著者
浅井 隆
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.608-612, 2014 (Released:2014-09-06)
参考文献数
11
被引用文献数
1

麻酔導入後にマスク換気が困難で,下顎挙上によっても上気道閉塞が十分に解除できない場合には,適切なエアウェイを挿入する.エアウェイには経口と経鼻があるが,マスク換気困難な場合,侵襲の少ない経口エアウェイを選択する.しかしエアウェイ挿入によっても換気困難な場合,声門上器具の挿入を試みる.声門上器具は,マスク換気が困難なときの“レスキュー”器具として役立つ可能性がある.“挿管不能,換気不能”という緊急時には,挿入が容易で,換気の成功率が高い声門上器具を使うとあらかじめ決めておくのがよい.そしてすべての医療従事者は,いざというときにこれらの器具を確実に挿入できる能力を普段から身につけておく必要があろう.
著者
坂本 麗仁 鈴木 利保
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.50-57, 2018-01-15 (Released:2018-03-08)

本邦においてインフォームドコンセント(以下IC)は医療行為を行う上で外すことのできないものになっている.最近の民事訴訟を概観すると,説明義務違反などのICに関する過失について争点となっていることが散見される.しかし緊急時には医療行為を迅速に行わなければ,患者の生命・身体に重大な危険が生じることから,患者からICを取得することなく医療行為を行うことが容認されているのが現状である.これにより各病院での緊急時ICの取り扱いはさまざまであり,今まで全体像について知る由がなかった.本稿では,神奈川県下の各病院群での緊急手術時の麻酔ICの状況を俯瞰し,問題点を抽出したのち,今後のあり方について述べさせていただく.
著者
林 美鈴 幾世橋 美由紀 渕辺 誠 垣花 学 上原 健 宮城 淳
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.19-24, 2018

<p>症例は83歳,女性.胸腔鏡補助下右上葉切除術および右中葉部分切除術を施行された.ダブルルーメンチューブ(DLT)を挿管する際,挿入抵抗があった.術中32Fr左用DLTを使用して分離肺換気を行い手術終了後抜管した.術当日は呼吸状態に異常を認めなかったが,術翌日より体動時の喘鳴を認め,術後3日目に高度の声門下狭窄による呼吸不全が進行し再挿管した.DLT挿管による気道損傷は数多く報告されているが,今回われわれは遅発性に声門下狭窄をきたした症例を経験した.DLTと気管支ブロッカーの比較や,抜管後上気道狭窄の評価・治療に関する文献的考察を加えて報告する.</p>
著者
諏訪 邦夫
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.43-50, 1989-01-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
15
著者
森 健次郎 福田 和彦
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.127-137, 1984-04-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
62
著者
高畑 治
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.590-598, 2008-06-15 (Released:2008-08-13)
参考文献数
37

迅速導入での留意点について, 前酸素化の効果, スキサメトニウムやロクロニウムなどの筋弛緩薬使用法, 輪状軟骨圧迫の効果と方法を中心に文献的考察を加えて検討した. 安全で確実な迅速導入施行には, 術前回診での気管挿管困難の予測に加え, 麻酔導入前での十分な酸素化が必須となる. 麻酔導入薬としてはチアミラール, プロポフォールの選択が多いものの, 安定した血行動態を得るには麻薬性鎮痛薬の併用が勧められる. 非脱分極性筋弛緩薬ロクロニウムは迅速導入において有用であるが, スキサメトニウムと同等の作用発現時間を求めると, 使用量が増加し作用が延長することを考慮しなくてはならない.
著者
宮本 純輔 西山 友貴 神田 大輔
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.428-431, 2013 (Released:2013-07-13)
参考文献数
8

腸骨筋膿瘍は敗血症などを合併する危険性があり早期診断が重要である.今回,膿瘍と反対側半身の激痛により診断に難渋した症例を経験した.症例は67歳女性,関節リウマチを有する.発熱と一時的な右臀部痛で発症,項部硬直と左半身激痛で来院した.白血球数20,600/μl,CRP 30.6mg/dlと炎症反応高値を認めたが,尿,髄液,胸部X線,胸腹部骨盤CTで異常所見を認めなかった.入院後1週間,症状の改善を認めず,再度胸腹部骨盤CT検査を行ったところ,右腸骨筋内の陰影を認めた.手術困難部位であったため,抗生剤治療を継続し膿瘍は消失,症状の改善を認めた.本症例は関節リウマチの非定型的症状と考えられる膿瘍と反対側の激しい痛みが出現したため診断に難渋した.
著者
水野 樹
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.925-930, 2010 (Released:2011-02-07)
参考文献数
31
被引用文献数
1

自己血回収装置を用いた術中回収式自己血輸血は,同種血輸血による感染症の伝播や免疫反応,血液型不適合輸血などの合併症の回避目的に,心臓血管外科手術のほか,大量出血の際の整形外科や婦人科手術などで施行されている.産科手術における術中回収式自己血輸血では,羊水中の胎児由来の成分の混入による羊水塞栓症が危惧されている.しかし,帝王切開において白血球除去フィルターを用いた濾過による回収式自己血輸血では胎児由来の成分は除去され,これまで臨床的に羊水塞栓症の報告例はない.産科手術における大量出血に対して,白血球除去フィルターを用いた濾過による術中回収式自己血輸血は救命治療の一手段として期待される.
著者
中田 善規
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.202-208, 2015-03-14 (Released:2015-07-09)
参考文献数
8

手術医療は急性期病院経営管理の要諦であると同時に,医療政策・医療経済上も極めて重要な意味を持つ.その手術医療を経済学的に評価することの意義は非常に大きいが,日本ではほとんど行われていないのが現状である.本稿では手術医療の経済学的評価方法について,データ包絡分析(data envelopment analysis:DEA)や確率的フロンティア分析(stochastic frontier analysis:SFA)を中心としたオペレーションズ・マネジメントの観点から解説する.
著者
中本 達夫
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.780-787, 2014 (Released:2014-10-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1

人工膝関節手術の施行症例数は,わが国においても年々増加の傾向にある.術後鎮痛法としての末梢神経ブロックの有用性については多くの報告があるが,人工膝関節手術には全置換術と単顆型置換術の違い以外にもアプローチ法によって皮膚や筋膜の切開創の違いがあり,最良なブロックの種類や組み合わせは必ずしも一つではない.さらに,リハビリテーションの実施計画によっても術後鎮痛に求められる条件は異なる.持続大腿神経ブロックは良好な鎮痛の反面,大腿四頭筋の筋力低下が問題となりうる.近年,内転筋管ブロックや局所浸潤鎮痛の有用性も報告されており,施設ごとの手術に適したオーダーメイドの術後鎮痛メニューの構築が重要である.
著者
平田 直之
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.352-358, 2016-05-14 (Released:2016-07-07)
参考文献数
30
被引用文献数
1

デスフルランは,血液/ガス分配係数が従来の吸入麻酔薬の中で最も低く,速やかな麻酔作用の発現と早期の覚醒,回復が可能であり,本邦でも広く用いられるようになってきた.高齢患者,肥満患者やさまざまな合併症を有する患者においても,デスフルランの有用性については多くの報告がなされている.一方,デスフルランを含めた吸入麻酔薬は,非生理的化学物質であるがゆえに,各臓器に対する薬理作用を十分に把握した上で使用することが望ましい.本稿では,デスフルランが呼吸,循環,中枢神経,内分泌代謝系,骨格筋へ及ぼす基本的な薬理学的作用を概説し,他の吸入麻酔薬との相違点や使用上の注意点について述べる.
著者
牧野 真太郎 平井 千裕 板倉 敦夫 竹田 省 角倉 弘行
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.226-231, 2017-03-15 (Released:2017-04-21)

当院における産科麻酔チーム設立前後の周産期医療の変化は,予想以上に大きいものであり,医師のみならず助産師にも大きく影響したといえる.その変化は,症例数・産科医の技術・医療体制・カンファレンス・個々の意識という,施設の医療レベルを支える重要なものであった.何よりも,産科と麻酔科の両科の立場からの意見・情報を気軽に求めることが可能になった環境・意識の変化が,内科合併症も多い当院のハイリスク妊婦に対しても,安全な医療を提供できる一番の変化といえる.本稿では,その変化について具体的に述べさせていただく.
著者
加藤 里絵
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.165-172, 2008 (Released:2008-02-16)
参考文献数
12

硬膜外無痛分娩は, 強力な鎮痛効果を提供しながら母体呼吸器系や循環器系への負担を減らし, 胎児への酸素供給量を維持するという大きな利点をもつ. これらの特徴から硬膜外無痛分娩は, 呼吸器疾患, 循環器疾患, 脳血管障害, 筋疾患, 妊娠高血圧症候群などの疾患を合併する産婦に対して良い医学的適応となる. 一方, 硬膜外無痛分娩の合併症には, 低血圧, 硬膜外カテーテルの血管内・くも膜下への迷入, 神経障害, 硬膜外血腫・膿瘍など, 手術室における硬膜外麻酔の一般的な合併症も含まれるが, 無痛分娩に特有の留意点があり注意が必要である. さらに, 硬膜外無痛分娩に特徴的な合併症として, 胎児一過性徐脈, 母体体温上昇があげられる.
著者
高橋 秀則
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.385-392, 2011 (Released:2011-06-28)
参考文献数
7

ペインクリニックの診療に東洋医学を取り入れる傾向は近年ますます強くなっている.東洋医学的治療の中で漢方薬(湯液)と鍼灸治療は2本の大きな柱であり,これらを痛み治療に応用することは古くから行われている.漢方薬の中には病名や症状に対して簡便に処方できる方剤があるが,難治の症例では東洋医学的概念を理解した上で処方しなくてはならない場面も少なくない.一方,鍼灸治療の中にも一定の知識,技術を修得すれば比較的容易に行える治療法もあるが,それらのほとんどは対症療法(標治)であり,より効果的な治療や緩和ケアなど幅広い分野での応用を目指すならば東洋医学的診断(弁証)に基づく治療(論治)は必須である.
著者
内野 博之 長島 史明 小林 賢礼 長倉 知輝 藤田 陽介 荻原 幸彦
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.457-474, 2017-07-15 (Released:2017-08-26)
参考文献数
74
被引用文献数
2

脳保護の主な目的は,術中・術後に脳の機能を保護することである.日々の臨床では,心肺バイパス手術,頚動脈内膜切除術(CEA),くも膜下出血の脳動脈瘤に対するクリッピング,脳卒中,外傷性脳損傷,心停止後症候群(PCAS)等々の管理に対しての注意を要する.われわれの管理が適切でない場合,患者の予後に悪影響を及ぼすことになる.これらの一次的な病態生理の類似性は,一過性の脳虚血を示すことである.神経集中治療の目的は,初期の病態生理に伴う脳損傷の進行を防ぐことである.急性期の脳保護を行うには,①心肺蘇生の後に早急に脳血流を回復することと②脳障害の進行を防ぐことである.心停止から蘇生される患者治療の主な目標は,心停止後症候群(PCAS)の予防である.現在,院外心停止患者や周産期脳虚血に対する低体温療法が神経学的予後を改善するというエビデンスが得られて来ている.本稿では,神経麻酔および神経集中治療における脳保護に焦点を当てて述べるとともに,麻酔薬の神経保護作用および神経毒性作用のメカニズムについても議論したい.
著者
北山 眞任 廣田 和美 佐藤 裕
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.967-973, 2010 (Released:2011-02-07)
参考文献数
22
被引用文献数
2

下腹部手術の術後鎮痛は,IV-PCAなどを用いたオピオイドが一般的であるが,体性痛への不十分な効果と過量による副作用が問題となる.一方,局所麻酔薬治療(神経ブロックなど)の併用により,オピオイド減量と術後鎮痛の質的改善が知られている.近年の超音波ガイド下局所麻酔法の普及は,TAPブロックなど腹壁神経ブロックの効果の確実性を高めた.当施設では開腹手術や腹腔鏡手術などに腹壁の末梢神経ブロックを積極的に使用し,鎮痛効果の改善と術中の筋弛緩を得ている.今後,腹壁ブロックの術後鎮痛と患者満足度を向上させる多面的鎮痛(multimodal analgesia)の一つとしての可能性を検討したい.
著者
森本 昌宏
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.605-612, 2011 (Released:2011-08-15)
参考文献数
21

2010年1月に,フェンタニル貼付薬が非がん性の慢性疼痛に対する適応を取得して以来,本邦でも,非がん性の慢性疼痛への医療用オピオイドの使用についての議論が活発となっている.欧米では,医療用オピオイドに関する多くのエビデンスやガイドラインが発表されており,その中で医療用オピオイドは非がん性の慢性疼痛の第2選択,第3選択薬としての有用性があるとされ,その使用方法が示されている.これにより,医療用オピオイドは非がん性の慢性疼痛に対しても広く使用されているが,副作用や依存性などについての問題が指摘されている.医療用オピオイドは適切な患者に適正に使用することで,慢性疼痛に長期間悩んでいる患者に対する大きな武器となりうるものと考える.この点からは,本邦における医療用オピオイド使用のためのガイドライン・指針の作成が望まれる.
著者
田中 義文
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.447-455, 2015-07-15 (Released:2015-09-18)
参考文献数
3

アイントーベンの時代以来,心室筋の興奮ベクトルが心電計の陽極端子の方向に向くと心電計は+に振れるとの理論が長らく継承されてきた.この理論はR波および平均電気軸の説明に通用しても,STセグメント,T波形成の理論づけには役立たない.本稿で提唱する心電図の統一理論は心内膜側心室筋活動電位より心外膜側心室筋活動電位を引き算することにより体表心電図が発生するというもので,心電計の差動増幅回路の機能を素直に文章に表現しただけのものである.この考え方で活動電位の変化をシミュレートすると,病的心電図の再現はもとより,致死的状況で心外膜側心筋にまで興奮が及ばない墓石様心電図波形まで説明することができる.
著者
奥野 栄太 垣花 学 大城 匡勝 須加原 一博
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.277-280, 2006 (Released:2006-05-26)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

直径5cmを超える巨大肝細胞癌に対しラジオ波焼灼術を施行し, 重症肝不全をきたし術後7日目に死亡した症例を経験した. 症例は, 67歳, 男性. 冠動脈バイパス術後の輸血によるC型肝炎から肝硬変をきたし, 肝細胞癌を発症した. 診断時すでに腫瘍径が5cmを超えており, またChild-Turcotte分類Bの肝機能低下を認めた. 全身麻酔下, 開腹によりラジオ波焼灼術が行われた. 術中の麻酔経過にとくに問題はなかった. 術後より徐々に肝機能が悪化し, 術後7日目に死亡した. 肝機能低下を認める症例にラジオ波焼灼術を施行する場合には, その適応について外科医との間で十分な検討が必要と考えられた.
著者
横山 和子
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.9-15, 1999-01-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
22
被引用文献数
1