- 著者
-
桃崎 有一郎
- 出版者
- 高千穂大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
①共著の分担執筆「足利義嗣」(榎原雅治・清水克行編『室町幕府将軍列伝』、戎光祥出版、2017.10.10、pp.138-156)を公刊した。これは、足利義満の息子の一人義嗣の動向を洗い直すことで、義満が自分を中心とする新たな社会秩序やそれを表現する儀礼体系をどのように展開させようと構想していたかを論じたものである。本研究のテーマ「流鏑馬とは何だったのか」という問題は、武家儀礼全体を視野に入れるべきものであるため、足利義満期に中世の武家儀礼体系が一つの完成形を迎えることの意義は重大で、流鏑馬を含む武家儀礼がどのようなゴールへと向かっていったかを把握しておくことは、室町期に流鏑馬がなぜ廃れてしまったかを考える上で、不可欠の作業だったと考えている。②共著の分担執筆「古代における法と礼」「中世における法と礼」(高谷知佳・小石川裕介編著『日本法史から何がみえるか』、有斐閣、2018.3.10、pp.14-36,64-78)を公刊した。これは、日本の武家儀礼の根幹にある《礼》という規範が、そもそも日本の儀礼体系においていかなる役割を果たしたか、その前提として倭国段階のわが国が朝鮮半島経由で中国から《礼》を導入した時、わが国が《礼》を何であると理解し、何を吸収し、何を捨象し、法とのバランスをどこに求めたか、そしてその大前提として、古代中国において《礼》とはそもそも何であり、法といかなる関係に置かれてきたかを、儒教の経典や中国の史書の網羅的な調査、さらには殷代の甲骨文字まで遡って考察したものである。次の「現在までの進捗状況」で述べる理由により、この作業も本研究に欠かせないものだったと考えている。