併せて薬剤防除が行われている。とくに着果期から袋かけ直前までの主要散布剤として,残効性に優れ,果実の汚れが少ないストロビルリン系薬剤(以下,QoI剤)であるアゾキシストロビン剤やクレソキシムメチル剤の散布が普及,定着しつつある。しかし,佐賀県(稲田ら,2008),奈良県(平山ら,2008)および茨城県(菊地ら,2010)においてQoI剤耐性イチゴ炭疽病菌が既に確認されており,防除暦における散布回数の削減を余犠なくされている。2010年4月現在,沖縄県におけるマンゴー炭疽病菌では本剤に対する防除効果の低下事例ならびに耐性菌の発生は確認されておらず,その実態については不明である。
著者
道家 紀志 酒井 進 冨山 宏平
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.386-393, 1979
被引用文献数
6

ジャガイモ組織に過敏感反応を誘導する<i>Phytophthora infestans</i>の細胞壁成分(CW)とその誘導を抑制する水溶性グルカン(WSG)を各種宿主及び非宿主植物葉に,カーボランダムによる摩擦塗布処理をし,葉組織の過敏感反応性を調べた。ナス科のジャガイモ,トマト,ピーマン,ナス,トウガラシ,ダチュラ,ホーズキ,マメ科のダイズ,インゲン,エンドウ,ソラマメ,ササゲ,ユリ科のタマネギ,ネギ,テッポーユリの葉はCWに反応し,処理後24時間後には褐変え死細胞を生じた。ナス科のタバコ,アカザ科の4種,キク科の3種,十字花科の4種,イネ科の4種,バラ科の3種の各植物葉はいずれも,処理後72時間以内にも肉眼的観察可能な細胞の反応は示さなかった。 トウガラシ,ホーズキ,ダイズ,ササゲ及びシロザの葉はCWと同様に,WSGとも反応し褐変え死細胞を生じた。それらの処理により過敏感反応を起し得る葉は,処理後,5時間以内に異常な電解質の漏出を起した。これらの結果は,特定な科に属する植物が,<i>P. infestans</i>のCW及びWSGに対して,宿主・非宿主とにかかわりなく過敏感反応を起す性質を持つことを示唆した。
著者
善 正二郎 奥田 充 藤 晋一
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.269-274, 2010

アイリスイエロースポットウイルス(IYSV)はトマト黄化えそウイルス(TSWV)をタイプ種とするトスポウイルス属に属し、ネギアザミウマにより媒介される。IYSVはダッチアイリスから最初に分離されたウイルスであり、我が国ではアルストロメリアで初めて感染が報告された。その後、トルコギキョウ、タマネギ、ネギ、ニラで発生が報告されている。宿主植物のIYSVによる病徴は、えそ輪紋、えそ斑点、えそ条斑など様々であるが、発病部位である葉が商品価値に影響を与えるトルコギキョウやネギなどでは、IYSVの発生が直接、農家経営に影響を与えるため、発生地域では生産上の重要な病害となっている。本研究では、ネギアザミウマまたはアザミウマ類に農薬登録がある数種の殺虫剤について残効期間とIYSV感染に対する抑制効果を検討した。
著者
西村 範夫 富山 宏平
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.p159-166, 1978-04

ジャガイモ品種リシリ(R_1-gene)およびダンシャク(r-gene)の塊茎を厚さ1mmのスライスにして24時間, 18C中に静置した。ジャガイモ疫病菌race 0またはrace 1を接種し, 一定時間後に^3H-ロイシン, H_3^<32>PO_4または^<86>RbClを50分間, 接種面から吸収させた。磨砕した後, 20,000×g上清部の放射能活性を測定した。接種1.4時間後に^3H-ロイシンおよび^<32>Pの吸収量は無接種区に比較して約25%低下した。この時間に, ほとんどの遊走子は発芽し始めているが宿主細胞には侵入していなかった。接種2.4時間後から^3H-ロイシンおよび^<32>Pの吸収量は, 親和性の組み合せに比較して非親和性の組み合せで顕著に低下した。この時間に非親和性の組み合せにおいても宿主の細胞死はほとんど起っていなかった。^<86>Rbの吸収では, 非親和性菌を接種したスライスの吸収量は非感染および親和性菌に感染したスライスより高かった。また10Cで吸収させると差はほとんどなくなった。^3H-ロイシンによる予備実験の結果から20,000×g上清部の放射能活性をスライスへの取り込み量とみなすことができる。以上の結果は感染初期(侵入菌糸の貫入とほとんど同時)に宿主原形質膜が感染の影響を受けることを示す。また, 親和性, 非親和性の認識が侵入菌糸の貫入とほとんど同時におこなわれていることを示していると考えられる。また^<86>Rbの結果は^3H-ロイシンおよび^<32>Pの場合と異なるが, その理由は不明である。
著者
山田 利博 伊藤 進一郎
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.666-672, 1993
被引用文献数
8 28

マツノザイセンチュウを感受性のクロマツ,抵抗性のテーダマツおよびストローブマツの枝に接種し,接種枝からのエタノール抽出物の分析を行った。線虫接種1週間後にストローブマツの皮層,師部および木部で抗菌性物質の集積が認められた。この活性は実験期間中維持された。木部から抽出された抗菌性物質にはpinosylvin, pinosylvin monomethylether, pinobanksin, pinocembrinが含まれていた。これらの物質は線虫を不動化すると考えられた。テーダマツとクロマツで接種5週間後に菌に対する阻害活性がわずかに認められたが,線虫に対する不動化活性は認められなかった。これらのことから,ストローブマツ接種枝では線虫感染に対する抵抗性反応として,エタノール可溶性の阻害物質が生産されることが示唆された。
著者
黒田 慶子 山田 利博 峰尾 一彦 田村 弘忠
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.p606-615, 1988-12
被引用文献数
9

11年生クロマツにマツノザイセンチュウを接種し, 1週間ごとの伐倒の前日に根元から染色剤を吸収させて, その上昇パターンから木部の通水異常を検出した。木部含水率を測定し, 通水異常との関係を明らかにすると同時に, マツ組織の変化, 線虫の増殖との関係を調べた。接種2週後に水分の上昇に乱れが観察され, 含水率が低下し始めた。樹幹の木口断面では, 放射方向に長く白色の線状ないし紡錘形の部分が, 染色部と明確に区分されて出現した。この部分では仮道管は水を失い, 気体が入っていた。この現象は「キャビテーション(空洞化)」と呼ばれる。健全な樹木では, 木部の水はらせん状に上昇するが, 線虫接種木ではキャビテーション部位で流れが妨げられて通水パターンが乱れる。キャビテーションの範囲はしだいに拡大し, 4週後には木口断面のほぼ全面を覆った。マツ組織の変化と線虫の増殖は4週後, 木部の含水率が健全木の30%に低下してからであった。これらの事実から, 形成層や師部の壊死はキャビテーション部位に接した後に水不足により起こったものと判断した。仮道管のキャビテーションがマツの枯死の直接的原因である可能性が高い。他方, 漏出した樹脂による仮道管通水の機械的阻害は, 非常に小さな範囲に留まるため, 枯死の主因とは考えにくい。染色の阻止状況から, 疎水性の物質がキャビテーション部位の仮道管内に存在することが示唆された。マツノザイセンチュウがなぜマツを枯らすのかを明らかにするためには, まずキャビテーションの原因を解明する必要がある。
著者
岸 國平
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.275-278, 1987
被引用文献数
2
著者
富濵 毅 尾松 直志 中村 正幸 岩井 久 瀧川 雄一
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.259-268, 2010
被引用文献数
2

2007年の台風4号襲来時に鹿児島県の更新園や幼木園の徒長枝に,チャ葉の褐変症状が見られた.褐変症状からはチャ葉に高濃度で注入接種した場合に,過酸化水素の発生を伴う過敏感反応性症状を24~48時間以内に形成する細菌(以下,HRT菌)が分離された.2007年から2008年にかけて台風襲来後に発生したチャ葉の褐変症状から4種類のHRT菌が分離され,そのうち優先2種は細菌学的性質および16S rRNA遺伝子解析より,それぞれ<i>Herbaspirillum huttiense</i> および<i>Acidovorax avenae</i> に近縁な種であった.これらの細菌は,通常の付傷接種や野外条件においてチャ葉に病原性を示さなかった.しかし,台風襲来時に野外茶園においてHRT菌を噴霧接種したところ,翌日には原症状に類似した褐変症状が再現でき,病斑部分からは接種菌が再分離された.我々のデータは,台風襲来時のような特殊な条件下では本来は非病原性である細菌によって過敏感反応による被害が引き起こされうることを示唆する.<br>
著者
加藤 肇 山口 富夫
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.p607-612, 1982-12
被引用文献数
1

シコクビエいもち病菌の2つの交配型Aおよびaに属する, それぞれ2株の標準菌株とイネいもち病菌をオートミール培地上で対ぢ培養により交配し, 後者の交配型を決定した。イネ菌は世界20か国, すなわち, アフリカのセネガル, ギニア, マリ, コートジボアール, オートボルタ, カメルーン, エジプト, ウガンダ, マダガスカル, 西ヨーロッパのイタリア, アジアのインド, タイ, マレーシア, インドネシア, フィリピン, 中国, 日本, 南アメリカのコロンビア, スリナム, ブラジルから集めた718菌株である。172株はA型, 18株はa型で, 残り528株は子のう殻を形成せず, 交配型不詳であった。Aおよびa型に属するイネ菌を相互に交配した結果, 一部の組合せで子のう殻, 子のう, 子のう胞子が形成された。これらの形態, 大きさは Magnaporthe grisea (Hebert) Barr に類似した。