著者
鎌谷 美希 伊藤 資浩 宮崎 由樹 河原 純一郎
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第18回大会
巻号頁・発行日
pp.75, 2021-03-15 (Released:2021-03-15)

衛生マスクを着用することで,着用者の顔の魅力が総じて低下することが報告されている (衛生マスク効果: Miyazaki & Kawahara, 2016)。これは,マスクによって顔の一部が遮蔽されることと,マスクから想起される不健康さの2要因によって生じるとされていた。しかし,COVID-19流行でマスクの着用が常態化したことにより,マスクから想起される不健康さがその色にかかわらず低減している可能性がある。本研究では,白・黒マスク着用者に対する信念の調査 (研究1),および素顔と白・黒マスク着用顔の魅力評定実験をおこなった (研究2, 3)。その結果,COVID-19流行前よりも流行後において,マスクの色にかかわらず,その着用者に対して不健康だと回答する人が減少した。また,マスク着用者に対する不健康さの知覚の低減に伴い,衛生マスク効果のうち,遮蔽の効果のみが魅力評定値に影響を与えていた。衛生マスク効果の変容は,不健康だと考えられていた黒色マスク着用顔に対してもみられた。
著者
鈴木 進吾 河田 恵昭 高橋 智幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_1346-I_1350, 2013 (Released:2013-11-12)
参考文献数
11

This research aims to analyze the characteristics of the tsunami that had stricken Osaka Bay Area in the initial Jomon period. The bathymetry of Osaka Bay and topography of Osaka Plain of 11,000 years before present are reproduced rigorously from boring data and acoustic profiling data for tsunami numerical simulation. Tsunami numerical simulations assuming ordinary level and maximum level of Nankai Trough earthquake tsunami are carried out with the water levels of every 1,000 years of initial Jomon period. It is found that tsunamis in early initial Jomon period were relatively low, and by contrast, tsunamis in late initial Jomon period were high. The area where high tsunami struck in the initial Jomon period were found from the simulation results.
著者
菊賀 信雅 福島 教照 澤田 亨 松下 宗洋 丸藤 祐子 渡邊 夏海 橋本 有子 中田 由夫 井上 茂
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.230-240, 2021-04-15 (Released:2021-04-23)
参考文献数
29

目的 健康増進施設であるフィットネスクラブ(fitness club: FC)では,約4割以上の新規入会者が6か月以内に退会する。運動の習慣化に心理行動医学的アプローチが重要とされるが,民間FCの退会と関連する心理的要因を検討した報告は極めて少ない。そこで,本研究の目的はFC新規入会者における運動習慣の促進要因・阻害要因と退会との関連を明らかにすることである。方法 単一の経営母体である民間FC(17施設)の協力を得てコホート研究を実施した。2015年4月1日から2016年3月31日までのすべての新規入会者(5,421人)に自記式質問紙調査を依頼し,2,934人より回答を得た。未成年者(n=167)および回答欠損者(n=702)は解析から除外した。運動習慣の心理的要因は「簡易版運動習慣の促進要因・阻害要因尺度」で評価した。2016年9月30日まで追跡し退会の有無を把握した。Cox比例ハザードモデルにより全体および性・年齢階級別に検討した。結果 最終的な分析対象者は2,065人(平均年齢[標準偏差],39.0[15.0]歳,男性28.8%)で,追跡不能者はいなかった。平均追跡期間は10.1(4.4)か月で,退会率は24.6人/1,000人月であった。全体の分析では心理的要因と退会に有意な関連は認めなかった。層別解析において40-59歳の男性では「健康体力(促進要因)」得点が高い者ほど退会率が低かった(HR, 0.72[0.52-1.00])。39歳以下の女性では,「身体的・心理的阻害(阻害要因)」得点が高い者では退会率が高かった(HR, 1.10[1.01-1.19])。40-59歳の女性では「対人関係(促進要因)」得点が高い者ほど退会率が低く(HR, 0.84[0.74-0.97]),「怠惰性(阻害要因)」得点が高い者ほど退会率が低かった(HR, 0.85[0.73-0.99])。男女とも60歳以上では「自己の向上(促進要因)」得点が高い者ほど退会率が高かった(男性HR, 2.52[1.10-5.81],女性HR, 1.31[1.00-1.72])。結論 退会と関連する入会時の心理的要因は性・年齢階級により異なった。退会予防には入会者の属性や心理的要因に即した運動プログラムの提供が必要と考えられた。
著者
田村 正
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.65, no.531, pp.103-109, 2000-05-30 (Released:2017-02-03)
参考文献数
21

Large Commercial theaters are often tried to rebuild as complex facilities to increase their business profit. I chose five of these theaters and compared them with simple theaters, in order to evaluate their spatial composition. I analyzed the composition of their mixed use, surveyed their sites, and studied both contextual and programmatic relationship to the neighborhoods around them. I also conducted interviews with their managers. The conclusion is that complex theaters have much more potential for profit than simple theaters.
著者
福田 千鶴
出版者
九州大学基幹教育院
雑誌
鷹・鷹場・環境研究 = The journal of hawks, hawking grounds, and environment studies (ISSN:24328502)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.79-98, 2019-03

本研究では、16世紀後半の東アジアにおける日本の鷹狩文化の特質を解明する。日本では古代以来、鷹狩が行われたが、16世紀に大きく変容する。すなわち、鶴取の鷹が珍重され、以後は鶴取が日本の鷹狩として伝統化していくことになる。その大きな画期となるのが豊臣政権期であり、これはひとと自然との関係を大きく変えていくことにもなった。第1章では豊臣秀吉の嗜好が、はじめは茶の湯にあったことを示し、第2章では日本全国統一の過程で鷹を掌握するルートを確立し、朝鮮鷹をも入手するようになったことを位置づける。第3章では実際に秀吉が鷹狩を開始すると、鶴取の大鷹が求められたこと、また秀吉が1591年11月から12月にかけて実施した大鷹狩は、東海から畿内にかけての地域の生態系に甚大なダメージを与えたことを明らかにする。これを前提に、第4章では、諸国鉄砲打払令が全国に発令され、豊臣家鷹場の回復および維持が図られた因果関係を解明する。最後に、従来の研究ではほとんど検討されてこなかった鷹狩文化の諸相を解明した本研究の成果に基づき、今後は豊臣政権期における鷹狩文化の変容が、社会文化、政治、環境に与えた影響を踏まえ、歴史像を再構築する必要を提起したい。
著者
冨岡 薫
出版者
慶應義塾大学倫理学研究会
雑誌
エティカ (ISSN:18830528)
巻号頁・発行日
no.13, pp.121-149, 2020

はじめに第一節 ケアの倫理と「依存」第二節 狭義の「依存」 : キテイ、ファインマンの視点から第三節 広義の「依存」 : ノディングス、トロントの視点から第四節 ケアの倫理における「自立」の可能性第五節 「依存」と「自立」の諸側面 : 「自律」の考察に向けておわりに
著者
山本 政幸
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.B21, 2004 (Released:2005-06-15)

本考察は、ニュー・タイポグラフィ運動の中心的人物とされるヤン・チヒョルト(Jan Tschichold, 1902-74)が試みた実験的書体デザインについて、『タイポグラフィ通信』誌の1930年3月号に掲載された論文「もうひとつの新しい書体?書体の経済性の問題への提案」を参照しながら、その実態を把握することを目的としている。新書体は方眼紙の上に極細のペンで製図され、直線と円による幾何学的でシンプルな構造をもっている。小文字の「シングル・アルファベット」と、これを発音記号ともいえる「フォネティック・アルファベット」に変換した二種類の書体が提案されている。ゴシックではなくローマンのかたちを採用し、二つのアルファベットの混植を禁止、小文字の形態を基本とし、不要な文字を削除、表記できなかった音のために新しい文字を追加、母音の長短を補助記号で補い、ピリオドを肩つきで大きく示す、といった独特の改良を経て完成している。計画案は実用化を果たしていないが、アルファベット体系の根本的な改変をうながすという重要な使命を負い、機能主義の効果を書体デザインの領域で実証しようとする、果敢な試みであった。