- 著者
-
新野 宏
- 出版者
- Meteorological Society of Japan
- 雑誌
- 気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.5, pp.1001-1023, 1982 (Released:2007-10-19)
- 参考文献数
- 39
- 被引用文献数
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密度一様の回転流体中の非発散の水平シア流の安定性を弱非線形理論によって調べた。考えたシア流はyを流れる横切る方向の座標とするとき,U(y)=tank y と U(y)=sech2y の2通りである。コリオリ係数の緯度変化の効果(ベータ効果)及び底面でのエクスマン摩擦の効果を考慮してある。不安定波の振幅の時間及び空間変調を記述する一般化されたランダウ方程式の係数を様々なβ(≅dy/dy)の値に対して求めた。この論文で考えた範囲のβの値に対しては,どちらのシア流の不安定も超臨界型であることがわかった。従って,臨界値より大きなレイノルズ数に対しては,有限振幅の不安定波が変形された基本流との間に平衡状態を形成することが予測される。有限振幅の定常波の side-band 波に対する安定性も調べた。超臨界のレイノルズ数に対して,波数κ0の有限振幅波は,もしκ0がS(κ1-κc)<κ0-κc<S(κ2-κc)をみたすならば安定である。ここで,kcは臨界波数,k1とk2(k<k2)はそのレイノルズ数に対する2つの中立波の波数であり,Sは定数である。U(y)=tanh y に対しては,β=0のときSは1/√3に等しい。Sはβの絶対値が増すと共に減少する。従って,有限振幅波が安定な波数領域はβの絶対値が大きくなるにつれて減少する。U(y)=sech2 yに対しては,βの絶対値が小さいときには(無次元のβでβ=-1.9~0.5)Sの値は0に等しく,有限振幅波は不安定である。βがこの範囲外のときには,Sはβの絶対値が増すと共に大きくなるが,1/√3より大きくなることはない。