- 著者
-
髙久 宏佑
諸澤 崇裕
- 出版者
- 一般社団法人 日本生態学会
- 雑誌
- 保全生態学研究 (ISSN:13424327)
- 巻号頁・発行日
- pp.2109, (Released:2021-10-31)
- 参考文献数
- 27
日本における観賞魚飼育は古くから一般的なものであり、近年では希少性や美麗性から日本に生息する絶滅危惧魚類も取引対象として扱われるようになってきた。さらにネットオークションによる取引の増加に伴い、個人等による野外採集個体の消費的な取引の増加も懸念されているが、一方で絶滅危惧種の捕獲、流通に係る定量的データの収集は難しく、種ごとの取引現況について量的な把握が行われたことはない。そこで本研究では、環境省レッドリストに掲載されている 184種の絶滅危惧魚類の取引の実態把握を目的として、ネットオークションにおける 10年間分の取引情報を利用した大局的な集計と分析を行うとともに、取引特性の類型化を試みた。取引データ集計の結果、ネットオークションでは 88種の取引が確認された。また、全取引数の過半数以上は取引数の多い上位 10種において占められており、さらにアカメ、オヤニラミ、ゼニタナゴの 3種の取引が、そのうちの大部分を占めていた。取引数や取引額、養殖や野外採集と思われる取引数等を種ごとに集計した 6変数による階層的クラスター分析の結果では、 8つのサブグループに分けられ、ネットオークションでの取引には、主流取引型、薄利多売型、高付加価値少売型等のいくつかの特徴的な類型を有することが分かった。また、特に多くの取引が確認されたタナゴ類の中には、養殖個体として抽出された取引が多く認められる種がおり、一部の種については、他の観賞魚のように養殖個体に由来する取引が主流になりつつある可能性が考えられた。