著者
菊地 博達
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.35-39, 2006 (Released:2006-01-24)
参考文献数
1

1993年2月から2003年の12月までの期間週1回の頻度で外科系病棟のデイルームで手術室・麻酔教室を術前患者およびその家族を対象に実施してきた. 一般的な麻酔法, 麻酔の危険性・安全性, 患者の手術室入室までの手順を写真などを用いて説明した. 直接語りかけることにより直接患者からの質問に応えられ, 改善すべき問題点などの参考となった. 一方, 聞かれなかったことを含め, 患者自身からの種々の情報提供が必要であることを理解してもらった. 積極的に患者が自分の受ける医療に参加することにより, 患者自身が安全に医療を受けることができるとの啓発活動となった.
著者
影山 京子 橋本 悟 田中 義文
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.980-985, 2008-11-14 (Released:2008-12-13)
参考文献数
2

麻酔科領域には紛争, 訴訟に発展する数々の特殊な問題が潜んでいる. 第一に,「麻酔担当医と患者との人間関係, 信頼関係が十分に形成されない間に麻酔が実施される」, 第二に, 患者側の「麻酔の危険性」に対する認識不足, 第三に,「全身麻酔は患者の不可視の状態の下に行われ, 医療行為の過程が患者にはわからない」, 第四に「局所麻酔の場合, 患者にとって簡易な医療行為にみえるにもかかわらず発生した結果はきわめて重大・深刻である」ということである. これらの特殊性を理解したうえでの慎重な麻酔業務の遂行と, 不幸にして事故が発生した場合,「過失」に相当するか否か慎重に検討し, 事故の再発防止と当事者, 被害者両者の救済に努める必要がある.
著者
米井 昭智
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.427-432, 2009-07-15 (Released:2009-08-10)
参考文献数
1

術前診察と術後回診を効率的に行うことは麻酔科医の過重労働を軽減するために必要と考えられる. われわれは麻酔説明用のアニメーションビデオを業者と共同開発した. 2008年10月より, 手術予定の患者・家族に麻酔科外来にて医師の診察が始まる直前にビデオを鑑賞してもらうことを開始した. これにより医師の説明時間が短縮し, 患者・家族の理解が促進されたと考えられる. 一方, 術後回診の効率化はいまだ課題として残っている.
著者
中尾 三和子
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.595-602, 2005 (Released:2005-11-29)
参考文献数
2

麻酔管理において術前診察の果たす役割は今も変わらず重要であるが, いつ, どこで, 誰が行うかについては施設によって異なってきている. 県立広島病院における術前診察は, 通常, 手術1~2日前に, ベッドサイドで, 研修医を含めた担当麻酔科医が行う. 問題症例, 日帰り手術, 当日入院患者は術前診察担当麻酔科医が外来で術前診察を行う. 当院で手術を受けた患者60名へのアンケート結果では, プライバシーの保護, 家族への説明, わかりやすい言葉で話すなどの問題点が明らかになった. 今後これらの問題点を解決できれば, 担当麻酔科医が術前診察する方法は, 研修医の教育や患者との信頼関係を築くうえで優れた方法と考える.
著者
田畑 美織 松本 延幸 村上 康郎 水上 智 松本 勲
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.206-211, 2004 (Released:2005-03-31)
参考文献数
20

突発性難聴64例に星状神経節ブロック(SGB)と上頸神経節(SCG)近傍への低反応レベルレーザー照射を併用したところ(SGB+C2レーザー群), SGB単独の62例(SGB群)と比較して治療成績が向上した. 治療効果の判定は, 初診時とほぼ安定状態に達した時点の聴力を比較し, 治癒, 著明回復, 回復, 不変に分類した. その結果, SGB群(治癒 : 11%, 不変 : 27%)に比べSGB+C2レーザー群(治癒 : 30%, 不変 : 8%)で聴力改善度は有意に上昇した(p<0.01). 固有蝸牛動脈より末梢にはSCGからの交感神経線維が分布しており, SCGへのレーザー照射併用により, SGB単独よりさらに広範な交感神経線維が遮断されたものと思われる.
著者
石田 和慶 松本 美志也 平田 孝夫 坂部 武史
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.526-534, 2008-06-15 (Released:2008-08-13)
参考文献数
33

虚血に伴う神経細胞傷害に蛋白を成熟させる細胞内小器官である小胞体 (ER) が関与する. 虚血によるアミノ酸やglucoseの低下, ER内Ca2+ 低下は異常蛋白蓄積を生じ, ERストレスとなる. 蓄積した異常蛋白のrefoldingにER chaperone GRP78が使われ, ER膜上のキナーゼ (PERK, ATF6, IRE1) を活性化する. いずれもERストレスを改善する遺伝子 (grp78など) を転写するが, PERKはeIF2αのリン酸化によりmRNAの翻訳を抑制し, 蛋白合成を阻害する. 虚血耐性では, GRP78の発現亢進と本虚血後のeIF2αのリン酸化が生じにくく, 異常蛋白の修復が速く, 蛋白合成抑制が生じにくい. バルプロ酸などによるGRP78の増強, ERの保護は神経細胞保護につながる.
著者
安川 毅 藤井 智子
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.42-50, 2005 (Released:2005-03-25)
参考文献数
17
被引用文献数
2 2

手術中や集中治療領域において脳虚血の監視は近年, ますます重要となっている. 頸動脈内膜剥離術や上行・弓部大動脈人工血管置換術は, 術中に一時的に脳血流を遮断あるいは脳灌流を行うので, 脳虚血を監視するために術中モニタリングの工夫が試みられている. そのモニタリングの一つである近赤外分光法 (NIRS) は手技的に計測が簡単であり, 内頸動脈領域など局所脳動脈領域のモニタリングとして有用で, 他のモニターとの組み合わせにより信頼性を増す. しかし椎骨動脈領域を含む全脳のモニタリングには限界があり, 今後の検討が必要である.