著者
中澤 章 久永 竜一 吉村 浩一
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

正確なシェ-ドマッチングを行い,それを適切に歯科技工士に伝達することは,審美的な歯冠補綴を行うために,極めて重要である。これまでシェ-ドマッチングは歯科医師の主観に頼るところが大きく,客観性に乏しかった。現時点ではシェ-ドガイドを写し込んだスライドを利用するのが臨床的には最も良い方法とされている。しかし現像にかかわる時間的コスト,経済的コストの問題などを考慮すると,さらに検討の余地も残している。マッチングの適否については何の情報も提供していない。そこでデジタルスチルカメラを用いたコンピュータイメージングシステムを開発し、歯科におけるカラーマッチングとカラーコミュニケーションへの活用を検討したところ、以下の結論を得た。1.画像を合成し補綴前後の色と形態をシミュレーションをしたところ、画質、スピード共に優れ、患者、歯科医師、歯科技工士相互のコミュニケーションに有用なことがわかった。2.コンピュータで画像を合成してカラーマッチングしたところ、正答率は85%となり、従来の視感によるカラーマッチングの正答率71%に比べ、有意に有効だった(P<.05)。3.コンピュータ支援の計算によるカラーマッチングの正答率は94%であり、従来の視感によるカラーマッチングに比べ、有意に有効だった(P<.01)。4.デジタルカメラを仮想の色彩計とみなし、選択部分のL^*a^*b^*を算出することにより各シェ-ドとの位置関係が容易に把握でき、補綴物製作時はもとより、製作後の再評価の指針となり得ることがわかった。
著者
音成 貴道
出版者
東京歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

顎顔面領域は、硬組織や軟組織、空気等が存在している。この領域に病変が生じた場合には、硬組織である骨を指標として手術を行っている現状がある。硬組織に生じた病変はCTが有用であり、軟組織に生じた病変はMRIが有用である。これらCTとMRIを同時に表示することが可能であれば、硬組織と軟組織に生じた病変はいずれも診断が用意であろうと考えられる。平成18年度には、Fusion画像が用意に作成できるようにシステムの構築を行い、また良好なMRI画像が撮像可能になるように顎骨専用コイルを購入した。平成19年度には、第20回日本顎関節学会総会・学術大会にて、顎関節部に対する解剖構造と血流によるFusion画像を作成し、学会報告を行った。まず、顎関節部を通常の撮像であるプロトン密度強調画像で撮像を行い、解剖構造の確認を行った。さらに、血管の走行を描出するMRアンギオグラフィの撮像を行った。アンギオグラフィにはTOF法とPC法があるが、頭頸部領域では比較的細い血管が多いため、PC法を用いた。プロトン密度強調画像とPC法アンギオグラフィによるFusion画像を作成し、顎関節部の三次元的な血管の走行を観察した。顎関節外側部では、浅側頭動脈が走行しており下顎枝後方から下顎頭外側に走行するのが確認でいた。顎関節内側部では、顎動脈の分枝が横に走行しており、深側頭動脈に分岐する部位も確認できた。これらの画像は三次元的に任意の方向から観察が可能であるが、発表形式から動画での報告となったが、その後の質問では活発な討論がされ、関心の高さが伺われた。顎関節痛などの痛みの評価や、治癒過程においても新たな診断モダリティとなる可能性があると思われ、疼痛等の臨床情報についても今後検討を続けていく。
著者
松久保 隆 大川 由一 田崎 雅和 高江洲 義矩 山本 秀樹 坂田 三弥
出版者
東京歯科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本研究は、食品の咀嚼性の評価方法や個人の咀嚼性を解析するための指標食品を得ることを目的としている。今期の課題は、平成2年度に得られた結果をふまえて食品咀嚼中の下顎運動解析によって得られる運動速度の各咀嚼サイクルが、食品の咀嚼中の状態変化をとらえることが可能かどうか、各咀嚼サイクルの出現頻度と被験者の咀嚼指数および歯牙接触面積とにどのような関係があるかを検討することを研究目的とした。顎関節に異常がない成人6名を被験者とした。被験食品は、蒲鉾、フランスパン、スルメ、もち、ガムミ-キャンディ-、キャラメル、ニンジンおよびガムベ-スとした。被験食品は一口大とした。下顎運動はサホン・ビジトレナ-MODEL3を用い、前頭面における下顎切歯点の軌跡を記録し、下顎運動速度の各咀嚼サイクルの開口から閉口までを1単位として分解し、パタ-ン分類を行なった。被験者の中心咬合位での歯牙接触面積ならびに石原の咀嚼指数の測定を行なった。下顎運動速度の各咀嚼サイクルは、被験食品で6種のパタ-ンに分類できた。すなわち、Uはキャラメル摂取の最初に認められるパタ-ンでとくに開・閉口時に食品の影響を著しく受けるもの、Vは開・閉口時に速度が遅くなるパタ-ン、Wは閉口時に速度が遅くなるパタ-ン、Yは開口時に速度が遅くなるパタ-ン、Xは人参の摂取初期に認められるパタ-ン、Zは開・閉口時ともに速度に影響がみられないパタ-ンであった。各パタ-ンの出現頻度と咀嚼指数および接触面積との関係を解析した結果、咀嚼性が高いと考えられる人は、硬い食品で、食品の影響をほとんど受けないパタ-ンZおよび閉口時に影響をうけるパタ-ンWが多く、閉口および閉口時に影響を受けているパタ-ンVが少ないと考えられた。このパタ-ン解析は、咀嚼中の食品の物性変化を表わすものとして重要な情報と考えられ、個人の咀嚼能力を示す指標食品の選択にも重要な歯科保健情報の一つと考えられた。
著者
山本 祐介
出版者
東京歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

明らかなマイボーム腺機能不全(meibomian gland dysfunction ; MGD)を有さないが、ドライアイに関する愁訴を有する者19例38眼を対象とし、アイマスク型の温熱マッサージ器「アイマッサー」を1回5分、1日2回、2週間毎日使用させ、自覚症状、涙膜破壊時間などの眼機能の変化、一般所見などを観察した。対象は男性2名、女性17名。平均年齢33.4歳(±6.9歳)。短期間効果:5分間使用し、前後の変化(眼瞼角膜温度、涙液膜破壊時間(BUT)など)を評価した。治療的効果:1日5分使用を1日に2回行い、2週間続けた。結果 BUTは短期間調査、治療的調査ともに著明改善した(P<0.01)。多くの症状が2週間の治療後に改善をみせた。DR-1上、干渉像の変化はないものから、厚みのある油層が観察されるようになる症例まで様々であった。5分間の温熱療法後、上眼瞼温度は1.6℃、角膜温度は1.3℃上昇した(P<0.01)。視力、眼圧、シルマー値に変化は認められなかった。調査した多くの自覚症状項目(瞼の重い感じ(p<0.001)、眼が疲れる、眼が乾燥する、異物感、充血する、不快感がある(以上5項目、p<0.01)、瞬きが多い、めやにが出る、眼がほてった感じがある(以上3項目、p<0.05))で改善が認められた。総合評価でも良好な成績が得られた。また、本試験では併せて眼精疲労に関する愁訴についてもアンケート調査を行ったが、これについても調査した症状の項目の半数以上で改善が認められるなど、良好な成績が得られた。これらのことからアイマッサーはドライアイ及び眼精疲労に関連した愁訴に対して有効であると考えられた。現在、論文執筆中である
著者
松久保 隆 佐藤 亨 小野塚 実 藤田 雅文 石川 達也
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、研究-1:偏位性咀嚼習癖を持つ患者の聴力変化の機構を明らかにするため、コットンロール噛みしめ時の聴性誘発脳磁場(AFEs)を定量的に比較検討すること。研究-2:歯科診療所に来院した患者の偏咀嚼と聴力値との関連性を疫学的に検討すること、である。本年度に得られた新しい知見は、研究-1:申請者らの開発した最大咬合圧の40%以下までのコットンロール噛みしめの条件でAFEs測定を行う方法を用いて研究1を行い、以下の結果を得た。噛みしめ時のAEFs応答は、左右側音刺激に対するAEFs応答はすべての被験者で低下しており、特に噛みしめ側と同じ聴覚野の応答に有意な差が認められた。噛みしめが聴覚野応答を低下させる理由として1)顎関節の偏位による形態的変化、2)中耳および内耳の神経支配への影響、あるいは3)gate controlによる中枢での抑制が考察された。本研究は、コットンロール噛みしめが、聴覚誘発磁場に影響を与えていることを客観的に示すものである。また、本研究に用いた方法は、噛みしめの聴覚応答をはじめとする体性感覚に影響を与えていることを実験的に検討する方法として有用であることを示している。研究2:オージオグラムの咬合咀嚼機能の動的評価への応用について20症例による検討を行った。すなわち、プレスケールおよびシロナソアナライジングシステムによる咬合咀嚼機能の評価にオージオグラムを加えることの有効性を評価しました。その結果、質問紙調査、口腔内診査、プレスケール、咀嚼運動ならびに作業用模型による分析にオージオグラムの周波数別の聴力低下パターン評価を組み合わせることにより、咬合咀嚼運動のより正確な動的評価が可能であることが示された。
著者
加藤 哲男 君塚 隆太 岡田 あゆみ
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

歯周病は口腔の主要な感染症であり、その原因となっているのは口腔内バイオフィルムであるデンタル・プラーク中に存在する細菌である。本研究は、歯周病原性バイオフィルムの形成に関わる因子について解析するとともに、その形成を抑制あるいはバイオフィルム細菌に対して抗菌性を発揮するような機能性タンパク質について検索した。培養細胞やマウスを用いて、シスタチンやガレクチンなどの機能性タンパク質のバイオフィルム形成抑制作用や内毒素活性抑制作用などを解明した。