- 著者
-
日野 義一
- 出版者
- 日本農業気象学会
- 雑誌
- 農業気象 (ISSN:00218588)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.4, pp.229-234, 1980
東北地方南部太平洋側特有の春季多照条件を効果的に利用する栽培法として, 4月下旬の田植えについて検討して来た。その結果, 従来の田植時期 (5月10日) に比べて, 生育, 収量が向上することがわかったため, 1977, 1978の両年現地実証試験を宮城県内で行なった。<br>両年次の早植時期 (4月下旬) における県内温度分布では, 最高気温は比較的高い14~17℃の範囲であるが, 平均気温は8~12℃, 最低気温は2~6℃の範囲に分布し, この時期には, 低温障害発生危険温度を示す。しかし, 水田水温の推定値からみれば, 最高水温は24~28℃, 平均水温11~15℃, 最低水温3~9℃となって, 最低水温のやや低い地帯があるが, 水田水温全体からみれば, 低温障害の恐れのある地帯は極あて少ないことがわかった。<br>なお, 主な試験地における水田水温 (地表温度) の平均温度はほとんど12℃以上で経過していた。<br>田植日から最高分げつ期までの積算値でみると, 日照時数では両年次で, 早植 (4月20日) は標準植 (5月10日) より約70~100時間多い。気温, 水田水温では両田植日間にあまり大きな差がない。早植はやや少ない気温を示しているが, 水田水温では, 早植が多くなっている。<br>最高分げつ期から出穂期まで間の積算値では, 日照, 気温, 水田水温とも田植日による差は小さい。この間に含まれる梅雨期の影響が大きい。<br>出穂後40日間の積算値では, 日照, 気温, 水田水温とも早植の方が標準値より多く, 登熟期間中の気象は早植の場合に好条件となった。<br>各試験田の初期生育量 (乾物重量) は, 早植ほど増加傾向を示し, さらに4月末までに田植えした場合の収量は両年次とも600kg/10a以上となり, 現地においても早植栽培の効果が確認された。