著者
加藤 元嗣 上堂 文也 掃本 誠治 家子 正裕 樋口 和秀 村上 和成 藤本 一眞
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.1547-1558, 2017 (Released:2017-07-20)
参考文献数
39
被引用文献数
10

日本消化器内視鏡学会は,抗血栓薬の休薬による血栓塞栓症の誘発に配慮した“抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン”を報告した.その後新しい経口抗凝固薬が用いられるようになり,実臨床ではそれらの対応についての基準が求められていた.そこで,抗凝固薬の新たな知見を加えて,抗凝固薬に関する追補版を作成した.しかし,各ステートメントに関してはエビデンスレベルは不十分なものが多く,今後は臨床現場での追補ガイドラインの検証が必要となる.
著者
藤本 一眞 藤城 光弘 加藤 元嗣 樋口 和秀 岩切 龍一 坂本 長逸 内山 真一郎 柏木 厚典 小川 久雄 村上 和成 峯 徹哉 芳野 純治 木下 芳一 一瀬 雅夫 松井 敏幸
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.2075-2102, 2012 (Released:2012-07-26)
参考文献数
66
被引用文献数
7

日本消化器内視鏡学会は,日本循環器学会,日本神経学会,日本脳卒中学会,日本血栓止血学会,日本糖尿病学会と合同で“抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン”を作成した.従来の日本消化器内視鏡学会のガイドラインは,血栓症発症リスクを考慮せずに,抗血栓薬の休薬による消化器内視鏡後の出血予防を重視したものであった.今回は抗血栓薬を持続することによる消化管出血だけでなく,抗血栓薬の休薬による血栓塞栓症の誘発にも配慮してガイドラインを作成した.各ステートメントに関してはエビデンスレベルが低く推奨度が低いもの,エビデンスレベルと推奨度が食い違うものがあるのが現状である.
著者
静 貴生 樋口 和秀 富永 和作 後藤 昌弘 紀 貴之 山口 敏史 宮本 敬大 島本 福太郎
出版者
大阪医科薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

炎症性サイトカインであるinterleukin-6(IL-6)は、がん細胞の増殖・浸潤・転移に関わり、また抗がん剤による殺細胞効果に対して抵抗性を示すことが知られている。一方で臨床上問題となる悪液質も、がん組織から産生されるIL-6により惹起されることから、腫瘍-宿主の相互作用におけるIL-6が中心的役割をになっていることが理解される。IL-6調整作用を有する漢方薬(補中益気湯)は、病状改善の候補薬として十分に期待される。本研究では、がん患者に対する漢方薬併用と、腫瘍増殖抑制の付加的効果、化学療法継続期間の延長、悪液質の抑制など、治療からQOLの側面に到るまでを、IL-6の血中動態と共に評価し、漢方薬の有効性を解き明かしエビデンスを構築する。膵癌および大腸癌を対象に漢方投与群と非投与群へランダムに分け、使用薬剤:[(補中益気湯7.5g分3+牛車腎気丸7.5g分3)+桂枝茯苓丸7.5g分3]を登録日より上記用法にて一次化学療法終了まで連日投与を行う。治療開始前、治療開始2週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後の合計6回採血を行いIL-6の測定を行う。本年度は研究経過に基づき、対象患者へのリクルートおよびIL-6の採血を行い、SRL社に依頼しIL-6の測定を行った。
著者
井元 章 増田 大介 小倉 健 瀧井 道明 梅垣 英次 樋口 和秀
出版者
一般社団法人 日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.835-841, 2013-12-31 (Released:2014-01-23)
参考文献数
27
被引用文献数
2

セフトリアキソン(CTRX)の投与が胆泥形成に関わることは,主に小児を中心に報告され,広く知られている.我々は,細菌性髄膜炎に対するCTRXの高容量・長期間投与により胆石が形成され,投与の中止により自然消失を確認し得た高齢者の2例を経験した.1例は総胆管結石による閉塞性胆管炎を併発したため,内視鏡的ドレナージを要したが,1例は経過観察のみで自然消失を確認し得た.CTRX中止から胆石消失に要した期間はそれぞれ21日間,38日間であり,両者ともそれ以後胆石の再発は認めていない.CTRX投与時には胆泥が形成されやすく,小児だけでなく高齢者にも発症し,時には重症化しうる合併症を併発する可能性のあることを念頭において診療にあたることが必要である.
著者
平田 有基 上田 康裕 柿本 一城 竹内 利寿 樋口 和秀
出版者
日本小腸学会
雑誌
日本小腸学会学術集会プログラム・抄録集 (ISSN:24342912)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.40_2, 2019

<p>【背景】 血栓・塞栓症の予防のために、低容量アスピリン(LDA)を内服している患者数は増加しつつある。一般的にプロトンポンプ阻害剤(PPI)は上部消化管の粘膜傷害を予防する一方で、腸内細菌叢の変化を通じて小腸の粘膜傷害は増悪させるという報告もある。そこで我々は、LDA長期内服患者にPPIを投与すると腸内細菌叢がどのように経時的に変化していくのかと、PPI投与により粘膜傷害が起こるのであれば、臨床的に問題となるような貧血が起こるのかを調べることとした。</p><p>【方法】 H2ブロッカーやPPIの投与をされていないLDA長期内服32症例をエソメプラゾール(20mg/day投与群)とボノプラザン投与群(10mg/day)に振り分け腸内細菌叢の変化をday0、30、90、180に解析した。また、同じ時点でHb、Ht値ならびにガストリンの血中濃度の測定を行った。</p><p>【結果・結語】 LDA長期内服群にPPIを投与することで、腸内細菌叢はLactobacillales orderの割合がday30の時点で有意に増加しており、この変化はday180まで継続していた。またこの傾向は、ボノプラザン投与群の方がエソメプラゾール投与群と比較して強かった。Lactobacillales orderの割合はガストリンの血中濃度と正の相関関係を示しておりこれは、胃酸分泌抑制が強くかかることにより、腸内環境が変化しLactobacilllales orderにとって有利な環境になっている可能性が示唆された。また、腸内細菌叢が大きく変化している一方で、貧血の進行等は認めず、粘膜傷害が起こっていたとしても臨床的に問題となるほどではない可能性がある。</p>
著者
山本 博徳 緒方 晴彦 松本 主之 大宮 直木 大塚 和朗 渡辺 憲治 矢野 智則 松井 敏幸 樋口 和秀 中村 哲也 藤本 一眞
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.2685-2720, 2015 (Released:2015-12-25)
参考文献数
282
被引用文献数
13

カプセル内視鏡・バルーン内視鏡の開発・普及により,小腸領域においても内視鏡が疾患の診断・治療に重要な役割を果たすようになった.小腸内視鏡の適応として最も頻度が高いのは,いわゆる原因不明の消化管出血(obscure gastrointestinal bleeding:OGIB)である.その他には小腸狭窄,腫瘍,炎症性腸疾患などにおいて小腸内視鏡の有用性が確認されている.小腸内視鏡の有用性が認識された今,臨床現場で安全かつ効率的に使用し,最大限の効果を得るためには一定の指針が必要となる.そこで,日本消化器内視鏡学会では,日本消化器病学会,日本消化管学会,日本カプセル内視鏡学会の協力を得て,現時点で得られるだけのエビデンスに基づく「小腸内視鏡診療ガイドライン」を作成した.しかし,まだ比較的新しい内視鏡手技であり,エビデンスが不十分な部分に関しては専門家のコンセンサスに基づき推奨度を決定した.本ガイドラインは小腸疾患診療のガイドラインとしての疾患中心のまとめではなく,小腸内視鏡というモダリティを中心としたガイドラインとして作成し,小腸内視鏡としては臨床現場の実情に即して小腸カプセル内視鏡とバルーン内視鏡に絞り,指針を作成した.
著者
岩切 龍一 田中 聖人 後藤田 卓志 岡 志郎 大塚 隆生 坂田 資尚 千葉 俊美 樋口 和秀 増山 仁徳 野崎 良一 松田 浩二 下野 信行 藤本 一眞 田尻 久雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.1370-1396, 2018 (Released:2018-07-20)
参考文献数
160
被引用文献数
1

日本消化器内視鏡学会は,内視鏡診療ガイドライン作成作業の一環として,消化器内視鏡の洗浄・消毒標準化にむけたガイドラインを作成した.本邦と欧米先進国では消化器内視鏡医療の環境が異なる.欧米先進国では消化器内視鏡の施行は,ほぼ専門施設に限られ,厳格な洗浄・消毒の既定が遵守されている.本邦では小規模クリニックでも消化器内視鏡が行われ,年間に行われる消化器内視鏡数は膨大な数になる.内視鏡の洗浄・消毒法も医療機関によって差が認められるのも事実である.洗浄・消毒に関しての根拠は,エビデンスが乏しいのも事実であるが,内視鏡医療の発展のためにも消化器内視鏡の洗浄・消毒の標準化が必要である.
著者
渡邉 俊雄 藤原 靖弘 富永 和作 谷川 徹也 樋口 和秀
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

Prostaglandin(PG)の代謝酵素である15-hydroxyprostaglandin dehydrogenase(15-PGDH)の胃癌の病態生理における役割について検討した。進行胃癌71例中35例において15-PGDH蛋白の発現は低下しており、多変量解析では15-PGDHの発現低下は生命予後の不良と関連していた。15-PGDH陰性群では15-PGDH陽性群に比較してKi67陽性率は有意に高値であった。15-PGDH発現をsiRNA法でノックダウンすると胃癌細胞株であるAGS細胞の増殖能は亢進した。以上の結果から15-PGDHは胃癌における独立した予後規定因子であることが判明した。