著者
土屋 誠司 鈴木 基之 任 福継 渡部 広一
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.367-379, 2012-12-14 (Released:2013-03-19)
参考文献数
21
被引用文献数
5 3

オノマトペとは,擬音語や擬態語の総称である.文章で物事を表現する際に,より印象深く,豊かで臨場感のあるものにするために利用される.このようなオノマトペによる表現は,その言語を母語としている人であれば非常に容易に理解することができるため,国語辞書などにあえて記載されることは稀なケースである.また,記載があったとしても,使用されているオノマトペをすべて網羅して記載していることはない.そのため,その言語を母語としない人にとっては学習し難い言語表現である.そこで本稿では,オノマトペが表現する印象を推定する手法を提案する.日本語を対象に,オノマトペを構成する文字の種類やパターン,音的な特徴などを手がかりに,そのオノマトペが表現している印象を自動推定する.これにより,日本語を母語としない人に対して,日本語で表現されたオノマトペの理解の支援に繋がると考えられる.結果として,オノマトペの表記内のモーラ系列間の類似度とオノマトペの表記全体の音象徴ベクトルによる類似度を用いた手法が最も良い推定結果となり,参考値である人間同士の一致率の8割程度にまで近づくことができた.
著者
中川 祥平 鈴木 基之 松本 和幸 北 研二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.97, no.3, pp.533-539, 2014-03

本論文では,音声からの感情推定において特徴量を正規化して識別を行う方法を提案する.従来感情識別に用いられている平均パワーやピッチといった韻律的特徴量は,感情による変化だけではなく発話内容そのものによって大きく変化する.そのため,たとえ同じ感情で発話されたとしても発話内容が異なれば異なる韻律となり,感情推定の性能低下を招き得る.そこで本論文では,平静の感情で同じ発話内容を発話した音声からも特徴量を抽出し,それとの差分に注目することで感情による特徴量の変化のみを抽出する方法を提案する.使用している5種類の特徴量(平均パワー,ピッチ等)ごとに減算による正規化,除算による正規化,正規化なし,の三つの方法で正規化し,全ての組み合わせの中で最も性能が向上する組み合わせを探索した.その結果,最適な組み合わせによる識別性能は,正規化を行わない従来法と比較して5.98%向上した.正規化法に関する分析を行ったところ,平均パワーは正規化が必要(演算は減算でも除算でも大きな差はない)であり,一方ピッチとMFCCは正規化なし,残りの二つの特徴量についてはどちらでも性能は大きくは変化しないことがわかった.
著者
酒井 康行 成瀬 勝俊 長島 郁雄 武藤 徹一郎 鈴木 基之
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.18-23, 1995-02-15
参考文献数
11
被引用文献数
2

体重10-15kgの肝不全ブタ用のハイブリッド型人工肝臓モジュールに必要とされる細胞数の1/4(2.5×10<sup>9</sup> cells)に相当する初代培養ブタ肝細胞スフェロイドを, 酸素供給用シリコンチュー・ブを装着した1-Lスケールのスピナーフラスコを用いて, 約1日で形成させることができた. このスフェロイドをディッシュレベルにおいて, さまざまな培養形態で10日まで培養した. スフェロイドをそのまま緩やかに浮遊培養(旋回培養)すると細胞数の減少が起こるが, 細胞当たりの機能発現は単層培養細胞の3-5倍であった. コラーゲンゲル包括スフェロイドは, 浮遊培養と比較して機能発現が低下する傾向にあった. 100%のブタまたはヒト血漿と直接接触させながら浮遊培養しても, スフェロイドのアンモニア除去能は合成培地中と比較しても, 全く低下が見られなかった.
著者
立花 潤三 迫田 章義 門脇 亙 山田 強 玉井 博康 稲永 忍 鈴木 基之
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.123-133, 2011

低炭素社会に向けた厳しい目標の達成には産業部門,民生部門等すべての部門における低炭素化の努力が不可欠であり,我が国の燃料消費の約15%を占めるとされる食料生産・輸送も当然にその対象に挙げられる。本研究ではまず,鳥取県において現在生産されている食料によって鳥取県民全員の栄養素を賄えるか(県内食料自給自足)の検討を行った。その結果マンガン,パントテン酸が少量不足する以外,他の19種類の栄養素に関しては県内産食料で賄え,一部栄養素に関しては供給過多であることが分かった。次に,県内食料自給自足の条件下において,移入だけを行わない場合は現状の生産・輸送エネルギーの約1割,生産量を一律1割削減した場合は約2割,現在県内生産量が2000[t/year]を超える食料品のみを生産することを条件とした場合には約3割,そして最もエネルギーが小さくなる食料生産を選択した場合には約5割のエネルギーを削減する事ができることが推算された。
著者
平川 仁 鈴木 基之 西野 宏 佐藤 雄一郎 石木 寛人 篠崎 剛 海老原 充 新橋 渉 上條 朋之 岡本 牧人 別府 武 大堀 純一郎 松浦 一登
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.75-81, 2018

頭頸部癌終末期患者における症状について多施設調査を行った。根治不能頭頸部癌と診断され,癌の進行による状態悪化のために入院となった患者を対象とした。11施設から100人の患者が登録され,そのうち転院した患者などを除く72人が死亡まで観察可能であった。最終観察時における出血や滲出液を伴う自壊腫瘍を持つ症例は36.1%であった。またそれに伴う制御不能な出血を認めた症例は5例であった。1例は頸動脈破裂による急速な転機をたどった。残りの4例は出血および血圧低下による止血を繰り返し最終的に心肺停止となった。栄養経路に関して61.1%で経腸栄養摂取が可能であった。頭頸部浮腫は36.1%に認めた。喉頭発声による意思の伝達は50%で不可能であった。頭頸部癌の終末期症状は決して軽いものではない。しかしその症状・頻度,病態の理解が進み,適切な指針を今後作成できれば,患者は終末期の時間を自宅近くの医療施設もしくは自宅で過ごすことができるようになると期待される。
著者
川西 琢也 川島 博之 茅原 一之 鈴木 基之
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水質汚濁研究 (ISSN:03872025)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.180-188,162, 1990-03-10 (Released:2009-09-10)
参考文献数
13

土壌浄化法の大きな問題点のひとつである目詰まりについて, その機構の解明と, 浸透不良を防ぐための排水供給量の推算を試みた。まず, 微生物が土壌透水係数に及ぼす影響を, カラム実験により実測した。土壌中の微生物密度には最大値が存在し, それに対応する最小の透水係数が求められた。次にトレンチを模擬した小型の実験装置で, 人工下水を定水頭差で浸透させ, 浸透水量の減少を追跡した。浸透水量は20日程度で定常状態となった。カラム実験の結果と, 土壌中の微生物分布, TOCのバランスから, 目詰まりの機構を明らかにした。さらに, 以上の知見をもとに数理モデルを作成し, 浸透不良を生じないための排水供給量を推算した。計算の結果, BOD100mg・l-1の排水に対して, 40l・m-1 (trench) day-1という許容排水供給量が得られた。
著者
三品 賢一 土屋 誠司 鈴木 基之 任 福継
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.91-110, 2010
被引用文献数
4

発話文を感情ごとに分類したコーパスを構築し,入力文と最も類似度が高い発話文を含むコーパスの感情を推定結果として出力する用例ベースの感情推定手法が提案されている.従来手法ではコーパスを構築する際,発話テキストの収集者が個人個人で発話文の分類先を決定しているため,分類先を決定する基準が個々によってぶれてしまう.これにより,例えば"希望"のコーパスの中に喜びの発話文が混じるといったことが起こり,推定成功率を下げてしまう.本稿ではこの問題を解決するため,コーパスごとにおける入力文の形態素列の出現回数を用いて,入力文とコーパスの類似度を定義する.そしてこの類似度を従来手法に導入した新たな類似度計算式を提案する.これにより,誤って分類されてしまった発話文の影響を緩和することができる.評価実験では従来手法と比べて成功率が 21.5 ポイント向上し,提案手法の有効性が確認できた.
著者
市川 拓人 鈴木 基之 伊藤 彰則 牧野 正三
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.81, pp.33-38, 2007-08-01
被引用文献数
3

本稿では,ピッチ抽出を行わないハミング入力楽曲検索システムについて検討する.ピッチ抽出は,どれほど高精度なものでもピッチ抽出誤りを避けることができず,検索精度を低下させる原因となっている.本システムでは,従来用いられているデルタピッチの代わりに,2つの対数周波数領域パワースペクトルの相互相関関数を音程特徴量として用い,さらに楽曲中に存在しているであろう全音程の確率モデルを用意しておく.連続する2つの音符が観測された時,この特徴量と確率モデルを用いて,全音程についての尤度を計算する.このシステムの利点は,統計的なモデル化を行うことにより,ピッチ抽出誤りのような致命的な誤りを起こしにくいということである.そして実際に検索実験を行ったところ,ピッチによる検索精度を最大4.9%上回る結果となった.This paper describes a query-by-humming (QbH) music information retrieval (MIR) system without pitch extraction. In pitch extraction based system, pitch extraction errors inevitably occur that degrades performance of the system. In this system, a cross-correlation function between two logarithmic frequency spectra is extracted as a tonal feature instead of deltaPitch, and probabilistic models are prepared for all tone intervals assumed to exist in the music. When two signals corresponding to two contiguous notes are given, likelihoods are calculated for all possibility of tone intervals. The advantage of this system is that it is hard to occur a fatal error such as a pitch extraction error because extracted features are modeled stochastically. From a experimented result, the top retrieval accuracy given by the proposed method have exceeded the system based pitch extraction by 4.9 %.
著者
鈴木 基之 迫田 章義 藤江 幸一 花木 啓祐 黒田 正和 梶内 俊夫 岡田 光正
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、使用水のリサイクル推進が、異なる局面で招く恐れのある処理設備および資源・エネルギー消費の増大を定量的に解析し、トータルな環境負荷を増大させない効率的な水再利用プロセス像を明らかにするとともに、そのための今後の技術開発の方向に関して提言を行うことを目的としている。水多消費型の主要産業に対してその排水量・排水性状、現状処理方法、処理水質、リサイクル状況およびエネルギー消費などについて調査を実施した。この調査結果に基づいて、排水および処理水の水質、処理方法と所要エネルギーの関係を示し、エネルギー消費の観点から今後のCOD削減、すなわち処理水質向上目標の設定および処理プロセスの選択のための指針を提案した。生活・事務系排水の循環利用状況の調査結果をもとに、各排水処理システムの設計条件と製造コストを検討し、水の処理レベルと再生水の用途、単位操作の組み合わせ方法とエネルギー消費との関係を解析した。中水道用の水処理プロセスに対して二酸化炭素排出量を指標にライフサイクルアセスメントを行い、膜分離方式は設置面積が小さく、処理水質が優れているが、建設時と運用時の環境負荷が大きいことが定量的に明らかになった。雨水利用についても、ある実例についてその業績を詳細に検討し、処理コストとエネルギー消費の解析を行うとともに、大規模建築物における雨水の利用における水のバランスなどを検討した。加えて、最も広く利用されている好気性生物処理法や、今後導入が期待される生物活性炭処理法と膜分離法などについて、その処理対象物質および処理最適濃度・到達できる処理水質・所要エネルギーとコストについて定量的評価を行い、エネルギー効率を向上できる操作条件を示した。さらに、既存の窒素・リン除去技術の適用範囲、処理能力とエネルギー消費特性を明らかにし、最適な窒素・リン除去方式を選択するため基礎データが得られた。
著者
栗山 直人 鈴木 基之 伊藤 彰則 牧野 正三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.442, pp.55-60, 2006-12-15

PLSAは言語モデルの文脈適応に一般的に用いられる手法である.このPLSAの新しい利用方法を提案する.PLSA言語モデルの語彙を「話題語」「文型語」「汎用語」の3クラスに分割し,話題語PLSAモデルと文型語PLSAモデルを別々に学習・適応した後に3つのモデルを統合する.また新聞記事とCSJ間での品詞分類の出現パターン変化に基づいた,語彙分割基準の自動生成を提案する.評価実験では話題と文型の特徴が学習データで共起していないテキストについて,従来のPLSA言語モデルと比べ15.48%のperplexity削減が得られた.