著者
池田 達昭 村岡 誠 向井 直樹 高橋 英幸 高松 薫
出版者
社団法人日本体育学会
雑誌
体育學研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.783-791, 2006-11-10

本研究では,同一の競技チームに所属し,日常的に同様な筋力トレーニングを実践している集団を対象にし,1RMの個人差の小さい等質的な集団であるか否かを確認した上で,(1)1RMと3種の%1RMにおける繰り返し回数およびI-N slopeとの関係を検討すること,(2)N_<total>とI-N slopeの相違を神経-筋機能と筋の組織化学的特性の面から検討することを目的とした.検討に際して,1RMの個人差の大きい異質集団を対象とした著者らの先行研究(池田・高松,2005)との比較を行った.上述の目的を達成するために,健康な男子大学生サッカー選手(1年生)15名(年齢:18.8±0.4歳,身長:174.3±3.4cm,体重:66.1±2.9kg)を対象として,等尺性最大膝伸展力(Isom.max)とIsom.max発揮中における力の発揮速度(RFD),動的最大膝伸展力(1RM)と1RMの90%,70%,50%での負荷強度における繰り返し回数(N_<90>,N_<70>,N_<50>),大腿四頭筋の筋断面積(CSA)および筋の組織化学的特性を測定した.なお,本研究における1RMの変動係数は,著者らの先行研究と比較して低値を示したこと,およぴ,2つの研究における1RMの分散は異なることが認められたことなどから,本研究の被験者は1RMの個人差の小さい等質集団であることを確認した.本研究における主な結果は以下の通りである.(1)著者らの先行研究では1RMとN_<90>,N_<70>,N_<50>およびN_<total>との間にいずれも有意な負の相関関係が認められたが,本研究では1RMとN_<90>との間にのみに有意な負の相関関係が認められた.(2)著者らの先行研究ではN_<total>とI-N slopeとの間に有意な正の相関関係が認められたが,本研究では2つの指標間に密接な関係は認められなかった.(3)本研究では,N_<total>とRFDとの間に有意な負の相関関係が認められ,I-N slopeと%Fiber area (TypeI)との間に有意な正の相関関係が認められた.以上の結果から,1RMと3種の%1RMにおける繰り返し回数,N_<total>およびI-N slopeとの関係は,対象とする被験者の1RMの個人差の大きさによって影響を受けること,N<total>とI-N slopeは,それぞれ繰り返し回数に関わる異なる能力を評価していること,などの可能性が示唆された.
著者
Riordan Jim
出版者
社団法人日本体育学会
雑誌
体育學研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.118-125, 1994-07-10

ソヴィエトのオリンピックにおける成功やその背後にあるスポーツ組織について書かれたものは数多い. しかし, ソ連の力で平和が維持されてきた諸国間に, これまでの価値観を疑問視する新たなムードが生まれ, 現在では, コミュニスト・スポーツの暗い部分を照射したスポーツ史の検討, およびその書き直しがおこなわれている. 本研究では, このような共産主義スポーツ史の中にみられる, いくつかの「空白部分」の検討をおこなうことが目的である. それらは, 支配関係や勝利至上主義, 国家によるアマチュアリズム, 歪んで優先されたもの, 薬物の乱用や競技者の酷使, KGBとスポーツ, そして, 不正や詐欺行為などである.
著者
波多野 義郎 服部 豊示
出版者
社団法人日本体育学会
雑誌
体育學研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.213-219, 1976-02-15
被引用文献数
1

ハンドボールにおける, とびこみ倒れこみシュート, 即ちプロンジョンシュートの身体運動学的特性を摘出し, その指導上のポイントを探ることを目的として, 当該技術の写真分析を行なった. そのため, 熟練者と未熟者, 並びに男子選手と女子選手をそれぞれ対比させて, 身体運動の軌跡を比較検討した. その結果, プロンジョンシュートの指導上のポイントとして, 例えば次のような項目があげられた. 1. 踏切り動作はすばやく行ない, ボールは, ゴールエリア内に敏速に移動する. 2. 踏切りは, 長いシュート距離が得られるような, 強力な蹴りを必要とする. 3. バックスウィングは, ゴールエリア内にとび込んでから, ボールを身体の前を通すようにして行なう. 4. シュートでは, 身体を側方に倒した姿勢が有利である.