著者
市川 順子 笠原 彩 西山 圭子 小高 光晴 小森 万希子
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.381-386, 2019

<p>過去3年間の血液製剤使用拒否患者を対象とした手術について準備書面,手術・麻酔状況などを調査した.緊急手術の1名を除き,8名全員から術前に本人による輸血拒否と免責に関する証明書が提出された.術前の予測出血量は少量から500mLであり,7名がアルブミン製剤投与,2名が回収式自己血輸血施行を承認していた.術中の出血量は少量から350mLであり,血液製剤を投与された者はおらず,予測出血量が少ないため術中に出血対策を施行された者もいなかった.相対的無輸血という対応指針のもと,予測出血量が少ない症例に限り絶対的無輸血治療方針で対応していた.回収式自己血輸血や血液製剤使用など同意範囲の拡大に努める必要がある.</p>
著者
村川 徳昭 橋本 浩 大嶋 重則 豊田 幹夫 松木 明知 尾山 力
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.291-294, 1986

フルニトラゼパム+ブプレノルフィンによるNLA変法の副腎皮質機能に及ぼす影響について, 16~74歳の男女30人を対象とし, 開腹術群12人と非開腹術群18人の2群に分けて各々血漿コルチゾール濃度を指標として検討した. チオペンタール, サクシニルコリンで麻酔導入後, フルニトラゼパム20&mu;g/kg, ブプレノルフィン3&mu;g/kgを静注し, 70%笑気と30%酸素にて麻酔を維持した. 必要に応じて, パンクロニウム, d-Tcを投与した. 血漿コルチゾール濃度は本法自体により変化しなかったが、手術後漸増し麻酔覚醒時には最高値となった. 開腹術群に比べて非開腹術群では血漿コルチゾール濃度の上昇は少なく, 両群間の侵襲度の大小が原因と考えられた.
著者
西 圭史
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.687-694, 2017-09-15 (Released:2017-10-20)
参考文献数
5

感染症治療に用いる抗菌薬,抗真菌薬,抗ウイルス薬について分類や種類,作用機序と適正使用する際の注意点,副作用,相互作用,禁忌を述べた.おのおのの薬に関する基本事項を知り,理解することが適正使用へ向かう一歩である.また,近年,適正使用について国レベルでのプランが進行する中で,さらなる推進につながるよう患者アウトカムの改善,副作用の防止,耐性菌の抑制,医療費の抑制に寄与すべく基本的知識についても述べた.総論的な内容となっているが,これらの薬の理解の一助となることを願う.
著者
猪又 孝元
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.846-853, 2011

&nbsp;&nbsp;現在の心不全治療は,目に見えて悪い状態からの脱却を目指す「目に見える治療」と,長期予後改善というエビデンスに基づく「目に見えない治療」とに大別される.前者はその場を乗り切る治療であり,後者は固有の質を改善する治療である.心不全は進行性の病態が特徴的であり,先手先手の介入がより大きな利益を生む.最近では,慢性期予後を意識しての急性期介入,すなわち「目に見える治療」の際に「目に見えない治療」を含有できるかの試みがなされつつある.根底に流れるコンセプトは,治療アウトカムをいかに的確かつ具体的に意識できるかという点である.周術期という一種の急性病態に対し,麻酔科医が念頭に置くべき新たな潮流である.
著者
近藤 紀子 寺田 宏達 土村 まどか 山田 裕
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.493-499, 2009-07-15 (Released:2009-08-10)
参考文献数
8

近年, 超音波ガイド下神経ブロックが普及してきているが, ブロック針のクリアな描出に難しさを感じることが多い. 今回われわれは, 静脈留置針をブロック針として使用しIn vitro試験にて他の針と比較検討を行い, 視認性, 抵抗感とも良好な結果を得た. また実際の症例において, 大腿骨頸部骨折の83歳女性の観血的整復固定術の麻酔管理の際に, 静脈留置針をブロック針として超音波ガイド下末梢神経ブロックを併用した全身麻酔を行い, 速やかにブロックを施行できた. 静脈留置針は視認性・抵抗感の点で超音波ガイド下神経ブロックに有用と思われた.

1 0 0 0 OA 消毒と滅菌

著者
谷野 雅昭
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.702-705, 2017-09-15 (Released:2017-10-20)
参考文献数
4
被引用文献数
1

現代医療,とりわけ手術において,消毒・滅菌が極めて重要であることは誰もが認めるところであろう.しかしながら,われわれ医師を含めた医療従事者はその教育を十分に受けてきたとは言い難い現実がある.麻酔科医にとっては非常に身近なものであるにもかかわらず,消毒については十分な知識を有しているとは言えない状態で,滅菌に至ってはほとんど何も知らないままでいる人が大半ではないだろうか.消毒・滅菌について,それらの定義や分類をはじめとして,その本質を理解するために必要な基礎的な知識を述べる.
著者
前田 倫
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.654-660, 2017

<p>区域麻酔・神経ブロック時の抗血栓療法(抗凝固薬・抗血小板薬)の休薬は,血栓予防には短期間が望ましいが,出血・血腫予防には十分な休薬が望ましい.この相反する問題解決のために2016年12月,日本ペインクリニック学会・日本麻酔科学会・日本区域麻酔学会が共同で,抗血栓療法中の区域麻酔・神経ブロックの日本版ガイドラインを作成した.手技と出血性素因により,高・中・低リスク群に分類した上で,各薬剤の休薬期間を設定しているが,休薬による血栓形成より出血予防を優先している.合併症が極めてまれであるため,DOAC(direct oral anticoagulant)も含めエビデンスに乏しいが,抗血栓療法の休薬基準がない本邦の現状から脱する一つの道標としての意義があり継続的な内容改訂が望まれる.</p>
著者
飯島 毅彦
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.304-309, 2007 (Released:2007-08-12)
参考文献数
8

セボフルランは血液/ガス分配係数が0.63と低く, 導入覚醒が早い麻酔薬である. 麻酔の維持には広く使用されているが, 麻酔の導入には小児以外ではそれほど使用されていない. ハロタンの時代では緩徐導入といわれるように吸入麻酔による導入は時間がかかり, そのため, 血圧の低下や喉頭痙攣に悩まされてきた. 「ハロタンの呪い」 ともいえる悪い印象が麻酔科医に残っていると思われる. セボフルランのone breath inductionはきわめて速やかに就眠し, 喉頭痙攣, 血圧の低下も少ない方法であり, その速さは静脈麻酔薬に匹敵する. セボフルラン吸入による導入法のさらなる評価が望まれる.
著者
道幸 由香里 小川 幸志 中田 亮子 水本 一弘 畑埜 義雄
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.273-277, 2007 (Released:2007-05-28)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

大量出血に対し, 照射MAP加赤血球濃厚液急速投与を行ったところ, 高カリウム血症から心停止に至った症例を経験した. 症例は68歳, 女性. 大量出血による血圧低下のため, 輸血速度を80ml/minに速めたところ, 心電図上QRS幅の延長に引き続き心停止に至った. ただちに胸骨圧迫心マッサージを行い, 塩化カルシウムと炭酸水素ナトリウムの投与で洞調律に復帰した. 心停止直前の血清K値は8. 3mEq/Lであった. 投与したMAP血のK値は45mEq/L (照射後11日) であったため, 以後の赤血球輸血には自己血回収装置 (Cell Saver) を用いて照射血を生理食塩水で洗浄したものを用いた. Cell Saverにより作製した洗浄照射赤血球の輸血は, 高カリウム血症の回避に有効であった.
著者
吉谷 健司 大西 佳彦
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.7, pp.891-895, 2014 (Released:2014-12-27)
参考文献数
4

近赤外線分光法(NIRS)を用いた局所脳酸素飽和度(rSO2)は非侵襲的に連続測定が可能なため手術中に用いられることも多くなった.しかし,使用してみると個人間で測定値にばらつきが大きく,同じように%表示されるパルスオキシメーターで測定される動脈血酸素飽和度(SpO2)と同様には使いにくいことがわかる.しかし,NIRSによるrSO2もその簡便さから捨てがたいものがある.このジレンマを解決するために少し掘り下げてrSO2について考えてみる必要がある.パルスオキシメーターとどの点が異なるのか,測定値のばらつきはなぜ起こるのか,正確なrSO2は可能なのかなどについて考えてみることにする.
著者
北村 享之
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.558-566, 2016-09-15 (Released:2016-11-05)
参考文献数
27

周術期高血糖は手術予後を増悪させる独立因子である.術前管理や術後管理も糖代謝に大きな影響を及ぼしうるが,術中においては,手術侵襲だけでなく,麻酔管理方法や麻酔薬などのさまざまな因子が糖代謝を大きく変容させる.術中糖代謝管理においては,エネルギー需給バランスを維持し,高血糖が惹起しうる弊害を回避することが重要である.さまざまな因子が術中糖代謝に及ぼす影響の全容が未解明であるため,残念ながら術中血糖値管理指針は未確立のままである.この分野の研究が発展することにより手術予後の改善に寄与しうる術中血糖値管理指針が確立されることを期待したい.
著者
江原 朗
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.675-681, 2012 (Released:2012-11-13)
参考文献数
14
被引用文献数
1

日本の医師の労働時間を国際比較すると,欧米に比べて週当たりの労働時間が長い.長時間労働は,過労死の誘因ともなり,労働衛生の面から問題である.しかし,そればかりではない.医療事故を誘発し,患者に対する医療安全の面でも見過ごすことができないのである.しかし,病院における労務管理は,必ずしも労働法規を遵守しているとはいえない.全国の自治体病院399施設について,労働基準監督署から交付された是正勧告書を開示請求して解析したところ,過去9年間に約6割の自治体病院が労働法規に違反していたことが判明した.特に,ずさんな労働時間管理や時間外・休日・深夜における割増賃金の未払いが目立っていた.
著者
山口 重樹
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.606-609, 2016-09-15 (Released:2016-11-05)
参考文献数
7

デスフルランを用いた麻酔管理で遭遇する問題点は,気道刺激に伴う咳嗽,喉頭痙攣,気管支収縮,交感神経刺激による頻脈,高血圧である.そのため,デスフルラン吸入開始時には細心の注意が必要である.デスフルランの吸入濃度が1MACを超えると,気道刺激や交感神経刺激の危険性が高まる.Golden roleと呼ばれる「新鮮ガス総流量×デスフルランの設定濃度」の値が18を超えないようにデスフルラン吸入を設定することが望ましい.デスフルランによる気道刺激,交感神経刺激の予防にオピオイド鎮痛薬の併用が有効である.その他,低流量麻酔の問題点として,麻酔中の気化器再充填,二酸化炭素吸収材の劣化などの問題がある.
著者
三木 保
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.483-492, 2013-05-15
参考文献数
12

&nbsp;&nbsp;「東京医大病院 細管誤挿入で脳死状態 50代主婦 胸腔に点滴液たまる」.2003年11月11日の産経新聞の社会面のトップ記事は,東京医科大学病院の全職員を震撼させた.また,これが一連のマスコミを騒がす東京医科大学の医療安全体制の不備の露呈の始まりで,2004年の心臓外科の手術の医療事故(心臓手術で同一医師による4例の死亡例)から主任教授辞任,2005年の特定機能病院指定取り消しと,負のスパイラルへのプロローグになろうとは誰も想像はできなかった.当初これはごく一部の単なる医療事故のように見えた.しかしその本質は組織の単純なミス,油断ではなく,組織全体の虚構の医療安全体制の露呈であった.失った信頼を取り戻すためには,長い時間と多くの努力を要した.今回の東京医科大学病院でのわが国初のCVラインセンターの設置プロジェクトは,まさに真の医療安全文化構築への挑戦であった.
著者
槇田 浩史
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.359-369, 1998-05-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
51
著者
岩瀬 康子 佐々木 利佳 堀川 英世 釈永 清志 山崎 光章
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.214-217, 2012

&nbsp;&nbsp;グルカゴノーマ摘出後に高度の低血糖が原因の覚醒遅延をきたした症例を経験したので報告する.46歳女性.上腹部腫瘤と耐糖能障害を認めたため,確定診断の目的も兼ねて腫瘍摘出術が施行された.術中経過は安定しており,血糖値は103~110mg/dlであった.術後に覚醒遅延を認めたため血糖値を測定したところ,4mg/dlであった.ただちにブドウ糖を投与し,血糖値が回復すると速やかに覚醒した.術後に神経学的異常所見は認めなかった.グルカゴノーマの周術期には血糖値が大きく変動する可能性があるため,頻回に血糖値を測定する必要がある.グルカゴノーマ摘出後に覚醒遅延をきたした場合は低血糖の可能性を考慮する必要がある.
著者
小川 節郎
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.661-667, 2015

緩和医療とは何かについて俯瞰的に述べた.緩和ケアとは「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して,疾患の早期より,痛み,身体的問題,心理社会的問題,スピリチュアルな問題に関して,きちんとした評価を行い,それが障害とならないように予防したり対処したりすることで,QOL(生活の質,生命の質)を改善するためのアプローチである」と定義されている.最近ではこのケアは「がんと診断された時から始める」ことが必要とされ,生命の最後の時間にのみ行う医療ではないことが強調されている.本稿では緩和ケアのうち,特に頻度が高い痛みへの対応に関し,陥りやすいピットフォールについても触れた.
著者
高橋 伸二
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.779-784, 2010 (Released:2010-12-24)
参考文献数
20

レミフェンタニルの登場など麻酔管理が進歩し,術中頻拍症は減少した.しかし,予期せぬ術中不整脈は依然重要な問題である.American Heart Associationから頻脈治療のアルゴリズムが紹介されており,周術期にも対応が可能である.頻拍症が起きたら,診断を考えるよりもまず患者が安定しているか不安定なのかを判断する.不安定ならばただちに同期下カルディオバージョンを施行する.容認できる血圧で推移する場合には診断し治療する.狭いQRSの頻拍症は発作性上室性頻拍症であることが多く,治療薬はATPである.再発予防に洞調律回復後はβブロッカーで心拍数を抑える必要がある.狭いQRSの不規則な頻拍症ならば心房細動を疑い,心拍数をコントロールするかリズムをコントロールする.塩酸ランジオロールは超短時間作用性で心拍数のコントロールに使用しやすい.心拍数が抑えられると発作性の心房細動の一部は自然に洞調律に回復する.超短時間作用性なので血圧が低下したら投与を減量,中止すればよい.人工心肺離脱時心室性不整脈に,塩酸ニフェカラントとβブロッカーを併用すると有効である.麻酔科医は周術期頻拍症に対して効果的にβブロッカーを使用することが望まれる.
著者
原 哲也 澄川 耕二
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.765-774, 2012 (Released:2012-11-13)
参考文献数
19

酸素需給バランスの評価は安全な麻酔管理の第一歩である.特に動脈血酸素飽和度,ヘモグロビン値,心拍出量は重要である.混合静脈血酸素飽和度は酸素運搬量と酸素消費量のバランスを反映し,心拍出量と組み合わせることで,運搬と消費の問題を区別して評価できる.FloTrac/Vigileoシステムは動脈圧の標準偏差から1回拍出量を推定する動脈圧心拍出量モニターである.PreSep中心静脈オキシメトリーカテーテルは混合静脈血酸素飽和度に代わり,中心静脈血酸素飽和度を測定する酸素需給バランスのモニターである.これらの低侵襲モニターを麻酔管理に活用することで,重症患者の安全を確保するとともに,麻酔科医の負担を軽減したい.
著者
岩月 矩之 高橋 浩子 村上 衛
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.218-223, 1989

下腹部及び下肢の手術患者35名を対象として, 脊椎麻酔用0.5%等比重及び高比重ブピバカイン液と0.5%等比重テトラカイン液を用いて脊椎麻酔を行った. 麻酔効果発現時間, 無痛域の広がりは高比重ブピバカイン液が等比重ブピバカイン液に比べて早かった. 麻酔持続時間は等比重ブピバカイン液が3~4時間と高比重ブピバカイン液よりも約1時間長く, また運動神経麻痺の程度も強かった. 血圧下降の程度は等比重液の方が軽度であった. 0.5%等比重ブピバカインと0.5%等比重テトラカインとの比較では, その効果に有意差はみられなかった.