著者
印南 洋
出版者
神田外語大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、「タスク(出題)形式」が「英語リスニングテスト得点」にどのような影響を与えるかを調べることである。2年計画の最終年度の目的は、多肢選択式と記述式の比較に焦点を当て、英語テスト得点へ与える影響を量的に調べることである。研究方法は、公刊・未公刊両方の先行研究を幅広く収集するため、以下3点の方法を用いた。第1に、ERICなどのデータベースを使用した。第2に、言語テスト、第2言語習得、教育測定の分野の本、ジャーナルを参照した。第3に、出題形式の影響を研究している研究者に連絡を取り、関連する先行研究についての情報を聞いた。収集した先行研究を、特徴ごと(例:L1の研究か、L2の研究か)にコーディングした。コーディングは、訓練を受たけ複数の研究者で行った。その後、各先行研究ごとに出題形式の影響の大きさを算出し、それらの値を研究間で統合した。研究の結果、以下の2点が分かった。第1に、多肢選択式が記述式よりも容易になるのは、L1リーディングの研究・L2リスニングの研究で見られた。一方、L2リーディングの研究において多肢選択式が記述式よりも容易になるのは、受験者間デザインを用いたとき、受験者をランダムに配置したデザインを用いたとき、出題形式間で設問が平行(stem equivalent)に作られているとき、受験者のL2レベルが高いときのいずれかを満たした場合であった。第2に、多肢選択式が記述式よりも容易になることには多くの要因が関わるが、L1リーディングの研究・L2リーディングの研究・L2リスニングの研究間で共通した要因として、受験者間デザインを用いたとき、受験者をランダムに配置したデザインを用いたとき、出題形式間で設問が平行に作られているときの3要因が見られた。
著者
佐野 まさき
出版者
神田外語大学
雑誌
Scientific approaches to language (ISSN:13473026)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.49-69, 2006-03-31

日本語のいわゆるとりたて詞は、文末との呼応が明白なものとそうでないものとがある。たとえば「健は酒さえ飲んだ」に見られるとりたて詞サエは一見特定の述部と呼応することを要求しない。これは「飲んだ」の部分を「欲しがった」「飲まなかった」「飲んでいた」「飲んだようだ」などあらゆる形に変えても、サエとの文法的な関係に問題が生じるということはないことからそのように見える。一方「健は酒でも飲んだようだ」に見られる例示的なデモは、「ようだ」「に違いない」などのモダリティ表現で終わることを要求し、「飲んだ」で終わることはできない。本論はしかし、このような区別は文法的には意味がなく、むしろすべてのとりたて詞がそれ自身の呼応述部、認可子を持つという立場をとる。それによりとりたて詞の文中、特に従属節内での分布制限が普遍文法の一般原理により自然に捉えられることを示唆する。
著者
奥津 敬一郎
出版者
神田外語大学
雑誌
言語科学研究 : 神田外語大学大学院紀要 (ISSN:13476203)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.37-48, 1995-03

「冷たい雨が降る」「雨が冷たく降る」において,前者の「冷たい」は連体成分,後者の「冷たく」は連用成分であるが,両者は同義的である。このような関係を連体・連用の対応と呼ぶ。この対応には一定の条件があり,そのひとつが「雨が降る」のような自然現象を表す機能動詞文である。この前編ではまず自然現象文とは何かをいささか詳しく考察し,後編において連体・連用の対応を論ずる。
著者
村木 正武
出版者
神田外語大学
雑誌
言語科学研究 : 神田外語大学大学院紀要 (ISSN:13476203)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.7-18, 1998-03

Lift a finger, a red cent, etc. in English mean yubi ippon ugokasu, bita itimon, etc. in Japanese, while mettani, kessite, etc. do not correspond to any English words. Mettani-nai, kessite-nai, etc. are equivalent to English rarely, never, etc. This paper tries to clarify the behavior of these two types of negatives.
著者
神谷 昇 長谷川 信子 町田 なほみ 長谷部 郁子
出版者
神田外語大学
雑誌
Scientific approaches to language (ISSN:13473026)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.119-145, 2009-03

本稿は、2011年から公立小学校で必修化される英語活動の一定基準を示すために作成された『英語ノート(試作版)』に現れる語彙を言語学的観点から、その特徴を考察し、それを基盤に小学校での英語活動で可能となる英語のカタチを明らかにするものである。まず、早期英語教育の分野におけるこれまでの語彙研究を概観し、早期英語教育用語彙リストを比較した上で、収録語彙の特徴をとらえる。次に『英語ノート(試作版)』の語彙のうち、児童の語彙に着目し、それらの品詞割合を分析し、先行研究との比較に加え、成人向けの語彙との比較も併せて行い、相違点を検証する。さらに、『英語ノート(試作版)』出現語彙のうち、先行研究で示された早期英語教育用語彙リストと大きく異なる割合を示した動詞に焦点を当て、その意味タイプの分類、有生物主語と無生物主語の割合について言語学的見地から考察し、その特徴をとらえ、『英語ノート(試作版)』に提示されている「英語の特徴・カタチ」を、英語の体系の観点から明らかにする。