著者
植田 睦之
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.S19-S22, 2013 (Released:2013-08-30)
参考文献数
10

シジュウカラは主要な捕食者であるツミが繁殖してる林では,飛行形態がツミと似ているキジバトに対して,警戒声を発する頻度がツミの繁殖していない林と比べて高かった.シジュウカラはツミの繁殖している危険度の高い場所では警戒度合を高めていて,キジバトに対しても反応することで,捕食のリスクを低めており,危険度の低い場所では,警戒度合を下げることで警戒のコストを下げておいるのだと考えられた.
著者
高橋 雅雄 宮 彰男 上田 秀雄
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.S15-S18, 2011 (Released:2011-11-16)
参考文献数
14

2011年7月11日に,青森県仏沼湿原にてリュウキュウヨシゴイの声を録音した.本種は日本では主に琉球列島に生息する留鳥であり,本州においては関東甲信越から中国地方において数例の観察記録があるだけである.本報告は,東北地方におけるリュウキュウヨシゴイの初記録である.
著者
三上 修 植田 睦之 森本 元 笠原 里恵 松井 晋 上田 恵介
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.A1-A12, 2011 (Released:2011-05-20)
参考文献数
12
被引用文献数
2

近年,日本国内においてスズメ Passer montanus の個体数が減少していると言われている.その原因はわかっていないが,熊本で行なわれた先行研究では,都市部では農村部とくらべて1つがいが連れている巣立ち後のヒナ数が少なく,都市化にともなう何らかの要因がスズメの減少をもたらしている可能が示唆されている.しかし,この研究は狭い地域で行なわれたものであり,それが本当に日本全体でも起きているかはわからない.そこで2010年にこの研究と同じく,巣立ち後のヒナ数を調べる調査を「子雀ウォッチ」と銘打ち,一般市民に協力してもらう形で全国規模で行なった.その結果,全国から406の記録が集まり,それを解析したところ,巣立ち後の平均ヒナ数は,商業地で1.41羽,住宅地で1.81羽,農村では,2.13羽と,商業地,住宅地,農村の順で多くなった.この結果は前述の先行研究の結果と整合性があり,やはり都市化と関連している何らかの要因が全国規模でスズメの減少要因になっていると考えられる.この子雀ウォッチを今後もつづけ,記録を蓄積することで,スズメの減少要因の解明につながると期待できる.
著者
嶋田 哲郎
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.6, pp.S7-S11, 2010

秋田県北部(小友沼,八郎潟),福島潟,化女沼という国内を代表するヒシクイ <i>Anser fabalis</i> の大規模飛来地で,2008年12月19日,2009年 1月 9日,23日におけるヒシクイの個体数を調べた.12月19日から 1月 9日にかけて福島潟,化女沼で個体数が減少し,秋田県北部で個体数が増加した後,1月23日には秋田県北部での個体数が減少した一方で,福島潟,化女沼それぞれで再び個体数が増加した.1月中下旬,能代の平均気温は0.1~0.5℃であり,降雪量は66~79cmであった.降雪量の増加にともなう採食条件の悪化によってヒシクイは秋田県北部から南下したと考えられる.
著者
平野 敏明
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.A35-A46, 2006 (Released:2006-12-25)
参考文献数
14
被引用文献数
2

2005年 5月中旬から 8月下旬,2006年 4月中旬から 8月下旬にかけて,栃木県藤岡町から小山市の渡良瀬遊水地で,カセットテープレコーダーから鳴声を再生してクイナとヒクイナの繁殖期における生息分布,個体数,生息環境の調査を行なった.2005年には110地点,2006年には140地点で鳴声再生を実施した結果,クイナおよびヒクイナの生息が2005年には20地点と 2地点,2006年には16地点と 2地点でそれぞれ確認された.しかし,同一個体の可能性のあるものを除くとクイナは2005年が12羽,2006年が10羽,ヒクイナは2005年,2006年とも 1羽と推定された.クイナおよびヒクイナが生息していた場所は,20cm以下の深さで地表に水があるヨシやスゲ類が繁茂する環境で,下層植物のない乾燥したヨシ原ではまったく記録されなかった.渡良瀬遊水地におけるこれら 2種の生息分布は,著しく限られていた.これは,渡良瀬遊水地の多くが,乾燥したヨシなどの高茎草原からなっていることが理由の 1つと考えられた.クイナ類など湿地性鳥類の良好な生息地を創出するために,人為的な掘削などによる湿地性環境の再生が必要と考えられる.
著者
菊地 正太郎 佐野 清貴
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.3, pp.S7-S10, 2007

主な生息地が沖縄県の石垣島と西表島の 2島に限られているカンムリワシを,その間に位置する竹富島で2005年 1月に観察した.羽衣の状態から前年生まれの幼鳥であると判断した.石垣島か西表島から飛来した迷鳥であると考えられた.
著者
平野 敏明
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.1, pp.A25-A32, 2005

2004年 4月から 7月に栃木県宇都宮市において,セキレイ属 3種(セグロセキレイ,ハクセキレイ,キセキレイ)の生息分布と生息環境を比較するために,1984年に行なわれた調査(平野 1985)と同じ場所,同じ方法で調査を行なった.調査地は1984年と同様に500×500mの方形区545個に分けられた.各方形区を優占する環境をもとに建物密集地,住宅地,農耕地,大河川,工業団地,丘陵の 6つに分けると,1984年と比較して建物密集地と住宅地の方形区は増加したが,農耕地と丘陵の方形区は減少していた.セグロセキレイの生息分布とその環境は,1984年と比較して,有意な変化はみられなかった.しかし,ハクセキレイは生息分布と生息環境ともに著しく変化した.すなわち,2004年には1984年にほとんど記録されなかった農耕地や大河川に分布を拡大していた.そのため,セグロセキレイとハクセキレイのあいだに,生息環境に有意な違いはなくなった.このようなハクセキレイの生息分布の変化の原因の 1つとして,調査地の都市化による営巣場所の増加が考えられた.なお,キセキレイでは,生息環境に変化はなかったが,分布は有意に縮小した.
著者
平野 敏明
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.A25-A32, 2005 (Released:2005-11-10)
参考文献数
8

2004年 4月から 7月に栃木県宇都宮市において,セキレイ属 3種(セグロセキレイ,ハクセキレイ,キセキレイ)の生息分布と生息環境を比較するために,1984年に行なわれた調査(平野 1985)と同じ場所,同じ方法で調査を行なった.調査地は1984年と同様に500×500mの方形区545個に分けられた.各方形区を優占する環境をもとに建物密集地,住宅地,農耕地,大河川,工業団地,丘陵の 6つに分けると,1984年と比較して建物密集地と住宅地の方形区は増加したが,農耕地と丘陵の方形区は減少していた.セグロセキレイの生息分布とその環境は,1984年と比較して,有意な変化はみられなかった.しかし,ハクセキレイは生息分布と生息環境ともに著しく変化した.すなわち,2004年には1984年にほとんど記録されなかった農耕地や大河川に分布を拡大していた.そのため,セグロセキレイとハクセキレイのあいだに,生息環境に有意な違いはなくなった.このようなハクセキレイの生息分布の変化の原因の 1つとして,調査地の都市化による営巣場所の増加が考えられた.なお,キセキレイでは,生息環境に変化はなかったが,分布は有意に縮小した.
著者
植田 睦之
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.S1-S4, 2012 (Released:2012-04-12)
参考文献数
11

2008年から2010年の3月に北海道小平町において,春期に北へ向かって渡るハシブトガラスとハシボソガラスの飛行位置と個体数,風向を記録した.東よりの風が吹いているときにはカラス類は内陸を渡ることが多く,西よりと北の風の吹いているときには海岸段丘沿いを渡ることが多かった.調査地では西よりの風が吹くと海岸段丘により斜面上昇風が起きる.カラス類はこの斜面上昇風を利用して,渡っていることが示唆される.
著者
植田 睦之 福田 佳弘
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.S21-S26, 2010 (Released:2010-09-13)
参考文献数
5
被引用文献数
4

北海道西部の日本海沿岸において,オジロワシとオオワシの飛行頻度に影響する気象要因を明らかにするために調査を行なった.解析した気象要素は,気圧,気温,降水量,風速,日照量および,風速の西ベクトル(西方向の風の強さ)と北ベクトル(北方向の風の強さ)で,これらとワシ類の飛行頻度とを比較した.その結果,西方向の風の強さがオジロワシ,オオワシの出現頻度に影響していた.調査地では西方向の風が吹くと海岸段丘による斜面上昇風が生じると考えられ,そのため西方向の風が強いとワシ類の出現頻度が高くなるのだと考えられる.
著者
渡辺 美郎 平野 敏明
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.A45-A55, 2011 (Released:2011-09-11)
参考文献数
16
被引用文献数
1

繁殖期と冬期のヒクイナ Porzana fusca の生息個体数を調査するために,兵庫県神戸市付近の約43.75km2内の河川や溜池,農地で2009年1月から6月に録音再生法をもちいて調査を行なった.冬期には, 190地点で鳴き声再生した結果,合計76羽(1月)と66羽(2月)のヒクイナが記録された.環境区分ごとの1月と2月の調査地点あたりの個体数は,中規模河川(N=55)が0.62羽と0.62羽,小規模河川(N=49)が0.18羽と0.29羽,池(N=78)が0.41羽と0.23羽,農地(N=7)が0.14羽と0.29羽であった.一方,繁殖期には,合計169地点で調査を行ない,合計81羽(5月)と45羽(6月)が記録された.環境区分ごとの5月と6月の調査地点あたりの個体数は,中規模河川(N=48)が0.79羽と0.46羽,小規模河川(N=49)が0.31羽と0.18羽,池(N=65)が0.38羽と0.17羽,農地(N=7)が0.38羽と0.38羽であった.農地を除く3環境区分の個体数は,冬期および繁殖期とも有意に異なっており,中規模河川がもっとも多く記録された.池の調査地における生息の有無と池の面積および池内の湿地性植物の面積を比較した.ヒクイナの生息が確認された池の面積(±SD)は,2.87±3.62ha(冬期)と2.69±3.20ha(繁殖期),生息が確認されなかった池は2.89±2.72ha(冬期)と3.16±3.16ha(繁殖期)で,両者の間には有意な違いは得られなかった.しかし,ヒクイナが生息していた池の湿地性植物の面積は,0.27±0.21ha(冬期)と0.28±0.22ha(繁殖期)で,生息していなかった池より湿地性植物の面積が有意に広かった.このことから,ヒクイナの生息には湿地性植物の面積が重要であることがわかった.調査地で,越冬期と繁殖期に70羽以上のヒクイナが記録されたのは,調査地には溜池が多くあることで,良好な生息環境が多く存在することが一因になっていると考えられる.
著者
籠島 恵介
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.7, pp.S1-S4, 2011

沖縄本島において,メジロ <i>Zosterops japonica</i> が沖縄原産の植物ノアサガオ <i>Ipomoe indica</i> の花に対して盗蜜を行なうのを観察し,その盗蜜痕を撮影した.今までメジロによる盗蜜の記録のある花はすべて移入種であったのに対し,日本原産種に対して盗蜜が行なわれていたことは,メジロが沖縄島において,古くから盗蜜を行なってきた可能性を示す.また,同属で移入種のモミジヒルガオ <i>I. cairica</i> については,盗蜜行動の連続写真により,その詳細を記録した.ノアサガオへの盗蜜痕と思われるものは8回の調査のうち5回で観察され,323個の花のうち,最大被害率41.18%,平均被害率6.19%であった.モミジヒルガオでは,8回の調査のうち2回観察され,264個の花のうち,最大被害率31.03%,平均被害率5.68%であった.
著者
西 教生 高瀬 裕美
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.4, pp.S1-S8, 2008

2007年 5月中旬から10月中旬にかけて,山梨県都留市においてハシボソガラスおよびハシブトガラスの成鳥の風切羽,尾羽の換羽の調査を行なった.踏査によって落ちている風切羽および尾羽を採集し,定点観察によって飛翔中の個体の風切羽および尾羽の換羽状態を記録した.ハシボソガラスおよびハシブトガラスとも初列風切羽の最も内側の第 1羽から外に向かって換羽を開始し,第 5~第 6羽まで進むと次列風切羽は最も外側の第 1羽から内側に向かって換羽を開始した.ハシボソガラスは 5月下旬から,ハシブトガラスは 6月上旬から風切羽の換羽を開始し,ハシボソガラスは 9月上旬から中旬に,ハシブトガラスは 9月下旬から10月上旬に終了した.尾羽の換羽は初列風切羽の第 4羽が換羽をすると開始され,中央尾羽から外側に向かって換羽を行なった.
著者
植田 睦之
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.3, pp.A11-A18, 2007

環境省が行なった「ガンカモ科鳥類の生息調査」の結果と気象庁による積雪の深さと最低気温の記録をもちいて北海道,東北地方,中部地方日本海側で越冬するハクチョウ類とカモ類の越冬数におよぼす積雪や気温の影響について解析した.北海道のカモ類を除き,ハクチョウ類もカモ類も年々記録数が増加する傾向があった.気象要因については,東北および中部地方の日本海側の地域では,ハクチョウ類は気温の,カモ類は積雪の影響を強く受けることがわかった.気温は開水面の凍結を通してねぐらや休息地の状況に影響を与え,積雪は水田などの採食地での食物の採りやすさに影響を与えると考えられる.したがって,ハクチョウ類は給餌への依存度が高く,止水域をおもな生息地としているために気温の影響を強く受け,カモ類は,水田などが重要な採食地になっているので,積雪による影響を強く受けると考えられる.
著者
渡辺 朝一
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.5, pp.S11-S15, 2009

越冬期前半の2004年12月11日と,越冬期の後半の2005年 2月26日に,越後平野水田において,コハクチョウが水田面と畦畔をどのように利用しているかを調査した.その結果,コハクチョウは採食地として,越冬期の前半も後半も水田面を選好している可能性が示された.
著者
黒沢 令子 長谷川 理 泉 洋江 越川 重治
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.3, pp.A19-A25, 2007
被引用文献数
1

2006年初頭に北海道の中央地域でスズメが大量死し,個体数が減少した.そこで市民が気軽に参加できるような簡易定点調査法により,その後のスズメの個体群動態のモニタリングを開始した.積雪地域(北海道など)と雪のない地域(関東地方)の違いや季節および,餌やりの影響を比べたところ,スズメの出現数は平均3.6~3.8羽(0.78ha)で,両地域に差はなかった.季節別にみても夏と冬ともに平均3.6羽で差はなかった.一方,北海道の同一地点において,季節別に冬期の餌やりの交互作用をみると,冬期に餌やりのある地点では,冬期のスズメの数が有意に多く,餌やりのある場所にはスズメが集中することが裏付けられた.このような状態は感染症が発生した場合には水平感染が起きやすくなるので,2005/06年のような大量死を引き起こす要因になりうる.それを避けるためには,餌やりは最小限にして過密状態を避け,餌台の衛生管理の徹底を呼びかける必要があるだろう.市民参加による調査は,簡便さが要求される一方,精度にバラつきが生じやすいことと,さらに検討できる要因を増やすために調査地点数を増やすことが課題である.スズメのような身近な鳥は,人間の近くに住むので,環境の健全性を見守る指標として利用できることから,学校や自然教育における応用が期待される.
著者
水田 拓
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.3, pp.T21-T28, 2007

マダガスカル共和国アンカラファンツィカ国立公園において,2004年と2005年に温度データロガーを用いてマダガスカルサンコウチョウの巣の捕食者と捕食時間帯の特定を試みた.温度データロガーの設置と並行してビデオカメラによる捕食現場の撮影を行なった結果,ブラウンキツネザル,シロハラハイタカ,ゴノメアリノハハヘビの 3種の捕食者が特定された.ブラウンキツネザルとシロハラハイタカは夕方に,ゴノメアリノハハヘビは夜間に巣の卵やヒナを補食していた.巣の内部の測定温度は,これらの種による捕食の後急激に低下していた.ブラウンキツネザルによる捕食では,親が捕食の40分以上前から巣外に出ていたため温度変化は他と少し異なっていたが,温度変化から捕食者の種を特定することはできなかった.巣の捕食は夜間,早朝,夕方に多かったが,抱卵期と育雛期で捕食時間帯に違いは見られなかった.本研究により,捕食時間帯を特定するための温度データロガーを使用することは有効であることが示唆された.