著者
鶴田 格
出版者
近畿大学農学部
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
no.44, pp.97-114, 2011
被引用文献数
2

本論文では、東アフリカのナイロート系牧畜民のなかでももっとも南に進出したマサイとダトーガにそれぞれ隣接し、それらの影響をうけてきた農牧民ゴゴ人とイラク人をとりあげて、その生活における農耕-牧畜複合の様態と隣接牧畜民との関係をまず1960年代の民族誌に依拠して記述する。さらに他の歴史学的研究や1960年代以降の臨地研究のデータを参照して、その歴史的変容について考察する。
出版者
近畿大学農学部
雑誌
近畿大学農学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Agriculture of Kinki University (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
no.42, pp.127-144, 2009-03

土壌動物の持つ機能についてリターバック法を用い、近大里山内において樹種毎に落葉の分解にどれだけ土壌動物が寄与しているのかを調べた。その結果、土壌動物は落葉量の多い11月や12月の時期には落葉量と同じように増えているが、落葉量が少ない4月から7月の時期にかけても個体数が多かった。また、8月の夏の時期にはもっとも少なかった。どの樹種においてもこの傾向が見られた。また、リターバック内の落葉の残存率は、9月頃まで減少し続け、その後は横ばいに推移している。分解速度にてヒノキの4ヶ月目と6ヶ月目にピークが現れたのは土壌動物の個体数増加に伴う分解促進の結果と思われる。落葉の分解が進むにつれて落葉中の窒素含有率が上昇している。これは落葉中の炭素が消費されていることを意味している。炭素は土壌動物や土壌微生物にとってエネルギー源であり、窒素は土壌微生物の体を形作る養分である。落葉の多い時期に、土壌動物の個体数が増えているのは、9月頃の分解のピークによって分解者以外の利用できる養分が増え、分解者以外の土壌動物の個体数が増えはじめ、それらが土壌中を動きまわることにより、土壌が攪拌され、新たな団粒の形成等により、分解者である中型土壌動物の生存可能空間が作られる。そこに落葉が供給されることにより、再び分解者の活性が高まったためであると考えられる。落葉の少ない、3月頃から8月の手前までの時期にも土壌動物は個体数を増やしているが、これは、寒くも無く、暑くもない温暖な気候である春という時期が土壌動物の活動を活発にさせ、個体数を増加させたものと推察される。8月の土壌動物の個体数が少ないときに分解速度が減少したり、落葉の多い時期に比例するように土壌動物は増えていることをはじめとするこれらの結果から土壌動物の落葉分解という機能が示された。また、落葉の分解にもっとも貢献していたのはダニ目のササラダニ亜目であった。
著者
細谷 和海 西井 啓大
出版者
近畿大学農学部
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
no.36, pp.73-130, 2003

ブラックバスは北米原産のサンフィシュ科の淡水魚で、わが国には1925年に実業家、赤星鉄馬氏により神奈川県芦ノ湖へ移殖された。以来、本種は同湖から持ち出されることがなかったが、1970年代のルアー釣りブームを契機に一挙に分布域を拡大した。ブラックバスは魚食性が強く、コイ科を主体とする在来種の地域的な絶滅を引き起こすことが危惧されている。そのため、ブラックバスを対象とするルアー釣りをめぐり、在来種を保護しようとする側とルアー釣りを楽しみたい側とが激しく対立し、大きな社会問題となっている。問題を解決するためには、ブラックバスの食害に関する科学的データを社会に提供する必要がある。ブラックバスの生物学については、すでにアメリカにおいて1975年にStround and Clepperが総合書を取りまとめている。一方、もともとブラックバスが分布していなかったわが国ではブラックバスに関する情報は限られる。1992年に全国内水面漁業協同組合連合会が「ブラックバスとブルーギルのすべて」を、また、最近では2002年に日本魚類学会自然保護委員会が「川と湖沼の侵略者ブラックバス」を刊行している程度で、情報は充分とは言えない。サンフィシュ科魚類は北米東部を中心に9属32種が知られている。そのうち、日本の淡水域に移殖放流されたものはオオクチバス、コクチバス、およびブルーギルである。わが国において、ブラックバスという名称は慣習的にオオクチバスに当てられてきたが、コクチバスが定着して以来、両種の総称として用いられることが多い。本資料では、オオクチバスとコクチバスを対象とする。
著者
堀川 勇次 佐々木 勝昭 宇都宮 直樹
出版者
近畿大学農学部
雑誌
近畿大学農学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Agriculture of Kinki University (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
no.38, pp.19-30, 2005-03 (Released:2011-03-05)

近年、日本でもマンゴーのハウス栽培が盛んになりつつあるが、その害虫や訪花昆虫についてはあまり調べられていない。そこで、本研究ではマンゴーハウスに出現する害虫、訪花昆虫を調べ、効果的な防除法と受粉法について検討した。以下3種類の調査を近畿大学附属湯浅農場の2つの温室で行った。訪花昆虫調査では、全部で6目27科40種以上の訪花昆虫が確認された。中でも個体数が最も多かった昆虫は双翅目であった。本農場では受粉効率を上げるためセイヨウミツバチを放飼しているが、着果率はあまり良くない。今後、さらなる着果率向上を目指しミツバチと双翅目の併用を検討する必要があると考えられた。アザミウマ等の害虫調査では、粘着テープを温室内に設置し、付着した昆虫を調べた。その結果、7目21科26種以上が確認された。中でも重要害虫のアザミウマはチャノキイロアザミウマが最も多かった。また、アザミウマの捕獲個体密度は農薬散布区よりも無農薬区の方が圧倒的に多かった。被害果実も無農薬区では非常に多くなり、農薬散布は現在のところ不可欠であると思われた。吸蛾類調査では、全部で9科34種以上の蛾の温室への飛来が確認された。その中で口吻を果実に突き刺し果汁を吸っているところが確認された蛾はヤガ科の3種であった。これらヤガ科による果実への被害を未然に防ぐ必要があると思われた。
著者
鳥居 憲親 桑原 崇 鈴木 賀与 寺田 早百合 杉田 麻衣 平野 綾香 錦 一郎 桜谷 保之
出版者
近畿大学農学部
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
no.43, pp.47-74, 2010

The structure of wild bird communities in two areas of the Nara Campus of Kinki University was observed from June, 2008 to May, 2009. Pond A, Coppice, Farm and School Site A were the observation points in one area. The observation route in this area was named A-course. Pond E, East Ground, West Ground and School Site E were the observation points in the second area. The observation route in this area was named E-course.Among these environments, the greatest number of species was recorded at Pond A, where the wild bird fauna mostly consisted of waterfowl and rassland birds. The Index of species diversity H' at Coppice was the highest of this survey, where the wild bird fauna mostly consisted of forest birds. The number of species from the Red List of Endangered Animals at Farm was the second highest of this survey. The number of species at School Site A, where the wild bird fauna mostly consisted of common species, was the lowest among these environments. The total population of wild birds counted at Pond E, where the wild bird fauna mostly consisted of waterfowl and grassland birds, was the highest among these environments. The total population of Red List species found at East Ground, where the wild bird fauna mostly consisted of grassland birds, was the lowest among these environments.The Index of species diversity H' was the lowest at East Ground. The overlap indices Cπ at School Site E was the highest in combination with School Site A. The wild bird fauna at these sites mostly consisted of arboreal birds.
著者
荒井 真帆
出版者
近畿大学農学部
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
no.39, pp.55-73, 2006

In Nuwa Island, villagers organize annually a unique memorial service for the deceased, whitch is accompained by bon dance performance (Arabon-kuyou-odori) . The bon dance event is not only a mere memorial service of the community as a whole, but also an important occasion to come back home for those who now reside outside of the island. The analysis of the event, therefore, may have some sociological implications on social relations of villagees, who still retain tight-knit relations in the village community on the one hand, and now have wider social network beyond the village on the other. This paper aims at reporting various aspect and process of bon dance event, as an initial step for a further detailed analysis.1.はじめに2.元怒和地区の概況3.元怒和地区の盆踊りと仮装4.新盆供養踊りの仮装と「位牌踊り」5.盆踊りの運営について6.新盆儀礼の諸過程と社会関係7.おわりに記事区分:原著
著者
大石 武士
出版者
近畿大学農学部
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
no.26, pp.p21-25, 1993-03

[Author abstract]The need for additions of selenium to livestock feed is being evaluated in Japan. We measured the selenium content of commercial formula feeds for poultry, and studied the effects of additional selenium on the selenium content and quality of the eggs. The selenium content of the feeds varied widely, but in most, there was less than 0.3 mg/kg. The selenium content of the yolk's was affected by the added selenium, but the selenium content of the white was not affected by added selenium. Egg weight, especially egg yolk weight, increased when selenium was added to the formula feed. Egg shell thickness tended to increase with added selenium, but Haugh Units and the egg yolk color were not affected by added selenium.[著者抄録]わが国においても家畜用飼料へのセレンの添加の是非が論議されているので,鶏用市販配合飼料中のセレン濃度の実態を明らかにするとともに,市販配合飼料を基礎飼料として,セレン濃度を段階的に増加させた場合の生産物である卵のセレン濃度や品質におよぼす影響について検討した。結果は次のごとくであった。市販配合飼料中のセレン濃度は,かなり変動が認められたが,その大部分は平均的には0.3mg/kg 以下のセレン濃度であった。セレン添加を行っても卵中のセレン濃度は僅かしか増加せず,特に,卵白中のセレン濃度は卵黄に比較して飼料のセレン濃度の影響は少なかった。卵重は飼料中のセレン濃度の増加によって改善され,特に卵黄重量でその傾向が強かった。卵殻厚も飼料中のセレン濃度が高くなると厚くなったが,これは飼料中のセレン濃度が増えると飼料摂取量が増加したことによる二次的な効果と推測された。ハウユニット,卵黄色調等は飼料中のセレン濃度の影響を受けなかった。記事区分:原著