著者
奥貫 陽子
出版者
東京医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

Vogt-小柳-原田病において、末梢血リンパ球(PBMC)をコンカナバリンA刺激下で培養した際のIL-17産生量が多い患者は、発症時年齢が高く、視力回復に時間を要し、またステロイド薬総投与量が多いことが有意差を持って示された。このためPBMCのIL-17産生が多い患者の予後は低い患者と比較して予後が悪いことが推測され、PBMCのIL-17産生はVogt-小柳-原田病の治療効果を予測するマーカーとなる可能性が見いだされた。
著者
馬原 孝彦 秋元 治朗 羽生 春夫 清水 聰一郎 宮澤 啓介 橋本 孝朗 赫 寛雄 織田 順
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

筋萎縮性側索硬化症脊髄前角細胞での14-3-3白eta isoform発現を確認し、リン酸化TDP43との共局在も確認した。リン酸化TDP-43の細胞質移行と前角神経細胞死関与にeta isoformの関連を指摘。脳梗塞急性期虚血コア周辺神経細胞でのHMGB1の細胞質での局在を確認。新規脳梗塞治療法に寄与できる。対照例29例、アルツハイマー病例84例、パ-キンソン病例8例、DLB例25例の血液中HMGB1濃度をELISA法で測定。順に、5.4, 6.6, 10.7, 8.1ng/mlで有意に増加。オートファジ-関連物質Beclin1の頸動脈病変での発現を確認しオートファジ-の関与を指摘した。
著者
浅岡 章一
出版者
東京医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,覚醒時間延長中におけるエラー後の認知的処理機能に与える夜間の仮眠の影響について検討した.エラー後の認知的処理と関連する事象関連電位(ERN/NeおよびPe)の振幅を,深夜1:00~2:00まで仮眠をとった群と休憩のみをとった群において比較した.深夜に実施した認知課題における反応の正確性は,仮眠をとった群で高くなっていた.しかし, ERN/NeとPeの振幅に対しては仮眠の効果は認められなかった.
著者
持田 澄子
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

強靭なコリン作動性シナプスを構築する培養上頸交感神経節細胞を用いて、1)プレシナプス構築と維持、2)構築されたシナプスの機能化、3)機能化したシナプスの時空間的活性化のメカニズムを解析し、コリン作動性シナプス構築・維持・強化・機能化を担い、シナプス活動に依存してダイナミックに変化するシナプス可塑性を担う蛋白分子の動態を明らかにすることを目的として研究を実施した結果、1)-3)を制御するものは、活動電位発火に伴って流入するCa2+、その濃度変化を感知して機能タンパク質を活性化するCa2+結合タンパク質群、流入するCa2+量を調節するCa2+チャネル制御タンパク質であることが確認された。
著者
藤本 薫 高橋 真理 眞茅 みゆき 宮内 清子 稲次 潤子 大蔵 由美
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、更年期女性の健康行動の促進に向けて、セルフコーチングを基本としたプログラムを作成し、評価を行うことを目的とした。更年期症状を有する45-55歳の女性を対象に、更年期の健康に関する情報およびセルフコーチングを促す記事について、ホームページを作成し、63日間更新した。対照群17名、介入群16名をITT解析した結果、簡略更年期指数、自己効力感、健康関連QOLの得点および平均歩数における介入前後の差の比較では、いずれも有意な差は認められなかった。ホームページを利用した情報提供や行動を振り返るセルフコーチングの働きかけは、一方向となり、効果が得られなかったことが推察された。
著者
伊藤 拓水
出版者
東京医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究で研究代表者は、催奇性を有する抗がん剤サリドマイドがいかなるメカニズムで標的タンパク質セレブロンの機能を阻害するのかを検証した。セレブロンはユビキチンリガーゼとして機能する。研究結果として、サリドマイドはセレブロンの酵素活性を下げるというよりも、認識する基質を変化させることが示唆された。薬剤結合後はサリドマイドがもはや元の基質を認識できなくなることが、結果として機能阻害として検出されていたと考えられる。
著者
田中 孝男
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

ベーチェット病患者血清中の抗網膜自己抗体の一つは抗網膜HSP60抗体である。患者は口腔内に再発するアフタや抜歯を契機に眼発作が起こるため、そこに常在する溶連菌が重要と考えられてきた。Sangius溶連菌HSPに対して特異的なγσT細胞も検出されている。エルシニア、溶連菌,網膜芽細胞腫および網膜のHSP60に対する免疫応答を検討したところ、抗網膜HSP60ならびに抗溶連菌HSP60に対してベーチェット病では著しい抗対価の上昇を示す。また,網膜HSP60をラットに接種すると平均12日目にぶどう膜炎が起り、組織学的に松果体炎を伴いにくい点でS抗原やIRBPによるEAUと相違した。ベーチェット病ではHLA-B51が疾患感受性であるとの報告はある。一方,その炎症はCD4陽性T細胞によるとされるが,それを誘導するHLA classII・自己抗原ペプチド複合体の様子は,今まで自己抗原が明確に同定されていなかった。ベーチェット病の自己抗原は網膜HSP60と考え疾患機序解明や治療法へのフィードバックを目的に本実験を計画した。平成11年度に明らかにした点は,網膜と溶血連鎖球菌S.PyogenesのHSP60がベーチェット病の発症に関わると考え,その性状を分子生物学的に解析した点である。すなわち,S.Pyogenesから抽出したDNAとウシ網膜cDNA libraryを鋳型にHSP60遺伝子領域をpolymerase chain reaction法で増幅し,増幅された断片をDNAシークエンサーにて塩基配列を決定し,アミノ酸の配列を推定した。解析結果をもとにペプチドを合成した。ペプチドを完全Freundのアジュバンドと混和し,ラットに接種して実験的ぶどう膜炎が発症するか否か検討した。その結果,ウシ網膜およびS.Pyogenes HSP60について,約200残基の内部配列を決定した。その結果,両者の配列は47%相同した。主として、ヒトHSP65の245-259番に相当する網膜HSP60と溶連菌HSP60のペプチドで実験的ぶどう膜炎の発症がみられた。網膜とS.PyogenesのHSP60のアミノ酸配列をもとに,ベーチェット病の発症機序を今後も検討することは,意義あると考えた。上記の結果を論文にまとめ,題:網膜及び溶連菌HSP60の分子生物学的検討,筆者,田中ら,日本眼科学会雑誌に投稿し,平成12年1月に同誌に受理された。
著者
藤森 実
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

抗癌剤の全身投与は重得な副作用を有しており、腫瘍選択的治療法の開発が急務である。われわれは固形癌の腫瘍内が正常組織に比べて嫌気的環境であることに着目し、乳酸菌の1種であるラクトバチルス・カゼイを用いて固形腫瘍への集積性と増殖抑制効果を検討した。その結果、偏性嫌気性菌であるKJ686菌は固形腫瘍に特異的に集積し正常組織では排除されていた。KJ686菌は腫瘍選択的デリバリーシステムとして有用であり高い治療効果が期待できる。
著者
長舩 哲齊 長谷 榮二 角田 修次
出版者
東京医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

Euglena細胞は前培養条件を適切に選べば、葉緑体形成の初期暗過程が観察できることを見いだし暗所で起こる現象と、光照射によって初めて誘導される現象とを区別して追究することを可能にした。本報告はこの実験系を用いて、葉緑体形成の初期にみられる光合成酵素RuBisCOおよび光化学系IIのLHCP IIの細胞内局在性を連続切片疫電顕法で経時的に追跡したものである。暗所で継代培養したEuglenaを有機栄養培地中で静置培養すると細胞質内にパラミロンと共に脂質の蓄積がみられる。このような細胞を暗所で無機培地に移しCO_2を通気する。144時間後の細胞に、照度3ftーcの弱光又は強光150ftーcを照射した。弱光条件下で形成されたチラコイド膜は方向性を欠いたカ-リ-型になる。一方、強光条件下では48時間後にピレノイドが葉緑体の中央部に移動し、正常な葉緑体構造が完成された。免疫電顕法により、RuBisCOの細胞局在性を追跡するとRuBisCOは細胞核およびCOS構造、次いでプロピレノイド及びストロ-マに見られた。次に、弱光3ftーcを照射すると、従来の実験系においては弱光条件下では合成されないとされてきたLHCP IIの合成、照度3ftーcでも起こることが免疫電顕法により初めて確かめられた。すなわちLHCP IIは弱光照射2時間後、核およびCOS構造、その後ゴルジ体、次にプラスチドに観察された。その結果、細胞質で合成されたLHCP IIがゴルジ体を経由し、葉緑体に運ばれることを最初に見いだした。