著者
丸毛 美樹
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.98-112, 2014

プリーモ・レーヴィは、アウシュヴィッツ絶滅収容所から生還した化学者として作家となった。レーヴィは戦後語り手・証人としての活動を精力的にこなしながら、化学者としての仕事を続けつつ、作家としても高く評価される作品を生み出してきた。鉛のように重い現実に向き合いながらも、プリーモ・レーヴィはなぜか各所でユーモアを表現している。なぜそのようなことが可能なのか。どのような意味をもった行為なのか。それを探るのが本稿の目的である。本稿では、アウシュヴィッツに関する古典的名著である『アウシュヴィッツは終わらない』、アウシュヴィッツからの生還者が普通の生活を取り戻す過程を描いた『休戦』、初の創作短編集である『天使の蝶』、レーヴィの存在の多重性によって成立した『周期律』の四作品をとりあげて検討する。レーヴィは、ユーモアを活用することで絶滅収容所の世界を相対化し、ユーモアを介して失われた世界とのつながりを取り戻している。ユーモアは、特定の信仰や政治信念をもたない人間が極めて困難な状況に直面した際に頼れる、解放の強力な武器であると言えよう。
著者
遠藤 謙一郎
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.93-102, 2015

日本の文化・生活における「間(ま)」の重要性については、いろんな分野で研究されている。話芸においても、無言・沈黙の時間の「間」が述べられている。今回、落語の「間」を考えるときに、特に意図的に短縮された時間もしくは一切省略された「間合い」が多用されていることに着目し、これを「端折りの間合い」とよび検討を加えた。その「端折りの間合い」を具体例にて3つの類型に分けて提示し、イ.ながれ、ロ.かぶせ、ハ.いきなり、と分類してその演技上の効果について解説を試みた。
著者
新田 章子
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.31-39, 1997-06-15 (Released:2017-07-21)
被引用文献数
1
著者
野村 亮太 ヒュース 由美
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.29-40, 2019 (Released:2019-11-30)

落語は手軽におもしろさを体験できる演芸だが、現在は多くの噺家(落語家)がおり、好みに合う噺家を探すのにも手間がかかるようになってきている。従来、芸人の印象の類似性が高いとき、観客がそれぞれの芸人に対して抱く好ましさ(好き・嫌い)には正の相関があることが知られている(野村, 2010)。このため、印象評定は多くの噺家から好みの噺家を見つけ出すために利用できる。この目的のために、本研究では、落語に限らず、人前で話す者としての演者について、より一般的に印象を評定できる評定尺度(Performer's Impression Scale, PIS)を作成した。古今亭文菊師(芸歴16年)の口演時の印象について評定を行ってもらった結果、いずれの下位尺度においても、印象評定値は、聞き手の年齢、性別、落語の視聴経験による差は、ほとんど見られず一貫していた。本研究の尺度は、その応用として、好みの噺家の候補を挙げるサービスの提供に加え、教師や政治家といった人前でパフォーマンスを行う者の印象評定と改善にも用いることができる。
著者
石田 万実
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.46-58, 2016 (Released:2016-12-20)

本研究は、日本のお笑い番組において働く女性がどのように表現されてきたのか、コント番組で演じられる職業や描写の特徴とその変遷を明らかにすることを目的とする。このため、『8時だョ!全員集合』、『オレたちひょうきん族』、『ダウンタウンのごっつええ感じ』の内容分析を行った。 分析の結果、視聴者にとってわかりやすい、当たり前のものとして「女らしい」職業が演じられていることがわかった。女装で演じられる人物が起こす笑いは、はじめは「女らしさ」を利用したもののみであったが、仕事内容を笑いにしたものが登場するようになった。「女らしくない」職業は、女装で演じられるものは登場割合、仕事の描写ともに増加し、女性が演じる場合は登場する条件が減ってきていた。コント番組における女性の仕事に関する描写や笑いの起こし方は、時代が進むにつれて幅広くなってきているといえる。
著者
長島 平洋
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.3-17, 2016 (Released:2016-12-20)

狂言の笑いの特性を知るために笑いのパターンを検出する方法を考え、21項目のパターンを選び出した。その結果、演目ごとの笑いのパターンでは劇中で笑いを喚起させる場合から、笑える状況の現出までの笑いの分布が判明した。また演目ごとの笑いのパターンを超えたものとして、狂言に籠められているおかしの精神をめぐって考察し、その背景に和楽の流れがあり、それが中世の文芸・芸能において生まれ、日本の文芸・芸能の笑いの源流になっていることを明らかにする。
著者
ムズラックル ハリト
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.71-82, 2016 (Released:2016-12-20)

本稿では、故・2代目桂枝雀の落語における劇的空間、そして枝雀の「高座」の面白みを題材に、落語と俳諧の類似点について論じる。私の関心は「高座」という文化的要素それ自体の意義を問うよりも、演者と観客が共同で作品を作り上げるという日本文化の「座」の感覚を実感し、体験することにある。 俳諧は落語を理解するためにモデルを設けるとしたものであり、系譜作り、または歴史化としてあるのではない。あくまでも、パフォーマンス面、遊戯的な共有の上での類似点を持っていることについて論じてみたい。両者が持っている、とりわけ「共同制作芸術」という魅力的な共通点に注目し、「演者=観客」といった劇的空間の面白みを通して、観客との関係を重視する落語への理解を深める。