著者
勝川 木綿 宮本 健一 松田 裕之 中西 準子
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.83-92, 2004-06-30
被引用文献数
2

化学物質の生態リスク評価では,内的自然増加率γを指標の一つとして使うことができる.しかし,数多くの卵を水中に放出する多くの魚種では,自然環境下の卵から仔稚魚までの生存率を得ることは困難である.データから推定されたγの絶村値は,推定誤差が大きい.本論文では,化学物質の毒性が魚類個体群に与える影響を評価するため,不明または推定誤差の大きいパラメータを使わずに生態リスクを評価できる簡易方法を提案した.はじめに,化学物質による内的自然増加率γの減少分(Δγ)をリスク評価の指標と定義し,齢構成モデルから計算可能であることを示した.Δγは推定誤差の大きい初期生残率のデータを用いずに計算できる値であり,化学物質が魚類個体群に与える影響を相対的に比較することができる.次に,生活史パラメータが不明な場合,種間外挿によって未知のパラメータを求め,齢構成モデルを構築する方法を示した.Δγは,個体の繁殖率や生存率の減少など化学物質の毒性が生活史パラメータに与える影響により決まる値である.内的自然増加率の減少率Δγを指標として使う場合,(1)成熟齢や極限寿命など生活史の異なる生物の生態リスクを相村的に比較することが可能である,(2)卵の受精率,孵化率の減少や仔稚魚期の生存率の減少,あるいは成魚の生存率や繁殖率の減少など暴露が様々な生活史段階に与える影響を評価できる,(3)推定誤差が大きい初期生存率のデータを用いずに,化学物質が個体群に与える影響を相対的に比較できる,(4)乱獲など質の異なる生態リスクとの比較が可能である.実際に,ブルーギルについて個体への影響を調べた毒性試験結果から,Δγを用いて個体群への影響を評価した.
著者
石井 信夫
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.73-82, 2003-08-30
被引用文献数
8

鹿児島県奄美大島で在来種保護を目的に環境省が進めている移入マングース(Herpestes javanicus)の駆除事業について,これまでの経過を紹介した.1996年度から1999年度まで,分布,生息密度,個体数などを明らかにするための調査がおこなわれた.マングースの個体数は1999年時点で5千から1万頭,年増加率は40%と推定され,根絶を目標とした駆除計画が検討された.この計画に基づいて.2000年度から報奨金制度を中心にした駆除が実施されている.これまでの作業により.2002年度までの3年間に9,469頭のマングースが捕獲され,その結果,個体数と生息密度は以前の数分の1に減少したと推測される.しかし,捕獲効率の低下に伴って捕獲努力量が減少し,個体数の低減化は足踏み状態である一方,分布拡大傾向が続いている.今後,捕獲努力量の増大と計画的配分をどのように実現するかが課題である.