著者
本間 勝
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済体制学会会報 (ISSN:18839797)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.13-23, 2000-01-30 (Released:2009-07-31)

社会主義時代の金融は、もともと計画システムの一部であった。金融機関は国営で、機能別にごく少数の機関に集約化され、これが政策目的に基づいて資金の調達や運用を行った。市場経済の基準で見ると、その業務の実態は金融というよりは財政の範疇に属する性格のものであった。金融システムの中核は銀行で、他には保険制度があったが、金融商品やサービスは極めて基本的なものに限定され、有価証券、証券市場、機関投資家、ノンバンクなどは殆ど或いは全く存在しなかった。80年代後半から90年代を通じて、市場経済移行政策の一環として多くの国で金融システム改革が試みられた。これは、経済・社会の資金循環を国からの指令ではなく、市場原理に基づいて運営することを目指したものであり、改革の柱は、(1)金融機関の種類と数を増やし、(2)業務規制を緩和して、経営の自由度を高め、(3)各種金融市場を設立するとともに、(4)民間資金や外資を導入し、(5)国営金融機関については民営化を図っていく、というものであった。金融改革は、市場経済移行の混乱期に行われたため、予想を遙に上回る困難に直面し、金融機能は多くの国で萎縮したが、中欧・バルト諸国の一部には、市場型の金融システムが定着し始めている。以下では、銀行、保険、証券、国際金融について改革と現状の概要を述べることとする。