著者
日臺 健雄
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1_19-1_31, 2015 (Released:2015-01-27)
参考文献数
36

近年,ロシアや中国など新興国の経済発展を「国家資本主義」概念を用いて分析する研究が増加しているが,そこでは理論的な検討が不十分なままに当該概念が用いられる傾向にある.本稿では「国家資本主義」概念について,経済理論として初めて用いたヒルファディングから,革命後のロシアに適用したレーニンを経て,発展途上国に適用した日本の「国家資本主義論」学派に至る理論的な系譜を,学説史的な観点から概観していく.
著者
吉井 昌彦
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済体制学会会報 (ISSN:18839797)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.25-30, 1999-03-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
8
被引用文献数
1
著者
ジェラール・ロラン
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.2_1-2_21, 2019

<p>本稿は,古代の時代から2つの異なる種類の制度システムが存在していたことを示す証拠を提示する.1つは,古代中国,古代エジプト,インカ帝国などの領域国家に存在した中央集権的計画システムに似た制度システムである.もう1つは,地中海諸国だけでなく世界中の都市国家に存在し,私的所有権が保護された,強い市場制度をもつシステムである.本稿では,このような異なる制度クラスターが古代から存在したことを示す新しいデータベースを概観し,それらの関係について分析する.</p>
著者
長友 謙治
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.2_23-2_35, 2016 (Released:2016-06-28)
参考文献数
28

ロシアの農業生産は,1990年代の市場経済移行期に劇的に縮小したが,2000年代以降回復が進んだ.回復の中心となった自然条件や地理的条件に恵まれた地域では,農業組織の法人形態の農業生産協同組合から有限責任会社や株式会社への転換と,農業投資の拡大が同時並行的に進んでいた.こうした現象が生じたのは,その背後で,アグロホールディングに代表されるような,企業家による農業組織の所有と経営の集中が進行していたためと考えられる.
著者
山田 大地
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1_49-1_65, 2019 (Released:2019-03-08)
参考文献数
43

本研究は,タジキスタンにおける親の出稼ぎ労働移民が子供の教育投資に与える効果を,実証的に分析する.労働移民は所得向上を通して教育投資を促進しうる一方,教育投資を抑制する様々な副次的な効果も持ちうる.分析結果は,移民の内生性を考慮した上で,親の労働移民が女子の後期中等教育就学を抑制する一方,男子に対しては影響を持たないことを示した.このことは労働移民送出が教育の男女間格差を広げていることを示唆する.
著者
トラン・ヴァン トウ
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.1_15-1_30, 2012 (Released:2012-03-06)
参考文献数
17

本論文は,経済発展段階と制度変化との関係についての作業仮説の下でベトナムの経済発展と市場経済体制への移行過程を分析し,現段階の特徴を明らかにしたものである.漸進主義的移行戦略でベトナムは低位の中所得国へ発展できたが,社会主義経済システムの制度的基盤である一党制支配体制と国家的所有の維持は権力主導型経済体制を作り上げ,今後持続的発展のための高品質の制度の整備を妨げる可能性が高い.ベトナムはそのような「中所得国の罠」を回避し,持続的に発展していくために権力主導型経済体制を脱皮しなければならない.
著者
田畑 伸一郎
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1_27-1_39, 2020 (Released:2020-02-05)
参考文献数
32
被引用文献数
1

ロシア経済の発展を考えるために,その強さと弱さを考察した.強さとしては,豊富な資源,石油・ガスのレントを中央に確保する財政制度,地域との関係における強固な中央集権制度の3点,弱さとしては,オランダ病による製造業の不振,低い投資率,不十分な対外経済開放の3点を指摘した.強さも弱さも豊富な資源に起因するものであることから,近い将来に成長率を3%以上にまで引き上げるのはなかなか難しいという結論を述べた.
著者
岡崎 拓
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.2_37-2_49, 2016 (Released:2016-06-28)
参考文献数
37

長い歴史を持つポーランドの自動車産業は,政府による産業育成への取り組みと,イタリア・FIAT社との結びつきを中心とした国内生産体制の確立という発展経路をとった.しかし,体制移行期以後のFIATの不振,大宇FSOの倒産による外的ショックは,ポーランド自動車産業の発展経路からの脱経路を導いた.結果として,現在のポーランドは中欧,また欧州内でのエンジンを中心とする部品供給基地という新たな役割を持つに至っている.
著者
佐藤 隆広 福味 敦
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1_17-1_29, 2019 (Released:2019-03-08)
参考文献数
20

本研究は,石油価格の上昇がもたらすマクロ経済への影響を,石油輸出国であるロシアと石油輸入国である中国とインドのユーラシア地域大国3カ国で定量的に比較した.ベクトル自己回帰(VAR)モデルを用いた分析結果によると,石油価格ショックと石油への投機的需要ショックの2つのケースで,中国とロシアで対照的な結果が得られた.すなわち,中国ではこれらのショックは物価を高めるのに対して,ロシアでは生産を拡大させる.また,世界景気のプラスのショックを意味する石油需要ショックは,中国においてもロシアにおいても生産を拡大させる.ロシアでは,それはさらに物価も高める.これに対して,インドでは石油ショックについて統計的に有意な結果が得られなかった.