著者
三谷 はるよ
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.32-46, 2014 (Released:2015-07-04)
参考文献数
31

本稿の目的は, 「市民活動参加者の脱階層化」命題が成り立つかどうかを検証することである. すなわち, 資源のある人もない人も等しく市民活動に参加するような状況に変化しつつあるのかどうかを検討する. そのために本稿では, 1995年と2010年に実施された全国調査データであるSSM1995とSSP-I2010を用いて, 社会階層と市民活動参加の関連の動向に注目した時点間比較分析を行った.分析結果は以下のとおりである. 第1に, 1995年も2010年も変わらずに, 高学歴の人ほど市民活動に参加する傾向があった. 第2に, 1995年では高収入や管理職の人ほど市民活動に参加する傾向があったが, 2010年ではそのような傾向はなかった. 第3に, 1995年では無職の人は市民活動に参加する傾向があったが, 2010年では逆に参加しない傾向があった. 本稿から, 高学歴層による一貫した市民活動への参加によって教育的階層における「階層化」が持続していたこと, 同時に, 中流以上の層や管理職層, 無職層といった従来の市民活動の中心的な担い手の参加の低下によって, 経済的・職業的階層における消極的な意味での「脱階層化」が生じていたことが明らかになった.
著者
伊藤 理史 三谷 はるよ イトウ タカシ ミタニ ハルヨ Ito Takashi Mitani Haruyo
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科 社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.93-107, 2013-03-31

本稿は、「大阪府民の政治・市民参加と選挙に関する社会調査」の調査記録である。調査の目的は、2011 年11 月27日に実施された大阪市長選挙・大阪府知事選挙における有権者の投票行動や政治意識の分析を通して、大阪府民の政治・市民参加の実態を明らかにすることである。調査方法は、大阪府下の20 ~ 79 歳の男女3,000 人を調査対象とした、層化三段無作為抽出法による郵送調査であり、最終的な有効回収数は962 人有効(回収率:32.1%)であった。本稿の構成は、次の通りである。まず第1 節では、調査の経緯について簡潔に記述し、第2 節では、調査の設計に関わる研究費の獲得と郵送調査の利点について記述した。続く第3 節では、調査票と依頼状の作成について、第4 節では、サンプリングと発送について、第5 節では、発送後の電話対応と督促状、データの回収数について、第6 節では、データ入力と職業コーディングについて、実際の作業内容を記述した。最後に第7 節では、データの基礎情報として、得られたデータとマクロデータと比較検討し、データの質について記述した。本稿で得られた結果は、たとえ小規模な研究助成にもとづいた大学院生主体の量的調査でも、ある程度の質と量の伴ったデータを入手できる可能性を示している。
著者
三谷 はるよ
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.32-46, 2014

本稿の目的は, 「市民活動参加者の脱階層化」命題が成り立つかどうかを検証することである. すなわち, 資源のある人もない人も等しく市民活動に参加するような状況に変化しつつあるのかどうかを検討する. そのために本稿では, 1995年と2010年に実施された全国調査データであるSSM1995とSSP-I2010を用いて, 社会階層と市民活動参加の関連の動向に注目した時点間比較分析を行った.<br>分析結果は以下のとおりである. 第1に, 1995年も2010年も変わらずに, 高学歴の人ほど市民活動に参加する傾向があった. 第2に, 1995年では高収入や管理職の人ほど市民活動に参加する傾向があったが, 2010年ではそのような傾向はなかった. 第3に, 1995年では無職の人は市民活動に参加する傾向があったが, 2010年では逆に参加しない傾向があった. 本稿から, 高学歴層による一貫した市民活動への参加によって教育的階層における「階層化」が持続していたこと, 同時に, 中流以上の層や管理職層, 無職層といった従来の市民活動の中心的な担い手の参加の低下によって, 経済的・職業的階層における消極的な意味での「脱階層化」が生じていたことが明らかになった.
著者
三谷 はるよ
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.7-19, 2020-04-30 (Released:2021-05-11)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

本稿は,育児期の孤独感を軽減するサポート・ネットワークを検討する.育児期のサポート・ネットワークとwell-beingの関係を捉える先行研究の多くは,クロスセクションデータに依拠し,女性のみを研究対象とし,公的サポートよりも私的サポートに注目するものだった.そこで本稿ではパネルデータを用いて,私的・公的サポートの両方を含むどのようなサポート・ネットワークが育児期の男女の孤独感を軽減するのかを検討した.その結果,精神的・手段的に頼りになる夫や精神的に支えてくれる友人から成るサポート・ネットワークが,母親の孤独感を軽減する傾向が示された.また,精神的に支えてくれる妻やつどいの広場・育児サークルから成るサポート・ネットワークが,父親の孤独感を軽減する傾向も示された.本稿は,父親が父親同士の関係や父子関係を深められる場が父親のwell-beingを良好にすることを示唆する.
著者
三谷 はるよ
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.32-46, 2014

本稿の目的は, 「市民活動参加者の脱階層化」命題が成り立つかどうかを検証することである. すなわち, 資源のある人もない人も等しく市民活動に参加するような状況に変化しつつあるのかどうかを検討する. そのために本稿では, 1995年と2010年に実施された全国調査データであるSSM1995とSSP-I2010を用いて, 社会階層と市民活動参加の関連の動向に注目した時点間比較分析を行った.<br>分析結果は以下のとおりである. 第1に, 1995年も2010年も変わらずに, 高学歴の人ほど市民活動に参加する傾向があった. 第2に, 1995年では高収入や管理職の人ほど市民活動に参加する傾向があったが, 2010年ではそのような傾向はなかった. 第3に, 1995年では無職の人は市民活動に参加する傾向があったが, 2010年では逆に参加しない傾向があった. 本稿から, 高学歴層による一貫した市民活動への参加によって教育的階層における「階層化」が持続していたこと, 同時に, 中流以上の層や管理職層, 無職層といった従来の市民活動の中心的な担い手の参加の低下によって, 経済的・職業的階層における消極的な意味での「脱階層化」が生じていたことが明らかになった.
著者
三谷 はるよ
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.69-83, 2015 (Released:2016-07-10)
参考文献数
27
被引用文献数
1

東日本大震災後に展開されたボランティア活動に関して,かつて災害に遭った時に支援を受けた元被災者が,新たな災害に遭った被災者を支援するという「被災地のリレー」現象が指摘されている.これは,C. Lévi-Straussが「限定交換」に対比させた「一般交換」の具体例といえる.しかし国内外の先行研究において,災害ボランティア活動に一般交換の側面がみられるかを計量的に実証したものはない. そこで本稿では全国調査データを用いて,東日本大震災後のボランティア活動に一般交換の側面がみられるのか,みられる場合にはいかなる条件下で一般交換が発現しやすいのかを検討した.その結果,(1)過去の被災時の被援助経験は,被災地・被災地以外での震災ボランティア活動への参加に影響を与えること,(2)被災低リスク地域に住んでいる場合,被援助経験と被災地での震災ボランティア活動の関連が強まることが明らかになった.以上から,東日本大震災後のボランティア活動には一般交換の側面がみられること,さらに災害が珍しい地域で受ける “思いがけない恩” が一般交換を促す可能性が示唆された.
著者
伊藤 理史 三谷 はるよ Ito Takashi Mitani Haruyo イトウ タカシ ミタニ ハルヨ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科 社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
no.34, pp.93-107, 2013

本稿は、「大阪府民の政治・市民参加と選挙に関する社会調査」の調査記録である。調査の目的は、2011 年11 月27日に実施された大阪市長選挙・大阪府知事選挙における有権者の投票行動や政治意識の分析を通して、大阪府民の政治・市民参加の実態を明らかにすることである。調査方法は、大阪府下の20 ~ 79 歳の男女3,000 人を調査対象とした、層化三段無作為抽出法による郵送調査であり、最終的な有効回収数は962 人有効(回収率:32.1%)であった。本稿の構成は、次の通りである。まず第1 節では、調査の経緯について簡潔に記述し、第2 節では、調査の設計に関わる研究費の獲得と郵送調査の利点について記述した。続く第3 節では、調査票と依頼状の作成について、第4 節では、サンプリングと発送について、第5 節では、発送後の電話対応と督促状、データの回収数について、第6 節では、データ入力と職業コーディングについて、実際の作業内容を記述した。最後に第7 節では、データの基礎情報として、得られたデータとマクロデータと比較検討し、データの質について記述した。本稿で得られた結果は、たとえ小規模な研究助成にもとづいた大学院生主体の量的調査でも、ある程度の質と量の伴ったデータを入手できる可能性を示している。
著者
三谷 はるよ
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.109-120, 2013-10-31 (Released:2015-09-05)
参考文献数
28
被引用文献数
2

昨今,里親養育に期待が高まる一方で,里親がストレスフルな状況に置かれていることが問題化している.先行研究は危機への対処としての里親本人の意味づけに注目してきたが,社会関係が対処に与える影響は十分に捉えていない.そこで本稿ではインタビュー調査を実施し,里親の危機対処過程を,とくに社会関係の影響に注目して検討した.その結果,里親は家族成員の理解・協力によって困難性を共有し,里親仲間の類似経験や専門家の知識によって困難性を相対化することで,危機に対処していることが明らかになった.また,里親は危機対処の過程を経て,里子や児童相談所職員から肯定的評価を得ることで,役割アイデンティティを強化していることもわかった.以上から,家族内外の社会関係からの道具的,情緒的,情報的サポートがストレッサーの悪影響を緩和し,ケアの受け手や公的な第三者からの評価的サポートが心理状態をつねに安定させることが示唆された.
著者
三谷 はるよ
出版者
SHAKAIGAKU KENKYUKAI
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.3-18,130, 2014

This study investigates the relationship between religiosity and volunteering in Japan. Previous research has shown that people who belong to religious affiliations and who attend religious institutions regularly tend to volunteer. However, little is known about whether religiosity facilitates volunteering among those Japanese not involved in religious groups, and which dimensions of religiosity have apositive influence on such activity. Therefore, this paper, employing data from representative national Japanese samples, examines the influence of dimensions of religiosity on volunteering among Japanese without religious attachments. <br> The study finds that while both collective religiosity (religious affiliation and attendance) and diffused religiosity (prayer and belief in guardianship) predict volunteering among the Japanese, only diffused religiosity is related to volunteering among non-members of religious denominations. <br> The finding indicates that volunteering among the latter group is promoted by religiosity, particularly diffused religiosity. The result that private prayer and individual religious belief or experience promote volunteering is in line with recent research in Western countries. Meanwhile, a direct relationship between religious attendance and volunteering among those who are not attached to religious denominations has not been shown. This suggests that Japanese temples, shrines, and churches do not directly foster volunteering by forming networks of people, but that they indirectly promote it by enriching the piety that has been culturally diffused in the community.
著者
三谷 はるよ
出版者
SHAKAIGAKU KENKYUKAI
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.3-18,130, 2014

This study investigates the relationship between religiosity and volunteering in Japan. Previous research has shown that people who belong to religious affiliations and who attend religious institutions regularly tend to volunteer. However, little is known about whether religiosity facilitates volunteering among those Japanese not involved in religious groups, and which dimensions of religiosity have apositive influence on such activity. Therefore, this paper, employing data from representative national Japanese samples, examines the influence of dimensions of religiosity on volunteering among Japanese without religious attachments. <br> The study finds that while both collective religiosity (religious affiliation and attendance) and diffused religiosity (prayer and belief in guardianship) predict volunteering among the Japanese, only diffused religiosity is related to volunteering among non-members of religious denominations. <br> The finding indicates that volunteering among the latter group is promoted by religiosity, particularly diffused religiosity. The result that private prayer and individual religious belief or experience promote volunteering is in line with recent research in Western countries. Meanwhile, a direct relationship between religious attendance and volunteering among those who are not attached to religious denominations has not been shown. This suggests that Japanese temples, shrines, and churches do not directly foster volunteering by forming networks of people, but that they indirectly promote it by enriching the piety that has been culturally diffused in the community.