著者
藤田 知子
出版者
神田外語大学
雑誌
神田外語大学紀要 (ISSN:09175989)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.157-183, 2008-03

本稿は現代日本語の接頭辞「カタ(片)-」の意味と使用条件を明らかにする試みである.「カタ-」は語基Xと結合し,(a)「二にして一」なるXの一方(「カタ目をとじて」),(b)「二にして一」なるXの非在の一方(「カタ目の男」)を指示する.これらは印欧語における双数(dual)と関連が強く,指示しないもう一方の存在を常に喚起する用法である.さらに「カタ時」「カタ田舎」のように双数との関連がうすい用法がある.具体例の分析を通して「カタ-」の多義性,差別的使用,文字表記について考察する.
著者
清 ルミ
出版者
神田外語大学
雑誌
異文化コミュニケーション研究 (ISSN:09153446)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.57-73, 1998-03

The purpose of this paper is to identify factors inhibiting communication between Japanese staff and foreign staff members with advanced Japanese language skills (FSAJLS). A survey was conducted from June to November in 1994. 142 employees, both Japanese and FSAJLS, working at 43 companies throughout Tokyo, were surveyed. The survey was intended to examine the causes for barriers in business communicaton between Japanese and FSAJIS and the estimation of the roles of the FSAJLS in their companies. The results are summarized as follows : Both Japanese and FSAJLS found many barriers in the Japanese language skills of the FSAJLS. The main linguistic barrier is their lack of skills in assessing situations correctly and assuming the appropriate speech register in the process of ongoing conversations. Also, the FSAJLS have great psychological difficulties in dealing with the prejudices of the Japanese. As for the roles of the FSAJLS, there is a perception gap between Japanese and FSAJLS. The analysis of the results indicates that the present situation calls for considerable improvement in Japanese companies, by setting up an environment which would accept Japanese speaking foreign staff.
著者
鄭 汀
出版者
神田外語大学
雑誌
Scientific approaches to language (ISSN:13473026)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.133-148, 2010-03
被引用文献数
1

本稿は中日両言語の存在表現における「着」構文と「てある」構文の対応について影山(1996,2001,2009)の動詞の意味構造に基づき分析比較したものである。「着」構文と「てある」構文の対応関係を明らかにするためにはその動詞の意味構造を考察することが必要である。動詞の意味の体系についてはさまざまな考え方があるが、本稿では、両言語の動詞の意味を影山の<行為>→<変化>→<状態>という行為連鎖の観点から考察する。なぜなら両言語の存在表現の対応関係を同じ概念構造において比較することがその違いや共通点より明確に現れるだけでなく、その枠組みの有用性と限界を明らかにすることも可能となるからである。
著者
堀場 裕紀江 木川 行央 岩本 遠億 深谷 計子 松本 順子 鈴木 秀明 西 菜穂子 李 榮 山方 純子 田所 直子
出版者
神田外語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

第2言語(L2)としての2種類の日本語語彙テスト(語義・語連想)を開発し、中級から超級までの学習者と母語話者を対象にした大規模調査を行った。語彙知識は語の頻度と種類、知識の要素、母語背景などの影響を受け、量的・質的変化を伴って発達することを検証した。語彙知識とL2読解(日本語・英語)の関係についても実証的研究を行った。また、文脈における語彙の形・意味・使用に関する特性について理論的・記述的な言語研究を行った。
著者
桝本 智子
出版者
神田外語大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

原爆の歴史をいかに次世代に伝えていくのか、様々な視点から検証した。まず、原爆が製造されたロスアラモスではいかに原爆が語られてきたのかを調査するためロスアラモス研究所の科学者を含む関係者へのインタビューを行った。現地で語られる原爆は科学的偉業であり、原爆投下後よりも試験爆弾成功までに重点を置いている。もう一つの目的の「対話」と次世代への伝え方に関しては、「はだしのゲン」を現地で上映し参加者とのディスカッションを行った。また、現地の学部生の授業でもこのトピックを取り上げてもらい、ディスカッションを行った。その後のフォローアップから、この授業が核兵器に対する認識に変化をもたらしたことが分かった。
著者
眞鍋 雅子
出版者
神田外語大学
雑誌
言語科学研究 : 神田外語大学大学院紀要 (ISSN:13476203)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.49-68, 2008-03

本稿は、[XトイウN]におけるX (修飾部)とN (主名詞)の関係を例示関係として捉え、XはNの例として[XトイウN]全体で1つの「タイプ」を表すと考える。そしてこのような[XトイウN]の例示関係はXが名詞である「語のレベル」だけでなく、Xが「文(名詞節)のレベル」においても成立することを示す。Xが文(名詞節)レベルの場合、トイウの生起はXの事態タイプによって異なり、それぞれの事態タイプは時制解釈、PRO主語解釈と連動する。その結果、トイウの有無が、「個別」対「タイプ」、「具体」対「概念」、「現実」対「非/未現実」の対立を作り出すことを提示する。しかしXとNの関係性は、話者が事態Xをどのようにとらえるか(話者の認識や事実認定)によっても左右される。先行研究(寺村1975〜1978)では主にNのタイプによってトイウの介在が論じられてきたが、本稿では先行研究での成果を取り上げる形で、より大きな文(主文)や談話レベルでの観点からも考察を加えた。このようにトイウを俯瞰的にとらえることで、語のレベル、文(節)のレベルだけでなく、より大きな文(主文・談話)レベルにおいてもトイウの例示機能が関わることを提示する。
著者
土佐 昌樹
出版者
神田外語大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

前年度はアメリカの実態を対象としたが,今年度はその成果に基づき主に日本のサイトを対象として研究の展開と総括を目指した。手順と成果の概要を以下に示す。(1)「Yahoo!JAPAN」に登録された宗教関係のサイトをすべて閲覧し、内容の特徴と傾向をまとめた。主たるものはハードコピーし,今後の研究の基礎資料としてデータベース化した。(2)宗教サイトを運営する姿勢として、形だけのものと積極的なものに二分される。宗教活動の中でインターネットを積極的に活用しようとしている206のサイトにメールを送り(イスラム2、神道34、仏教117、キリスト教118、その他62)、ホームページの運営方針について予備的なアンケートを実施した。(3)78のサイトから回答を得た(イスラム2、神道6、仏教32、キリスト教21、その他17)。そのうち協力的に対応してくれた組織には持続的なコミュニケーションを試み、インタビュー調査も数回にわたって実施した。インターネットの普及により新たな信仰の形が出現することを予感しているところが多かったが、全体的にまだ模索中の段階にあるといえる。日本の場合はアメリカと異なり、特にニューエイジ的なサイトが突出しているわけでなく、原理主義的な傾向も希薄であった。今後さらに、インターネットの普及が宗教活動全体に及ぼす影響を多角的、有機的に調査研究すべきとの感触を得た。情報化時代における宗教的実践の将来は、社会科学的に追求すべき豊かな問題を含んでいるといえる。