著者
稲垣 幸司 大島 康成 鈴木 秀人 藤城 治義 柳楽 たまき 吉成 伸夫 橋本 雅範 瀧川 融 小澤 晃 野口 俊英
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.220-225, 1996-06-28
被引用文献数
13 4

骨粗鬆症と歯周病の関係を把握する一助として,閉経後女性骨粗鬆症患者の口腔内所見,特に歯周病所見を調査した。対象は,骨粗鬆症のために通院中の女性患者35名(以下O群,腰椎骨密度測定者18名,橈骨骨密度測定者17名,63.0±1.5歳,以下平均±標準誤差)である。また,愛知学院大学歯学部附属病院歯周病科でランダムに選択した平成7年来院の骨粗鬆症を有さない60歳代歯周病女性患者20名(以下P群,63.6±0.6歳)の口腔内所見と比較した。骨密度は,二重エネルギーX線吸収法により測定した。O群の身体所見は正常であったが,骨密度は,平均で若年期標準値の60.5±1.3%に低下していた。しかし,両群の骨密度と歯周病所見との間に有意な相関は認められなかった。現在歯数と処置歯率の平均は,それぞれO群23.0±1.3歳,60.0±4.1%,P群22.6±1.5歯,53.2±6.2%で,ほぼ同一であった。一方,歯周病罹患歯率(4mm以上のPDをもつ歯の割合)とプロービング時の歯肉出血率(BOP率)は,それぞれO群46.2±6.3%,37.5±4.2%,P群39.6±6.3%,24.6±4.4%で,O群がやや悪化傾向を示した。従って,高度な骨粗鬆症患者では,歯周病が進行していることが示唆されたが,今後さらに対象症例を増やして詳細に検討する必要がある。
著者
戸田 郁夫 加藤 〓 田西 和伸 樋口 幸男 平中 良治 浅野 元広 坂上 竜資 川浪 雅光
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.1146-1152, 1989-12-28
被引用文献数
11

本研究の目的は,夜間睡眠中のbruxismの実態を解明するために,日常臨床に応用できる客観的なbruxismの診査・診断するシステムを開発することである。本システムは記録装置と再生分析装置とからなり,記録装置は,筋電計・加速度計・小型マイクを組み合わせ,左右の咬筋の筋活動・上下の歯の咬合接触・grinding音を同時に記録できるように設計した。被験者には25〜50歳の男性6名を選び,本装置の操作方法を指導し,自宅に装置を持ち帰り,各々5日間繰り返し測定を行った。その結果,このシステムにより,自宅で夜間睡眠中の筋活動・咬合接触・grinding音を同時記録できることが分かり,歯周病患者のbruxismの実態の解明や客観的診断に役立つと思われた。
著者
松本 敦至 伊藤 豊 齋藤 彰 川浪 雅光 加藤 〓 久保木 芳徳
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.149-161, 1994-03-28
被引用文献数
14 1

第1報で,Bone morphogenetic protein(BMP)の担体として強化コラーゲン線維膜(FCM)が有効であることを報告した。しかし,FCMは吸湿すると強度が低下し,操作が難しいという欠点があったため,この点を改良した強化コラーゲン線維膜第3号(FCM3)を新たに開発した。まず,FCM3のBMP担体としての有効性について検討する目的で,成体ラットの背部皮下と口蓋部骨膜下に移植した結果,背部皮下で異所性骨形成が,口蓋部骨膜下で母床骨に連続し,隆起した骨形成が観察された。次に,BMP配合FCM3が歯周組織再生に及ぼす影響について検討する目的で,成体ラットの人工的歯槽骨欠損に移植した結果,移植してない群に比べて早期(1週)から骨芽細胞様細胞の増殖が見られ,3週では移植材をとり囲むように骨が新生し,6週では移植していない群に比べて歯槽骨頂が高く,幅も広い傾向が見られた。このことから,BMP配合FCM3は歯周組織の再建に有効である可能性が示唆された。
著者
上田 雅俊 山岡 昭 前田 勝正 青野 正男 鈴木 基之 長谷川 紘司 宮田 裕之 鴨井 久一 楠 公仁 池田 克巳
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.223-235, 1988-03-28
被引用文献数
11 1

塩酸ミノサイクリン(MINO)を2% (力価)含有する歯周炎局所治療剤(LS-007)を歯周ポケットに1週間隔で4回連続して投与する群と,2週間隔で3回連続して投与する群の二群に分け,46名の歯周炎患者に投与し,その臨床的有効性,安全性,有用性ならびに細菌学的効果を検討した。その結果,両群ともに歯肉炎指数,ポケットの深さなどの臨床症状がLS-007投与後に有意な改善を示すのと同時に,歯周ポケット内に生息するB. gingivalisをはじめとした歯周病原性細菌であるとされているものを効果的に消失せしめた。また,安全性では軽度の不快感が1例に認められたのみであった。一方,それらの細菌に対するMINOおよび他の抗生物質のMICを測定した結果,MINOは他剤よりも強く幅広い抗菌性を有することを認めた。以上の結果より,LS-007は歯周炎治療において臨床的ならびに細菌学的に有効かつ安全で有用性の高い製剤であることが確認できた。