著者
家田 修 佐々木 隆生 仙石 学 池本 修一 渡邊 昭子 中島 崇文 中澤 達哉 石田 信一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究では環境問題をも含めて公共財としてとらえ、総合地球環境学研究所との連携により、文理協働型の議論を行った。この結果、従来の政治共同体を基にした地域設定による圏域の設定を超えて、環境に基づく圏域(環境広域公共圏)が現在問題になりつつあることが本研究の成果として明らかになった。また住民へのアンケート調査の結果として、想定していたよりも人々の社会的な流動性は高くなく、地域コミュニティの役割が以前よりも重要になっていることが新たな知見として判明した。
著者
家田 修
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.1-13,99, 2004-06-30 (Released:2009-07-31)

本稿はハンガリーの地位法を事例として,第一に,移行経済を語る出発点は社会主義体制ではなく,そこからさらに時代を遡る必要がある(連続的な未完の体制移行),第二に,自由競争など経済的合理主義を社会的に受容する過程は進んでおらず,市場経済体制に対する内発的な信頼感は醸成されていない。むしろ政治が経済的合理主義の行き過ぎを制御すべきだという価値基準が強化されている(経済に対する政治の優位),この二点を論述した。
著者
大津留 厚 柴 理子 桐生 裕子 野村 真理 家田 修 篠原 琢 佐藤 雪野 馬場 優 柴 宜弘 辻河 典子 森下 嘉之 飯尾 唯紀 村上 亮 ボシティアン ベルタラニチュ 米岡 大輔
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

1939年9月4日、アメリカ合衆国の週刊誌『タイム』はその前の週の9月1日にドイツ軍がポーランドに侵攻したのを受けて、「第二次世界大戦が始まった」と報じた。この時、「その前の戦争」が第一次世界大戦の名を与えられることになったと言える。その意味での第一次世界大戦が始まるきっかけになったのは、ハプスブルク家を君主とする諸領邦が最終的に名乗ったオーストリア=ハンガリーが、隣国セルビアに対して、ハプスブルク君主の継承者の暗殺の責を問うて宣戦を布告したことにあった。そしてその戦争を終えるための講和会議が開かれた時、すでにこの国は講和会議に代表される存在であることを止めていた。したがってこの戦争はこの国にとっては「最後の戦争」に他ならなかった。1914年からあるいはその前から始まった、ヨーロッパを主な戦場とする戦争を何と呼ぶのか、これがそれから100年経ったときに問われている。そして呼び方の問題はその戦争の継続した期間の捉え方と関係し、またその後の世界の把握の方法とも関係している。本科研ではセルビア共和国の代表的な現代史研究者ミラン・リストヴィッチ教授を招き、また研究代表者がウィーンで開催された1918年の持つ意味を再考するシンポジウムに参加して国際的な研究動向を踏まえながら、分担者がそれぞれ研究を進めてきた。その成果は2019年5月に静岡大学で開催される西洋史学会の小シンポジウムで発表されることになる。そこでは研究代表者が趣旨説明を行い、「国境の画定」、「制度的連続性と断絶」、「アイデンティティの変容」それぞれの班から報告が行われる。
著者
家田 修 林 忠行 松里 公孝 月村 太郎 仙石 学
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究では東欧(旧ソ連のロシア以外のヨーロッパ部分を含む)地域社会全般を射程に入れ、EU統合が及ぼす影響、そして逆にEU拡大がEUに与える影響について包括的な研究を組織した。その中でハンガリー地位法制定を契機として全欧州的な問題となった主権国家論争を取り上げ、欧州統合における主権国家と国民、そして少数民族問題という具体的な論題を巡る国際会議を、本研究計画の総決算という意味を込めて、2004年10月にハンガリーのブダペストで開催した。この会議には日欧米だけでなく、インドやトルコを含む世界12カ国から研究者が参集し、さらに欧州で民族問題を担当する実務専門家も招聘して議論を深めた。この会議は東欧の少数民族問題を理論的、包括的かつ具体的に論ずる貴重な機会であったため、OSCEなどの全欧州的な国際組織から多くの傍聴者が参集し、ハンガリーのマスメディアも大きく取り上げた。この会議では東欧における冷戦後の地域社会形成が国民形成、国家建設、少数民族共同体形成の三位一体として進行したこと、そして問題解決のためには従来のEU統合の枠を越えた新たな市民権概念(fuzzy citizenshipなど)、あるいは柔軟な国境という考え方(flexible border controlなど)、さらにはネオ・ミディーバリズムなどの複合的アイデンティティが必要とされる、などの具体的かつ新たな知見が示された。こうした国際的共同研究の成果の一部は既に本研究代表者を編著者とする英文著書The Hungarian Status Law : Nation building and/or Minority Protection, SRC, Hokkaido University, Slavic Eurasian Studies Series, No.4, 2004として刊行され、さらにThe Status Law Syndrome in Post-communist Eastern Europe, SRC, Hokkaido University, Slavic Eurasian Studies Series, 2005として新たな知見が国際的に発信される予定である。