著者
江上 奈美子
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.21-31, 2011

本研究では,研究1で大学生における境界例心性を測定する尺度を定義に合わせて改変することを目的とし,研究2で境界例心性と対人・達成領域のライフイベント,およびそのイベントに対する不快・快感情との関連を検討することを目的とした。その結果,研究1では境界例心性尺度に6つの因子が抽出され,信頼性と妥当性が確認された。研究2では,大学生378名の回答を対象に<i>t</i>検定によって検討した結果,境界例心性高群は低群に比して,学業面でも対人関係でもネガティブな体験が多く,その体験に対して不快感情を抱いていたことが示された。また,彼らは学業面でのポジティブな体験については低群と経験頻度に差がないにもかかわらず,高群と同程度に快いと感じていないという結果が示された。境界例心性が強い大学生にはポジティブな体験に対しても快いと感じにくい評価のパターンがあることが示された。
著者
中西 満悠 中谷 素之 中西 良文
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.197-200, 2015

This study developed a Japanese version of the Academic Delay of Gratification (ADOG) Scale, based on the original language scale created by Zhang, Maruno, Karabenick, and Lauermann (2011), and investigated its reliability and construct validity. Japanese undergraduates (<i>N</i>=394) completed the new scale. Confirmatory factor analysis yielded a one-factor structure. The students' ADOG score correlated positively with effortful academic behavior, use of metacognitive strategies, planned studying and the average of weekly study time, and negatively correlated with less sustained studying. The internal consistency, test-retest reliability, and construct validity of the scale were confirmed.
著者
中川 明仁 佐藤 豪
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.38-45, 2010
被引用文献数
1

本研究の目的は,Cloningerの気質4次元から自己志向的完全主義の各側面への影響を男女別に検討することであった。重回帰分析の結果,男女共通して気質次元の「固執」が完全主義の全側面へ正の影響を及ぼしていた。また,男性のみの結果として,「新奇性追求」と「報酬依存」が「失敗懸念」に負の影響を及ぼし,「報酬依存」は「完全性欲求」にも負の影響を及ぼしていた。一方,女性は「損害回避」が「失敗懸念」および「完全性欲求」に正の影響を及ぼしていた。本研究の結果より,多次元的な自己志向的完全主義の基盤に存在すると考えられる気質特性には,男女共通する気質と男女間で相違する気質が存在することが示唆された。
著者
岡田 努
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.11-20, 2011
被引用文献数
4

本研究の目的は,現代青年の友人関係が自尊感情に及ぼす構造(影響)を検討するものである。友人関係,被受容感,被拒絶感,自尊感情の尺度について246名の高校生と236名の大学生に対して実施された。これらの青年に対して友人関係のパターンを見出すためクラスタ分析が実施され,3つのクラスタが見出された。1)情緒的に近い関係を回避する青年,2)情緒的に近い関係を持つ青年,3)友人から傷つけられたり,友人を傷つけることを避け,また友人と群れていようとする傾向が高い青年である。共分散構造分析の結果,傷つけられることを回避することが,傷つけることを回避する心性を経て,被拒絶感を低減し,結果的に自尊感情を維持させることが示唆された。
著者
村山 恭朗
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.61-72, 2013
被引用文献数
1

不適応な感情制御方略である抑制と反すうは抑うつへの脆弱性を高める要因である。先行研究において,思考抑制と反すうとの縦断的関係が議論されており,どちらのモデルも報告されている。そこで本研究は,抑うつへの脆弱性が高い女子大学生(55名,18.98歳)を対象として,ストレッサーとの相互作用を通じて,日常的な思考抑制傾向が反すうの強さに影響を及ぼすプロセスを検討するために縦断的調査を行った。その結果,思考抑制傾向が強い女子大学生では,ストレッサーを経験するほど反すうが強まったが,思考抑制傾向が低い女子学生ではストレッサーを経験しても反すうの強さは変化しなかった。本研究結果から,思考抑制傾向は反すうを強める要因である可能性が示唆される。
著者
古村 健太郎
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.199-212, 2014
被引用文献数
1

本研究の目的は,恋愛関係における接近コミットメントと回避コミットメントを測定する尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討することであった。接近コミットメントは"関係継続によって生じる報酬への接近目標"と定義され,回避コミットメントは"関係崩壊によって生じる罰からの回避目標"と定義された。サンプル1では133名,サンプル2では136名の恋人のいる調査参加者を対象に調査を行った。探索的因子分析では接近コミットメントと回避コミットメントの2因子が抽出され,十分な内的一貫性が確認された。確認的因子分析では,一因子構造よりも二因子構造の適合度が高かった。さらに,投資モデル尺度,BIS・BAS尺度,ECR-GO, IOSとの関連を検討した結果,接近・回避コミットメント尺度はそれぞれの尺度との間に理論的に予測される関連を示した。これらの結果から,接近・回避コミットメント尺度には一定の妥当性があることが確認された。
著者
長谷川 晃 金築 優 根建 金男
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.21-34, 2009
被引用文献数
7

本研究は,本邦の大学生を対象に調査を実施し,抑うつ的反すうに関するポジティブな信念の確信度を測定する尺度を作成すると共に,どのような内容の信念が抑うつ的反すう傾向と関連しているのか検討することを目的とした。研究1では,"人生への悪影響の回避","問題解決能力の向上","感情制御の促進","現状の悪化の回避"の4下位尺度からなる「抑うつ的反すうに関するポジティブな信念尺度 (PBDRQ)」が作成された。研究2では,PBDRQの併存的妥当性と再検査信頼性が確認された。研究3では,"人生への悪影響の回避"と"現状の悪化の回避"という,反すうしないことで生じる不利益に関する信念が抑うつ的反すう傾向と関連していることが示された。結果より,抑うつ的反すうに関するポジティブな信念の中で,特に反すうしないことで生じる不利益に関する信念を変容することにより,抑うつ的反すう傾向を効果的に低減できる可能性が示唆された。
著者
上田 光世 潮村 公弘
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.183-185, 2012

The present study investigated the relationship between forgiveness and the cultural values of the Japanese. Multiple regression analysis indicated that dispositional unforgiveness of self/situation was negatively related to independent self-construal and positively related to interdependent self-construal. The results show that the value of forgiveness of self/situation is low in the Japanese worldview. In the relationships between the religious faith scale and the sub-dimensions of dispositional forgiveness, forgiveness of others was positively related only to the item "religion has harmful effects". Discussion of the results reveals how cultural and religious beliefs about forgiveness are different in Japan compared to Western countries.
著者
荒川 歩 原島 雅之
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-14, 2010

本研究では,ウェブログを対象として,そこで,「性格」という概念がどのような場合にどのように用いられているかを明らかにすることで,人にとって性格に言及することにどのような意味があるのかを明らかにすることを目的とした。合計24時間の間にアップされた714のウェブログから「性格」という言葉の用例を収集し,ボトムアップに分類した。その結果,他者の性格について言及したものは,17カテゴリ132個,自分の「性格」について言及したものは,26カテゴリ220個観察された。他者の性格については,先行研究において帰属の機能として指摘されていた解釈と予測という文脈に加えて,他者を一貫して,嫌なもの,または良いものとして主張するために,好きな–良い(または嫌な–悪い)性格といった感情的な評価の言及も認められた。他方,自己の性格については,統制不能なものとして理解され,他者にもそのように理解するように求める場合があることがうかがわれた。これらの結果から,パーソナリティ心理学ではあまり論じられていないが,一般の人の日常生活の会話においては重要な機能を果たす「性格」概念があることが明らかになった。
著者
林田 太郎 佐藤 純
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-11, 2009
被引用文献数
3

本研究の目的は,これまで我が国の心理学において取り上げられることがなかった自己憐憫について,過去の事例研究や自由記述の結果をもとに概念を整理し,その結果に基づいた尺度を作成して実証的に検討することであった。研究1では,大学生に自己憐憫の経験を尋ね,自己憐憫とは日常的な場面でも生じるもので,その内容としては他者を意識した感情や反応があることが明らかにされた。研究2では,その結果をもとに自己憐憫尺度を新たに作成し,322名の学生を対象に質問紙調査を実施した。確認的因子分析の結果から,3因子モデルが妥当であることが確認された。また,α係数や再検査信頼性係数は十分な値を示し,信頼性が確認された。妥当性を検討するために統制感,孤独感,怒りの表出との相関を検討した結果,ある程度予想通りの結果が得られ,妥当性を確認することができた。
著者
荒川 歩 原島 雅之
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.194-207, 2009

刑事事件の判例文において「性格」という言葉がどのようなときにおいて用いられるのかについて探索的に検討した。裁判所ウェブサイト上の判例検索システムを用いて判例を抽出した。裁判年月日が平成8年1月1日から10年間の判例について,「性格」という言葉を含む刑事事件のみを対象とした。その結果182件が該当し,346のカードに分けられた。その内容をまとめると,被告人に関しては,「犯罪事実の認定や量刑判断には直接結び付けられていない経緯における記述」,「被告人の性格に基づく犯行理解」,「事件の背景としての被告人の性格」,「量刑判断の材料としての性格」の4つの側面で論じられており,それぞれで扱われる性格特徴も異なっていた。これらのことは,それが事実認定や量刑判断にどこまで影響しているかはわからないが,性格という概念が,事件を理解し,評価するうえで様々な側面で用いられていることを示すと考えられた。