著者
川西 幸貴 森畠 康策 加藤 順 村田 顕也 深津 和弘 玉置 秀彦 伊藤 大策 和田 有紀 一瀬 雅夫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.1, pp.62-69, 2015-01-05 (Released:2015-01-05)
参考文献数
30

症例は37歳女性.腹痛を主訴に入院,前医で特発性の慢性偽性腸閉塞症と診断されたが,当院での精査の結果,抗gAChR抗体陽性の自己免疫性自律神経節障害が原因疾患であると疑われた.コリンエステラーゼ阻害薬やステロイド,免疫調節薬の使用,単純血漿交換や二重膜濾過血漿交換,胃・腸管の減圧目的で胃瘻および腸瘻を内視鏡的に造設,大量免疫グロブリン療法とさまざまな治療を行ったが,治療抵抗性であった.
著者
小原 勝敏 春間 賢 入澤 篤志 貝瀬 満 後藤田 卓志 杉山 政則 田辺 聡 堀内 朗 藤田 直孝 尾崎 眞 吉田 雅博 松井 敏幸 一瀬 雅夫 上西 紀夫
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.3822-3847, 2013 (Released:2013-12-27)
参考文献数
83
被引用文献数
4

近年,内視鏡診療における鎮静の需要が増加傾向にあるが,内視鏡時の鎮静に対する保険適用の承認を取得している薬剤はなく,主にベンゾジアゼピン系の薬剤が適応外で使用されている現状であり,安全な鎮静を支援する体制作りが求められているところである.この度,日本消化器内視鏡学会は日本麻酔科学会の協力の下“内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン”を作成した.本ガイドラインは鎮静が必要な状況下で適切な使用法を推奨したものであり,クリニカルクエスチョン11項目に対してステートメントは14項目あり,そのうちエビデンスレベルIが5項目で,エビデンスレベルIIが3項目あったが,ほとんどが国外のデータに準拠したものであり,推奨度は定まっていない.また,本ガイドラインは,内視鏡診療時の鎮静を強く勧めるものではなく,消化器内視鏡診療上,鎮静が必要と考えられる局面においてはどのような鎮静の方法が良いかの指針を示したものである.実際の診療において鎮静を実施するかの最終決定は,必要性に関する十分なインフォームド・コンセントの下,患者の意思を尊重して行うことが前提であり,医師側の誘導に基づくものであってはならない.
著者
藤本 一眞 藤城 光弘 加藤 元嗣 樋口 和秀 岩切 龍一 坂本 長逸 内山 真一郎 柏木 厚典 小川 久雄 村上 和成 峯 徹哉 芳野 純治 木下 芳一 一瀬 雅夫 松井 敏幸
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.2075-2102, 2012 (Released:2012-07-26)
参考文献数
66
被引用文献数
7

日本消化器内視鏡学会は,日本循環器学会,日本神経学会,日本脳卒中学会,日本血栓止血学会,日本糖尿病学会と合同で“抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン”を作成した.従来の日本消化器内視鏡学会のガイドラインは,血栓症発症リスクを考慮せずに,抗血栓薬の休薬による消化器内視鏡後の出血予防を重視したものであった.今回は抗血栓薬を持続することによる消化管出血だけでなく,抗血栓薬の休薬による血栓塞栓症の誘発にも配慮してガイドラインを作成した.各ステートメントに関してはエビデンスレベルが低く推奨度が低いもの,エビデンスレベルと推奨度が食い違うものがあるのが現状である.
著者
井上 泉 岡 政志 一瀬 雅夫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.117, no.6, pp.477-484, 2020-06-20 (Released:2020-06-20)
参考文献数
40

H.pylori感染胃炎を中核とする胃癌発生の自然史に関する理解がすすみ,癌発生リスクの把握が可能になって来た.その結果,胃癌検診効率化を視野に,血液検査によるH.pylori感染胃炎ステージ診断・胃癌リスク評価に基づくリスク検診が検討されている.いまだ理論的な段階に留まるものであるが,今後,安定したシステムの登場が期待される.“いわゆるABC検診”に関しては,受診者の不利益を回避する上で,現状のシステムの導入には慎重であるべきで,実施可能なシステム・責任ある体制の構築のために,充分な検討が必要である.その他,本稿では血液検体による胃癌診断の現状・検診導入の可能性について概説する.
著者
中田 博也 加藤 順 井上 泉 玉井 秀幸 井口 幹嵩 前北 隆雄 一瀬 雅夫
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.383-388, 2015 (Released:2015-06-15)
参考文献数
13

潰瘍性大腸炎(UC)においてHelicobacter pylori(H.pylori)感染率が有意に低いとの報告が以前よりある。我々はUCとH.pyloriおよび胃粘膜萎縮との関連を検討しABC分類に分けて比較した。UC群74人と, 年齢・性をマッチさせたControl群148人を検討した。H.pylori感染はControl群27.7%, UC群12.2%とUC群で, 胃粘膜萎縮の陽性率はControl群12.8%, UC群2.7%とUC群で有意に低かった。ABC分類に分け検討するとControl群(A:69.6%, B:17.6%, C:10.1%, D:2.7%), UC群(A:86.5%, B:10.8%, C:1.35%, D:1.35%)と, A群でUC群が, C群でControl群が有意に多く, H.pyloriとUCは, 逆相関することが示された。胃粘膜萎縮進展を介して, おそらく腸内細菌叢を変化させることにより, UCが減少することが推測された。
著者
中沢 和之 有井 研司 木下 博之 中谷 佳弘 紺谷 忠司 一瀬 雅夫
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.12-16, 2003

症例は15歳,男性.野球でヘッドスライディングをしたあとに,前胸部痛が出現.飲水をした後に,前胸部がしみる感じもあうた.胸部X線,CT検査で縦隔気腫と診断され,縦隔気腫の原因精査のため,上部消化管内視鏡検査を施行,食道入口部2時と8時の方向に約3cmにわたる裂創を認めた.以上の結果より,外傷性食道破裂に伴う縦隔気腫と診断した.厳重な経過観察ならびに絶食と抗生物質の投与による保存的治療にて軽快したので,文献的考察を加えて報告する.
著者
一瀬 雅夫
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.355-364, 2008 (Released:2012-03-25)
参考文献数
31
被引用文献数
1 6

胃癌死亡率減少に大きく貢献した胃がん検診も, 現在, 受診率および検診効率の向上に向けての取り組みが強く求められている。その様な状況下, 血清ペプシノゲン(PG)検査により, 萎縮性胃炎の進展した個人を把握, 内視鏡検査の対象とする検診方法, PG法が高い評価を受け, 血清PGにより同定される萎縮性胃炎を標的とした胃癌ハイリスク集約が有効である事が明らかとなって来た。加えて, 萎縮性胃炎の最重要因子としてのH.pyloriの役割が明確になって以来, 胃癌発生の自然史をH.pylori感染を主軸に理解する事が可能となり, PGやH.pylori抗体などの血液検査データを基に, 各個人におけるH.pylori感染のstageの把握, 胃癌発生リスクの具体的な予測が可能になって来た。これらの情報は, さらに, 胃癌発生予防, 検診効率化を目標とした有効な胃癌対策を立案可能なものとしつつある。本稿ではその現況について概説する。